クオリティマネジメント Quality Management

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HOME > 2013年1月-3月(No.4) > 特別企画 > 「第95回品質管理シンポジウム」ルポ
「第95回品質管理シンポジウム」ルポ 企業が飛躍するための新商品創造 心ときめく、ワクワクした商品の継続的な提供 村山 輝道

はじめに

2012年12月6日(木)~9日(土)の3日間、箱根・ホテル小涌園において、第95回品質管理シンポジウム(95QCS)が開催された。今回のテーマは、「企業が飛躍するための新商品創造-心ときめく、ワクワクした商品の継続的な提供-」である。営業・開発・品質・経営にかかわる産学さまざまな立場から約160名もの識者が集まり、テーマに沿った講演と、深夜にまで及ぶ活発な意見交換がなされた。プログラムは表1のとおりである。
 

表1 第95回品質管理シンポジウム プログラム
月/日 科目 講演者
12/6(木) <特別講演1>
新興国市場をとりこにするグローバルマーケティング
財部 誠一
経済ジャーナリスト
12/7(金) <オリエンテーション>
企業が飛躍するための新商品創造
~心ときめく、ワクワクした商品の継続的な提供~
山内 康仁
アイシン精機(株)相談役
<基調講演>
高品質・高信頼性とイノベーターのジレンマ、そしてワクワク品質の源泉は?
圓川 隆夫
東京工業大学大学院
社会理工学研究科 教授
<講演1>
日本のこれからの“モノづくり革命”
田中 千秋
東レ(株)相談役
<講演2>
富士重工業の“新商品創出”の背景
武藤 直人
富士重工業(株)
取締役 兼 専務執行役員
<特別講演2>
Globalization of Samsung Electronics
Y.W.Lee
サムスン電子(株)常任顧問
グループ討論  
12/8(土) グループ討論報告 司会:山内 康仁
報告:各班リーダー
ファシリテーター:飯塚 悦功
総合討論
第95回品質管理シンポジウムまとめ 山内 康仁
95QCS主担当組織委員
第96回品質管理シンポジウム案内 岩崎 日出男
近畿大学 名誉教授
96QCS主担当組織委員
山内組織委員
山内組織委員による
オリエンテーション

今回のシンポジウム主担当の山内康仁組織委員(アイシン精機(株) 相談役)が、オリエンテーションにおいて、このテーマを取り上げた背景を次のように述べた。

「日経流通新聞が毎年発表する「ヒット商品番付の横綱」を年代ごとに抜粋すると、その時代のライフスタイルが見えてくる。ヒットする商品は、その時代の“社会構造や生活様式”と“企業の技術力”によるところが大である。1970年当時、映画「007」シリーズの中で、2000年代にヒット商品となる携帯電話やGPS追跡システムがすでに登場していた。夢を描き、夢を追いつづけることが、“夢”を“形”に変えることにつながる。一方、人は太古の時代から「空を飛びたい」という夢をもっていたが、実現したのは、100年前。“夢”を“形”に変えるには、“技術”も必要である。

近年、特許出願件数やIMD国際競争力を見ると、日本の国際競争力が低下しているのではないかという危惧がある。昨今、日本発のヒット商品が少なくなり、日本の若者から日本製品離れが進んでいるのではないか。

新商品の創出には、“夢”と“技術”が不可欠だが、グローバル化が進み、市場の環境が瞬時に変化する現在、日本から世界に心ときめく新商品を提供するために、日本企業には今まさに変革が求められている。今回のシンポジウムではここに着目し、企業が、“何を”“どう”変えねばならないかを深堀する。(関連記事:2012年10月ー12月「第95回品質管理シンポジウム」連動特別企画

<特別講演1>
新興国市場をとりこにするグローバルマーケティング
財部 誠一氏(経済ジャーナリスト)

160名に及ぶ参加者が、講演に聴き入る イメージ
160名に及ぶ参加者が、講演に聴き入る
財部 誠一 氏
財部 誠一 氏

財部氏は、気鋭のジャーナリストで、テレビやラジオでも広く活躍中であり、読者もご存知だろう。

氏は、特定の企業や業種を選定し、5年、10年と定点観測することで、世界観を固めることができるという。300社の取材を通じ、「日本は内向きな社会で、海外に対する関心が薄い」と指摘する。

