クオリティマネジメント Quality Management

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HOME > 2015年01月-03月(No.12) > 特別企画 > 「第99回品質管理シンポジウム」ルポ

「第99回品質管理シンポジウム」ルポ

第99回品質管理シンポジウム・ルポ
バリューチェーンと組織の改革による持続的成長
~経営資源の価値化と企業活動の構造~

森崎 修司 氏
名古屋大学大学院 情報科学研究科 准教授
森崎 修司 氏

 

第99回品質管理シンポジウムが2014年12月4日~6日に箱根ホテル小涌園で開催された。テーマは「バリューチェーンと組織の改革による持続的成長 ~経営資源の価値化と企業活動の構造~」である。本稿では、その様子を時系列順に報告し、最後に私のふりかえりを述べる。

シンポジウムは大きくわけて、講演とグループ討論から構成される。講演は写真1のようなメインホールでシンポジウム参加者全員が聴講し、登壇者の講演の後に質疑の時間が設けられている。今回のシンポジウムでは6件の講演があった。

グループ討論はテーマごとにわかれて実施され、その後、グループから全体に討論内容を報告する。今回のシンポジウムでは6グループにわかれ、それぞれのグループは20名ほどの参加者で構成された。全体のプログラムを表1に示す。各グループのテーマとリーダーは表2のとおりである。

シンポジウム当日のグループ討論に先立って、シンポジウム開催のおおむね1ヶ月前にメーリングリストが開設され、電子メールの同報配信(メーリングリスト)を利用して、事前に自己紹介や分科会テーマに関して情報共有、意見交換したりアンケートに回答したりする機会がある。こうした情報共有や意見交換、開催期間中の討論の内容は各グループのリーダーと世話人とがとりまとめる。進め方の詳細はグループごとに異なるが、シンポジウム当日の討論は、メーリングリストでの情報共有、意見交換、アンケート回答を踏まえたものになる。

写真1 会場風景
写真1 会場風景

表1 第99回 品質管理シンポジウム プログラム

月/日 科目 講演者(敬称略)
12/4
(木)
<特別講演>
繁栄と持続性のための科学技術
吉川 弘之 氏
(独)科学技術振興機構
研究開発戦略センター長
グループ討論メンバー自己紹介  
談話室(参加自由)  
12/5
(金)
主催者挨拶 (一財)日本科学技術連盟 役員
<基調講演>
バリューチェーンと組織の改革による持続的成長
宮村 鐵夫 氏
中央大学 教授
理工学部経営システム工学科
(99QCS主担当組織委員)
<講演1>
ものづくりの寓話
和田 一夫 氏
東海学園大学
経営学部 教授
<講演2>
"SKYACTIV"と"マツダモノ造り革新"
金井 誠太 氏
マツダ(株)
代表取締役 会長
<講演3>
Panasonicの成長戦略とモノづくり・品質の取り組み
稲垣 道世 氏
パナソニック(株)
環境・品質センター 所長
質疑・応答  
<講演4>
事業の拡大と人財のグローバル化
木川 理二郎 氏
日立建機(株)
相談役
質疑・応答  
グループ討論の主旨説明 宮村 鐵夫 氏
グループ討論  
談話室(参加自由)  
12/6
(土)
グループ討論報告(10分×6班 ※予備15分) 司会:宮村 鐵夫 氏
総合討論  
第99回品質管理シンポジウム まとめ 報告:各班リーダー
宮村 鐡夫 氏
次回(第100回)品質管理シンポジウム案内 佐々木 眞一 氏
日科技連 理事長
(100QCS主担当組織委員)
昼食・解散  

表2 グループ討論班編成

テーマ/リーダー
第1班 革新を引き起こすリーダーの攻略とは
リーダー:久保田 洋志 氏(広島工業大学名誉教授)/世話人:向井 正人 氏(本田技研工業)
第2班 イキイキと働くことに繋がる目的・ビジョンの共有と秘訣
リーダー:荒木 孝治 氏(関西大学)/世話人:荒井 弘司 氏(アーレスティ)
第3班 改革・改善におけるシステムズ・アプローチ
リーダー:松田 啓寿 氏(日本科学技術連盟嘱託)/世話人:藤本 高宏 氏(デンソー)
第4班 局所的な変化の大きな変化・成果への価値化
リーダー:太田 雅晴 氏(大阪市立大学)/世話人:北廣 和雄 氏(積水化学工業)
第5班 需要構造の変化に対応できる組織能力
リーダー:奥原 正夫 氏(諏訪東京理科大学)/世話人:中川 昌之 氏(ジーシー)
第6班 ソリューションビジネスを担える開発の進め方
リーダー:山田 秀 氏(筑波大学)/世話人:佐藤 義和 氏(富士ゼロックス)

1日目

19時30分から総勢151名の参加者の中、特別講演からはじまった。

吉川 氏
吉川 氏

<特別講演>
「繁栄と持続性のための科学技術」
吉川 弘之氏 ((独)科学技術振興機構・研究開発戦略センター長)

