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HOME > 2014年7月-9月(No.10) > スペシャルインタビュー > (株)ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング・小澤洋介氏

人類が生存するかぎり成長しつづける企業めざす (株)ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング 代表取締役社長 小澤洋介氏

自家培養表皮を製品化している日本で唯一の会社

―御社は臨床現場で使われている自家培養表皮『ジェイス』と自家培養軟骨『ジャック』を手がけています。それぞれ、どんな製品なのですか。

※画像クリックで拡大できます。 自家培養表皮『ジェイス』
自家培養表皮『ジェイス』
(以下、図表・写真すべて、ジャパン・
ティッシュ・エンジニアリング提供)

両者に共通するキーワードは「自家」。つまり、自分の細胞を使っているということです。もともと自分の細胞を増やしたものなので、移植にともなう拒絶反応を起こす心配がない。これが一番の利点です。

『ジェイス』は、ヒト細胞組織を利用した再生医療等製品の国産第一号です。薬事法上、体表部分の30%以上にやけどを負っている重い患者さんにしか使えません。ご本人に残された正常な部分の皮膚を採取して3週間培養した後、出荷検査や梱包を経て医療機関に運びます。

培養表皮を増やす基本的な技術を開発したのは、米国ハーバード大学のハワード・グリーン教授です。海外にはたくさんの再生医療等製品がありますが、グリーン型の培養表皮は各国の細胞培養製品の開発で常に先頭走者です。当社もこの技術の供与を受けて『ジェイス』を開発しました。グリーン教授は自ら開発した技術による製品化を1ヵ国1企業にしか認めていないので、日本では当社しか製品化することができません。また、現時点において国内のバイオ系ベンチャーで工場を備えているのは当社だけです。

※画像クリックで拡大できます。 自家培養表皮ジェイスのビジネスモデル
自家培養表皮ジェイスのビジネスモデル
※画像クリックで拡大できます。 当社のバリューチェーン
当社のバリューチェーン

―「生きた素材」を扱うだけに、気を使うことも多いでしょうね。

『ジェイス』はそれを必要とする患者さん1人ひとりに合わせた完全オーダーメイドですから、2つと同じ製品がありません。対象年齢も生後2ヵ月の新生児から99歳の成人までと幅広い。やはり、若い人の細胞ほど「活き」がよく、高齢者のものほど勢いがなくなる傾向があります。

『ジェイス』を使うということは、相当に重篤な状態であるということです。治療のためには最大200枚の培養表皮が必要です。培養表皮は1枚ずつ専用の容器に密封されて工場から医療現場に運ばれます。培養表皮は薬品ではないので、法的には「医療機器」と分類されています。医療機器ですから、輸送中の状況を想定した振動試験や落下試験も丹念に行います。

しかも出荷後56時間という厳然たる使用期限があります。どんな包装がよいのか、物流体制はどう組むのかなど、毎日が試行錯誤の連続でした。誰もやったことがないので、分からないのです。
 

―時間との勝負という点では、作製に要する3週間という長さももどかしいのでは。

『ジェイス』の受注、出荷実績の推移をみると、受注件数に対する「出荷前製造中止率」という項目があります。要するに、培養期間中に患者さんが亡くなったために製造を中止した割合です。2010年3月期に約30%だった比率は2012年3月期に約40%、2013年3月期に約45%に増えたものの、2014年3月期には約25%にとどまりました。つまり、培養表皮が届くのを待っているうちに患者さんの3分の1が亡くなるということです。

では、誰がその費用を負担するのか。簡単なことですが、当社が費用を負担しています。決して小さな額ではありませんが、ようやく再生医療が広まってきた指標と捉えることもできるのではないかと思っています。
 

―「自家」シリーズ第二弾の『ジャック』の開発には、どんな想いで臨まれましたか。

※画像クリックで拡大できます。 自家培養軟骨『ジャック』
自家培養軟骨『ジャック』

この製品を使う対象は、事故やけがなどで膝関節の軟骨を欠損したり炎症を起こしたりしている場合です。使うには他に治療法がなく、軟骨の欠損面積が4平方センチメートル以上という条件があります。ただし、加齢による変形性膝関節症は対象外です。

『ジェイス』の場合と同様、患者さんの正常軟骨0.4グラムを採取して4週間培養した後、軟骨欠損部に移植します。『ジェイス』の場合は1枚いくらという計算でしたが、『ジャック』は使用した個数にかかわらず、一膝いくらで計算します。画期的な考え方だと思います。

後で詳しくお話しますが、第一号製品の『ジェイス』を形にするまでは苦難の連続でした。途中で投げ出そうとしたことは何度もあります。でも、歯を食いしばって頑張った。それは『ジャック』が再生医療市場を広げる大きな契機になると信じていたからです。物事には順番があります。『ジャック』を手がけるにはまずは『ジェイス』で実績を残す必要があったのです。

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