1970年ごろまで、「欧米のインフラ+新興国の日本」という絶対的優位性があり、その中で日本製品が売れていた。この感覚をそのまま今の新興国にもち込んではいけない。1990年代になると、インド・ロシアなどの社会情勢が悪化し、危険を感じた大多数の日本企業は撤退してしまった。2000年代前半には、日本を代表する自動車、エレクトロニクス企業も、新興国で惨敗した。日本企業は、新興国で戦うことがどういうことか、見えてなかったのではないか。欧米の社会インフラの提供を受ける中での、先進国相手のビジネスモデルの感覚を、新興国やインドへもって出て行った。欧米相手のように“品質を上げて”市場に出るということは、今の新興国には通用しない。

新興国市場のマーケティングは、「日本人社員が現地化していて、そこに本社と戦える人がいるか」で決まる。日本の企業は世界中に拠点をもっている。世界中にネットワークがあり、本社に情報を集める機能もある。しかし、それが機能していない。本社では、現地で求められているものが、まったくわかっていない。

コマツは、中国という環境下で建機にGPSを設置することで、銀行が建機を担保に融資をかけられるという、市場に合った価値を付加した。インド人が好むテレビは、いかに早く大きな音が出せるかである。インド・中国・ロシア、いずれもまったく違う市場であり、求められる価値・価格・品質が異なる。インドにはインドの事情が、中国には中国の事情があり、ここに日本のものや仕組みをもち込んでも受け入れられない。ブラジルや中国における味の素、上海でのサントリービール、インドでのパナソニックなど、これらの企業の成功は、いずれも日本人社員と現地人がともに現地に住み込み、徹底的に現地人の嗜好を調べ、販路と資金回収の仕組みを足でつくり上げてきた結果である。

ASEAN諸国やブラジルには、3度の食事を1食に減らしてでもクルマをもちたいと思う人がいくらでもいる。“ワクワクするもの”は、国によって違う。「新興国で成功するマーケティングは、“現地に通じる社員”がいて、“本社が権限委譲(トップがその人たちの情報を評価)”していることである」と締めくくった。

<基調講演>
高品質・高信頼性とイノベーターのジレンマ、そしてワクワク品質の源泉は?
圓川 隆夫 氏(東京工業大学大学院)

圓川 隆夫 氏
圓川 隆夫 氏

高度成長時代、「顧客(価値、満足)」―「顧客ニーズ」―「設計品質」―「適合品質」、すなわち“表の品質”と“裏の品質”がうまく廻っていたが、今はそうではない。新興国と一口でいっても、国ごとに顧客価値が違い、それが見えないとサイクルは廻らない、もう一度これをうまく廻すようにすべきという内容で講演をされた。

IMD国際競争力ランキングなどを見ると、日本のCS重視経営は世界トップクラスであるが、起業家精神では最下位である。世界ではCS重視と起業家精神は相関があり、日本だけが例外である。日本はかつて高品質・高信頼性を打ち出すことで大きく成功したが、今、日本が乖離してしまい、ボリュームゾーンとなった新興国市場が見えなくなってしまった。

ものづくりの収益力の源泉は、ものづくり組織能力→裏の競争力→表の競争力→収益力とつながる。裏の競争力である設計・生産だけでは儲からない。表の競争力である販売・マーケティングとの一体化や、ブランド戦略、設計の発想転換(Frugal Engineering:倹約工学)を考えることが必要である。

新たな顧客価値(表の品質力)創造の視点と戦略は、次の4つにまとめられる。

  1. ・市場の適正品質を捉えた低価格製品(適正品質は、市場によって異なる。新興国やBOPの顧客ニーズの真摯な発見と発掘)
    ・差別化軸の転換(国、地域ごとに土俵を変えた価値を提供する)
  2. 品質差の見える化(圧倒的な品質を“見える化”する)
  3. プラスアルファの価値の創造(機能的価値から情緒的価値の創造、“モノ”を売るから“コト”を売る、など)
  4. 日本流ガラパゴスの売込み

ワクワク品質の源泉を探ると、知覚品質は、“実用的信念”と“情緒的信念”に分かれるが、情緒的信念のほうが、よい方向に働く。たとえば携帯端末やファーストフードを調べると、機能的価値より情緒的価値のほうがロイヤルティーにつながっている。しかし、シャンプーの場合、各国によって好むデザインや色使いが異なり、日本人の好むデザイン、色使いが通用しない傾向がある。

オランダの社会学者であるG・ホフステードが唱える国の文化を特徴づける4次元でいえば、日本は“不確実性回避”が他国に比べて特に強い。この文化から生まれる技術主義にもとづく「仕上げ」の美学がある。情緒的な心の動きを大切にし、モノそのものがもっている価値を尊敬する。この日本文化の心情・素地を組織的に開花させれば、国際競争力も強化される。