吉川氏のご講演では、これまでの日本のイノベーションや公共研究を振り返られ、その後、21世紀の日本のイノベーションの展望を示された。人口の変化、経済・国民生産、エネルギー、食糧、社会資本といったさまざまな側面から世界の中の日本の位置づけが紹介された。そして、21世紀における日本のイノベーションの低迷といった課題、いまやるべきことを紹介された。その中で産学連携によるイノベーションがめざすべき姿、大学教育のあるべき姿を示された。

グループ討論

21時からテーマごとにわかれてグループ討論がはじまった。各グループはそれぞれの会場に移動する。私が参加した第3班では、自己紹介を中心に翌日からの討論のための下準備が行われた。22時からは会場を談話室に移し、おおむねグループ単位で情報交換が実施された。

2日目

2日目は8時30分から参加者全員で基調講演、特別講演を聴講した。16時からグループごとの討論となるが、朝食会場でシンポジウム参加者にお会いすることもある。2日目の朝食にかぎらないが、こうした食事の場、休憩時間に「昨日の話ですが…」と切り出して議論したり情報交換したりすることもできるのが、本シンポジウムの魅力の1つである。また、就寝の際の部屋は参加者2名の相部屋になっており、そこでも議論や情報交換ができる。そこには、都市部で開催されるシンポジウムとは一味ちがう一体感や楽しみもある。

<主催者挨拶>
佐々木 眞一氏(日本科学技術連盟 理事長)

本シンポジウムの主催者の佐々木氏から挨拶があった。また、担当部門長の安隨氏から本シンポジウムの賛助会員会社が3社増え、75社となったことが報告された。

※品質管理シンポジウムは企業の皆様のご協力をいただき、「品質管理シンポジウム賛助会員制度」により資金的ご協力のもとに組織的・計画的、運営を実施しております。 詳細についてはQCS専用サイトをご覧ください。

<基調講演>
「バリューチェーンと組織の改革による持続的成長」
宮村 鐵夫 氏(中央大学 理工学部経営システム工学科 教授/99QCS主担当組織委員)

宮村 氏
宮村 氏

背景として、バリューチェーンの改善と改革、持続的成長のS字曲線、環境の構造変化について話された。次に、事業立地と持続的成長として、顧客・製品の競争戦略、上流あるいは下流への垂直統合の拡大、輸出・現地化などによる地理的拡大に関して解説され、変化と対策の具体例を示された。上流への垂直統合の拡大として他社が提供し、セブンイレブンが販売する商品、地理的拡大としてネスレの事例を紹介された。

次に経営資源の価値化として、組織能力とセンシティビティ、組織と個人のビジョン、組織改革について話された。組織に属する個人の気づきを活用し、組織のビジョンとして共有することを事例を示しながら、変化に気づき(変化のセンシング)、それを組織内部でどのようにコーディネーションすべきかを解説された。

新製品開発活動の革新として、顧客との接点、デザインルールの革新、変化を引き起こす取組みを解説された。開発の進め方を変化させるため、ユーザインタフェースのような顧客との接点やデザインルールを革新していく方法を紹介された。

最後に、学習する人と組織と題して、高い目標を共有すれば新しい考え方や行動様式をもたずにはいられなくなること、リスクを厭わない行動や実験を促すことが示され、締めくくられた。

<講演1>
「ものづくりの寓話」
和田 一夫 氏(東海学園大学 経営学部 教授)

和田 氏
和田 氏

冒頭で、定説としていわれていることや文書に残されていることを事実と突き合わせて確認し、再考することの重要性を指摘された。具体例として、フォード、GM、トヨタにおける生産技術の定説と事実とのちがいを示された。フォード・システムのベルトコンベヤーの導入による総労働時間(原価)の低減を定説として例示され、実際にそうだったのか記録を示しながら検証された。ベルトコンベヤー導入前後の組み立て時間、フォードT型が単一車種であったかどうかに関して写真や資料を元に定説では説明できない部分を示され、事実と突き合わせて再考することの価値を指摘された。GMの原価計算、トヨタの部品表、Just in Timeに関しても定説として広まっている解釈と歴史的経緯、事実との間にちがいがあることを示された。

<講演2>
「"SKYACTIV"と"マツダモノ造り革新"」
金井 誠太 氏 (マツダ(株) 代表取締役 会長)

金井 氏
金井 氏

本講演で金井氏は、SKYACTIVで解決した課題やえられた性能を示された。また、SKYACTIVのベースとなる「マツダモノ造り革新」と"Mazda way”が紹介された。

"Mazda way"はエンジニア、マネジメントの行動指針である。そのうちの1つとしてbackcastingを紹介された。長期の展望やあるべき姿をじっくり考えること、展望、あるべき姿から逆算して今何をすべきかを考えることと説明された。実践の結果として10年先を見据えて夢を考えるとそれに向かって困難を乗り越えようという思いが醸成されたことなどが示された。他にも"Mazda way"の1つとしてエンジニアの付加価値に関しても言及された。多様性とボリューム効率のようなトレードオフの関係にあるもののバランス点を探すのではなくトレードオフを両立するブレークスルーを見つけることがエンジニアの付加価値であるという点を説明された。"Mazda way"においてマネジメントの行動指針の1つとして、フロントローディングを説明された。

