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HOME > 2015年1月-3月(No.12) > コラム・エッセイ > QMコラム(第8回)身をもって学んだ「後工程はお客様」
[QMコラム]を連載します。

第8回
身をもって学んだ「後工程はお客様」

約30年前に新入社員として入社した私が最初に配属された部署は、自社で使う工作機械の開発部門でした。配属後すぐに、当時会社をあげて推進されていたプロジェクトの一員となりました。部長がそのプロジェクトのリーダーで、工具や部品などは特急でつくってもらうことができました。仕事はおもしろく、世の中にない新しい工作機械の開発に、当時の私はとても夢中になっていました。

ある時、新しい工具のアイデアを思いつき、私は工具の図面を書き、当然のように特急扱いで製作してもらうよう社内の加工課に頼みました。その日の午後、加工現場のおじさんから呼び出しがあり、私が現場に行ってみると、自分の書いた工具図面を囲んで数人の作業者たちが私の到着を待っていました。

するといきなり「この外径寸法公差内にどうやって加工するんだよ?」と質問されました。私の書いた図面には、外径の寸法公差が±0.001、すなわち±1ミクロンと書かれていました。私は「今までもこの公差でお願いしてきました。この最新の研削盤であれば、十分可能だと思います。」と答えましたが、すると別の人が「じゃあ、自分で加工してみろよ」と迫ってきました。残念ながら、当時の私にはその機械を操作することはできなかったので、「すみません。自分では加工できません。図面を書き直してきます。」と答えるのが精いっぱいでした。

次の日、図面を新たに書き直していると(当時、図面はすべて手書きであり、消しゴムで消せるものは消して書き直したが、図面が汚れるため、多くの場合は新たに図面を起こし直していた)、昨日工具を頼んだ加工課の方が来て私にいいました。

「昨日の工具、急ぎなんだろ。ほら、できあがったから使ってみな。」といって、できあがったばかりの工具を私に手渡しました。

さらに「図面ではどんな公差も入れられるけど、これからはつくる立場も考えて書いてくれ。おれたちは職人だからどんな図面もなんとかしてやる。でも量産になったら苦労するのはいつも現場だよ。」といって肩をたたかれました。

つくってもらった工具の寸法を測定してみると、すべての工具が±1ミクロンの公差内で、図面のとおりのものでした。とてもうれしくて、現場のおじさんたちに申し訳なくて、自分が情けなくて涙が出ました。

その後、品質管理の社内研修を受け、そこで「後工程はお客様」という言葉を教わりました。このような若い時の経験から、私は仕事が終わるたびに「自分は“後工程はお客様”と考えて仕事をしたか?」と自問自答するように心がけてきました。

あれから30年が経ち、自分もかつての加工課のおじさんと同じような年齢になりました。「自分は、あの時の加工課のおじさんのように後輩を教育できているのかな?」と、振り返り反省の日々です。

(T. S.)

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