日本文化にマッチする社会的評価(学習)理論は、“内部モデル(ビジョン)”を共有する“ES(従業員満足)”をベースにした“CS”“経営成果”の好循環サイクル・マネジメントの活性化であり、グローバル化の中で成立させるには、価値観をいかに共有するかが重要と語られた。

<講演1>
日本のこれからの“モノづくり革命”
田中 千秋 氏(東レ(株))

田中 千秋 氏
田中 千秋 氏

田中氏は今、世界は歴史的転換点にあるとし、「環境・資源・エネルギーの新時代」「真のグローバル化のはじまり」の2点から、日本の製造業の生き延びていく道を訴えた。

1点目は、世界規模の課題への取組みであり、その課題とは「地球温暖化抑制」「再生可能な資源・エネルギーの確保」「水不足問題」「ヘルスケア」である。

グリーンイノベーションを進めるには、環境に配慮し、“計量的に進めること”が大切である。製造から廃棄までの製品ライフサイクル全体で排出される環境負荷物質を見ると、製品使用段階で自動車は83パーセント、航空機は99パーセント、火力発電では97パーセントが排出されている。ここに配慮すれば、環境問題の解消(環境負荷低減)と経済成長(持続的成長)の両立が可能ということだ。ライフサイクルアセスメント(LCA)を軸とした環境経営が重要で、日本がリードして標準化すべき、と主張する。

実例として、1961年から50年間にわたり開発がつづけられ、近年需要を増している東レの炭素繊維をあげた。たとえばボーイング社の航空機では機体構造重量の20パーセントの軽量化を遂げ、CO2削減に大きく貢献した。これを自動車に使用できれば、構造部品点数を20分の1に削減できる。近年は韓国・中国・欧米も開発をはじめているが、簡単には真似できない。日本には、長年研究をつづけた強みがある。近年、さまざまな先端材料の部材開発が進められているが、最先端部材によるイノベーションは、企画段階から完成品メーカーと共同して進めるべきであるという。

2点目として、真のグローバル時代について次のように述べた。

1979年、日本はあらゆる指標で世界のトップだったが、その後は低下の一途である。G2の時代からG8、G20ときて、現在は多極化・無極化の時代へと変化する中で、多くの日本製品が負けてしまった。日本はこれまで、完成品メーカーの下に部品や材料メーカーなどが隷属的な関係をつくり、階層別に異業種間分業をしてきた。しかし、今はそれぞれの企業が技術的強みをもち、業種間連携をしてものづくりをする時代である。垂直統合型連携で、最終製品の企画段階から、川上・川下の開発を連携し、オープンイノベーションで進めていかなければならない。

東レでは、グループ内で製糸から縫製まですべてを行い、小売についてはユニクロとパートナーシップを締結して、素材から最終製品まで一貫した開発体制で進めている。この体制により1億2,000万着も売れる製品が生まれたという成功例をあげ、先端材料メーカーと完成品メーカーが企画段階から連携することの重要性を指摘された。

<講演2>
富士重工業の“新商品創出”の背景
武藤 直人 氏(富士重工業(株))

武藤 直人 氏
武藤 直人 氏

本講演では、富士重工業のクルマづくりの開発哲学と、これを基本としてきた製品開発について、実例を交えて話していただいた。

スバルのクルマは、1958年販売の「てんとう虫(スバル360)」からはじまった。大人4人の空間確保を前提とし、人を中心に据えたクルマづくりの開発であった。その後、FF1000(1966年)では水平対向エンジンと広い室内の実現、レオーネ(1972年)では縦置きレイアウトでのAWDと、開発を進めてきた。

スバルのクルマづくりの訴求ポイントは「安全・安心」と「愉しさ」であり、その実現には技術が必要であった。0次安全(予防安全)から3次安全(救急、被害拡大防止)までの各ステップで、種々の開発がなされてきた。原価は高くなっても安全設計を追及することで、欧米・オーストラリアなどで衝突安全に関する表彰を受けると同時に、低重心で走安性の優れた乗り心地のよい、“愉しい”クルマができあがった。

この講演では、主に「アイサイト」の開発について語られた。アイサイトは、ドライバーのヒューマンエラーの回避と運転負担軽減を支援する安全運転システムである。この種のシステムは、他社ではレーザーなどを用いることが多いが、スバルでは原価より基本原理にこだわり、独自のステレオ画像認識技術を用いた。人の眼と同じにするという技術で、すべての交通環境把握が可能なシステムをめざして開発が進められたのである。これは、予防安全の時代の到来を予期した22年前のことである。

そして、第5世代となる新型アイサイトは、プリクラッシュブレーキ機能とプリクラッシュブレーキアシスト機能や、全車速追従機能付クルーズコントロール、AT誤発進抑制制御機能などの先進的な機能をもつ。これにより、衝突回避や運転負荷軽減、誤動作の抑制を実現している。新型アイサイトは2010年に販売した「レガシー」に低価格で搭載、市場で好評を得て急速に普及した。先進国で先行販売し、その後に展開した各国でも高く評価された。エコロジーの実現を図りつつ、自転車や歩行者などの周囲認識を拡大させ、「人の命を守る」ためのさらなる開発が進められている。

富士重工業の前身である中島飛行機から受け継がれた富士重工業のクルマづくり、スバルの開発哲学は、乗員も歩行者も安全にという「人を中心としたものづくり」であった。スバルのクルマづくりは、スバルらしさの追及であり、「安心」と「愉しさ」のトップブランド、オンリーワン商品をめざしている、と締めくくった。

<特別講演2>
Globalization of Samsung Electronics
Y. W. Lee 氏(サムスン電子(株))

Y. W. Lee 氏
Y. W. Lee 氏

サムスン電子は1969年に創立され、2010年には世界ナンバーワン企業となった。この成長につながった、イ・ゴンヒ会長の「新経営」と「サムスン電子のグローバル戦略」の概要を講演いただいた。

1980年代末から1990年にかけ、サムスンのイ・ゴンヒ会長は、世界が「グローバル化・自由化」「デジタル化」へと変貌し、開発途上国の第2次産業製品が供給過剰になる中で、OEM主体の事業に懸念を覚えた。世界の環境の変化が会社にとって大きな脅威となることを感じ、「新経営」へと改革を打ったのである。

1993年、イ会長は管理者をロサンゼルスに集め、販売店の展示を見せて、「安かろう・悪かろう」という当時のイメージを変えるための意識改革を図った。改革するためのこうしたメッセージの発信は、フランクフルトに1,800人を順次呼んで、合計48回、351時間にも上った。「変わらなければ生き残れない」という危機意識を直接伝え、全管理者の根本的な価値観(意識)の変革をめざしたのである。そして、一流企業に生まれ変わるための質的な経営をめざし、3P(Product・Process・Personnel)革新を実施した。

その革新の1つに掲げられたサムスン電子のグローバル戦略は、次の3項目である。

  1. グローバルマーケティングの強化:よい製品でもブランドイメージを上げないと売れない。GMOを新設し、各国の認知度向上のため、広告の展開やスポンサー活動をする。
  2. グローバルマニュファクチャーの強化:グローバル競争力を高めるには、“現地の文化、環境、経済”に合った製品を売ることが基本である。現地でマーケティングし、現地R&Dで開発し、現地工場で生産し、サービスできる拠点をつくり上げる。
  3. グローバルマネジメントシステムの強化:海外オペレーションをリアルタイムで本社でもわかる業界ナンバーワンのシステムをつくり上げる。

また、多様な人材の育成にも積極的に取り組んだ。たとえば地域専門家である。入社5年目くらいの社員を、各自の希望する国に1年間派遣し、派遣先の言葉と文化を覚えてもらう。その後、その中から60ヵ国の販売やマーケティングの担当者として、これまでに2,000名が派遣されている。また、海外MBAをはじめ、多様な教育プログラムにも力を入れている。

新経営宣言をした1993年に比べ、2011年は売上げで5.7倍、人員で4.8倍という数字を示し、『Fortune』誌の2012年グローバル企業ランキングでは20位、ブランド価値で9位という評価を得た。2020年に向けて「Inspire the World, Create the Future」というビジョンを掲げ、売上げ4,000億ドルをめざし、さらなる改革を進め、革新的な製品と技術、デザインで人類の生活を豊かにし、新しい未来の創造を通じて社会の繁栄に寄与していくと語った。

グループ討論

グループ討論では、表2のテーマについて、深夜まで活発な意見交換が交わされた。営業・開発・品質・経営など幅広い専門家が多く集まったことで、従来にはない斬新な切り口での深掘りがなされ、参加者も楽しんだものと思う。

それぞれの論点と、アウトプットとなる提言を、以下に紹介する。

表2 グループ討論
テーマとリーダー
第1班 将来のニーズを継続的に創造するための基本的前提と企業に求められる価値観
加藤 雄一郎(名古屋工業大学)/高柳 毅(コーセル(株))
第2班 新しい価値創造のための核となる技術の蓄積
猪原 正守(大阪電気通信大学)/岡田 慎也(ダイキン工業(株))
第3班 市場情報とコア技術を活用し、商品化する能力の向上
中條 武志(中央大学)/鶴岡 亮一(富士ゼロックス(株))
第4班 商品化に結びつける強力なリーダーシップの育成
松田 啓寿((一財)日本科学技術連盟)/向井 正人((株)本田技術研究所)
第5班 ワクワクする商品が生まれる企業文化の醸成
大藤 正(玉川大学)/浅野 功(パナソニック(株))
第6班 グローバル化におけるワクワクした新商品創造
石津 昌平(青山学院大学)/山田 透((株)小松製作所)
第7班 トップの役割
長田 洋(東京工業大学)/山岡 建夫(JUKI(株))

第1班:将来のニーズを継続的に創造するための基本的前提と企業に求められる価値観

ディスカッションの切り口
  • 企業の価値観:「顧客にニーズを訊く」という姿勢から、「顧客自身が気づいていない将来ニーズを創る」という立脚点に移行する上で、企業側に求められる前提は何か。どのような基本認識を全社レベルで共有すべきか。
  • 方法論・思考技術:従来型の改善だけではワクワク商品が生まれづらいとすれば、どのような考え方や手法、方法論が必要か。問題解決型QCストーリーをはじめとする「不具合改善型」の思考に加え、どのようなタイプの思考技術が必要か。
提言
  • 顧客とともに掲げるCSV(Creating Shared Values)からバックキャスティングすることで、ワクワク品質アイデアが生まれる。
  • 全社レベルで掲げた共通価値を担当者レベルまで自分ゴト化する仕組みづくりが求められる。
  • アイデアを生み出すために、①実践の仕組み、②実践の支援、③教育、④啓発施策が求められる(③→①を直結させることが肝要)。
  • アイデアを潰されないために、①論理性、②担当者の熱い想い、③上司を喜ばせる提案が必要である。
  •  

第2班:新しい価値創造のための核となる技術の蓄積

ディスカッションの切り口
  • 新しい価値創造に役立つ自社技術の開発と自社外技術の収集によって蓄積した技術を常に活用できる状態にし、トップでありつづけるため、企業は何をしなければならないか。
  • その“あるべき姿”を実現するため、企業は何を、どのようにしなければならないか。
  • その実現策を実行するための課題と解決策はどのようなものか。
提言
  • 新規開発技術のGo/Stopを決める目利きマネジメントの構築
  • 新しい価値創出のための保有技術の高度化と再利用の仕組み
  • 自社外技術の収集と有効活用
  •  

第3班:市場情報とコア技術を活用し、商品化する能力の向上

ディスカッションの切り口
  • ニーズを捉え、コア技術を開発していたにもかかわらず、新商品を生み出せないのはなぜか。
  • ニーズとシーズを結びつけ、商品に仕立て上げる商品化能力を向上させるには、組織・仕組み・人材育成などをどう変えればよいのか。
  • そのためには具体的にどう行動すればよいのか。
提言
  • 熱意と志のある技術者を探し、育てる。
  • 技術者と企画・営業が連携する仕組みをつくり、商品化のシナリオを提案させる。
  • 商品化した場合をなるべく早い時期に考え、足りない周辺技術についてはMake or Buyを決める。
  • 経営者が自社の社会的使命を考え、イノベーション案件をオペレーション案件から分けて対応する。
  •  

第4班:商品化に結びつける強力なリーダーシップの育成

ディスカッションの切り口
  • “心ときめく商品”を実現させるリーダーシップ、そのような人材の発掘や、持続的育成のために、組織は、何をどのように変えねばならないか。
  • シーズ技術開発~量産技術に結びつけるまでの強力なリーダーシップとは、具体的にどのような力量なのか。
  • リーダーシップの人材発掘・力量付与/育成に対する組織内の障害とは何か。
提言
  • 継続的に商品を開発しつづけるために、リーダーの育成も組織の意志として継続しなければならない。
  • リーダー育成のためのプログラムを作成し、実行する。
  • リーダー候補となる優秀な人材を自部門だけで囲い込まない。
  • 経営が苦しくても定期的な要員補充を維持する。
  •  

第5班:ワクワクする商品が生まれる企業文化の醸成

ディスカッションの切り口
  • 企業文化・組織文化の要素とはどのようなものか。
  • 起業精神を持ちつづける企業文化・組織文化とはどのようなものか。
  • そのような文化をつくるにはどうすればよいか。
提言
  • 自社の企業文化の診断(現状把握)
  • 変更点の確認
  • 変更担当者のネットワーク作成
  • 必要な変化の計画(構造上、過程、人事)
  • 発展の診断の継続

これらの実施に加え、「コミュニケーション時間の創出」「組織構成員の意見を聞くシステム」「外圧を利用する(CM etc.)」「ビジョンの共有化」が必要となる。
 

第6班:グローバル化におけるワクワクした新商品創造

ディスカッションの切り口
  • グローバル化においてワクワクした新商品創造にどんな対応が必要か。
  • これらを具体的に実施するには、どのような組織運営が必要か。
提言
  • グローバル化のための本社の役割として、準備と社内の仕組みづくりが求められる。
  • グローバル化の実施には、経営者の決断と覚悟が必要である。
  • 現地でのどぶ板商品企画活動が必要である。
  • スピード感ある商品開発が求められる。
  •  

第7班:トップの役割

ディスカッションの切り口
  • ワクワクした商品創出の各ステージにおけるトップの役割は何か。
    (ステージ1)市場ニーズの発掘(商品企画)
    (ステージ2)ニーズを具現化する商品開発
    (ステージ3)市場に商品を普及させ、市場を創造する
提言
  • 顧客が抱える将来課題の発見と新商品開発へのフィードバック
    -トップの顧客訪問・現場を知る、環境の変化(PEST分析)から課題を発見
  • 人材育成
    -イノベーターの発掘と処遇
    -問題解決力に加え、課題発見・形成ができる人材
    -ダイバシティマネジメント(女性/外国人の登用、内なる国際化)
  • 企業文化(組織風土)の維持と改革
    -企業理念・文化の海外現地への移植
    -挑戦する風土の醸成
  • TQMの課題
    -現在のビジネスモデル(業態)、製品のライフサイクルの予測手法と対処
    -顧客のニーズが顕在化していない新商品のグローバル市場創造の方法

総合討論とまとめ

最終日には、各班リーダーによる前述の討論成果の報告が行われた。これにつづきパネルディスカッションが行われ、ファシリテーター役をつとめた飯塚悦功氏(東京大学)の進行で、活発な意見交換が行われ、プログラム終盤まで盛り上がりを見せた。

最後に、第95回品質管理シンポジウム主担当組織委員の山内氏から、振り返りと感想が述べられた。

山内氏は本シンポジウムテーマの背景として、1980年代、高品質・高信頼性で世界のトップランナーになった日本製品だが、グローバル化が加速しパラダイムシフトが進む現在、“商品の質そのもの”が問われる時であると語った。今回のシンポジウムを通じ、自社についても対応すべき示唆が得られたとして、「市場のお客様の生態系まで知る」「研究開発の環境づくり」の2点の見直しが必要と述べた。

おわりに

この原稿を書いている時、サッカーのトヨタ・クラブワールドカップの準決勝が、私の地元にある豊田スタジアムで行われた。南米代表のコリンチャンス(ブラジル)と、アフリカ代表のアルアハリ(エジプト)の対戦で、スタジアムを訪れた3万1,000人のほとんどが、コリンチャンスのサポーターだった。テレビ実況のアナウンサーが、地元サンパウロからやってきた多くのサポーターの中には、自分の家やクルマを売って費用を捻出し、飛行機と新幹線を乗り継いで豊田スタジアムに駆けつけた人もいる、といった。

本シンポジウムの講演で財部氏は、「世界にワクワクした人はたくさんいるし、その人たちの求めているものは、日本にたくさんある。ワクワクしていないのは日本人だけだ」と話された。

好きなサッカーチームを応援するという2時間の「ワクワク」のために、大枚をはたいて日本までやってくるブラジル人。今、日本企業のお客様は、世界のこんなワクワクした人たちだ。新商品創出のために、彼らのほしいものを理解しなくてはならない。それには、ものをつくるわれわれが、まずワクワクすることをたくさん見つけることではないか。

◎次回、「第96回品質管理シンポジウム」は、2013年6月6日(木)~8日(土)開催!
  テーマ:世界最高技術と日本品質を極める人材育成~持続可能な品質優位の経営~
 

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