マネジメントは問題が起こってから解決に手をつけ問題解決で手一杯になる傾向があるが、本来はマネジメントが早期に知恵を投入し、その後に起こりえる問題を未然に防止する努力をすることがフロントローディングであることが説明され、その実践により効果が得られていることが紹介された。

<講演3>
「Panasonicの成長戦略とモノづくり・品質の取り組み」
稲垣 道世 氏(パナソニック(株) 環境・品質センター 所長)

稲垣 氏
稲垣 氏

パナソニックの品質の歴史と現在の取組みを紹介された。1945年に製品検査所を設立し、品質の原点となった。設立時の所長は創業者の松下幸之助氏である。1973年から品質管理センターを設置して安全基準を整備し、1986年には品質保証マネジメントガイドを制定した。現在の取組みとして、地域密着型での品質への取組み、事業部間の連携による製品開発が紹介された。地域密着型での品質として、インドでの炊飯器、インドネシアや中国の洗濯機をはじめとして、現地の考え方や文化に合わせた品質のとらえ方やそれにもとづいた製品開発の事例が紹介された。事業部間の連携では照明とプロジェクタの連携により開発されたプロジェクションライティング(画像や文字を投影できる照明)の製品が紹介された。

<講演4>
「事業の拡大と人財のグローバル化」
木川 理二郎 氏(日立建機(株) 相談役)

木川 氏
木川 氏

油圧ショベルの市場の特徴、環境規制の強化、販売後のメンテナンスの重要性を解説され、その取組みとしてグローバル研究開発体制を紹介された。市場の特徴の1つとして新興国に需要がシフトしていることを示され、これに合わせてインドや中国向けに現地用途の調査や現地開発をしていることが紹介された。環境規制への対応として、モーター駆動の建機、エンジンとモーターのハイブリッド建機の開発事例が紹介された。販売後のメンテナンスの事例として汎用中小型製品に求められる機能や耐久性と大規模鉱山用の24時間連続稼働建機に求められる機能や耐久性を比較されながら、求められる機能やメンテナンスの方法のちがいが紹介された。

各グループでの討論

16時からグループにわかれて討論した。メーリングリストでの事前の議論、1日目の自己紹介をもとに活発な討論があった。途中18時から19時に立食形式での夕食があり、夕食時間、夕食会場への移動時間を除くと討論の時間は3時間40分である。シンポジウムの参加申込み時点では、21時までつづく討論の時間を長く感じていたが終わってみればあっという間であった。

各グループの討論内容は3日目の午前中に報告される。本稿でも後述の3日目の部分で紹介する。ここでは、私が参加した第3班「改革・改善におけるシステムズ・アプローチ」の様子を紹介する。第3班はリーダーの松田啓寿氏(日本科学技術連盟嘱託)、世話人の藤本高宏氏(デンソー)の進行で活発な議論があった。事前に提示された3つの論点「1. バリューチェーンを見直し価値創造に成功した事例におけるボトルネックと、組織全体へ波及させる改革のポイントは何か」「2. バリューチェーンの改革・改善において、やるべきこと(やってはいけないこと)は何か」「3. 持続的成長のための改革・改善の手順化と実効化についての提言」に関して、グループメンバー間で事例の紹介や議論があった。

先述のとおり、グループ討論の内容は3日目の午前中の「グループ討論報告」の時間に各グループのリーダーと世話人により参加者全員に向けて報告される。そのため、リーダーと世話人は翌日の報告を意識して進行することになる。私が参加した第3班の松田氏、藤本氏はそうしたプレッシャーの中でも結論を急ぐことなく、自由な議論ができるよう配慮されていた。グループ討論の参加者はさまざまな経験を積まれた方ばかりで、成功要因や失敗の因果関係に対する洞察の深い方ばかりであった。市場の変化を長年みていらっしゃる方が多く、そうした知見を踏まえた意見も参考になった。先述したシンポジウムのプログラムを見た時と実際に参加した時の時間の長さのギャップを感じるのも、このあたりにあるのではないかと思う。

談話室

参加は任意であるが、21時から23時まで会場を談話室に変えて再び議論を重ねることもできる。談話室での議論はメンバーも内容も自由度が上がる。私も参加して議論を楽しんだ。

3日目

グループ討論報告

参加者全員が同一の会場に集まり、各グループの討論内容が報告される。各グループのリーダーと世話人が10分で報告し、その直後に質問やコメントの時間が設けられている。各グループの報告内容は以下のとおりである。

第1班「革新を引き起こすリーダーの攻略とは」

持続的成長のためのバリューチェーン改革の必要性と課題を議論した。内容は次の2点にまとめられる。

1つめは「グローバル化が加速する中で、日本のものづくりはどのような姿をめざすべきか」である。ここでは、付加価値の高い“もの”をつくる、情緒品質で製品を差別化していく、文化をとおして製品を提供する、新たな生活スタイルを提案するといった内容を議論した。

2つめは「輸出・現地化などによる地理的拡大にともなう組織の改革:日本と地域の役割分担の再整理と明確化をするには」であった。ここでは、現地・地域のニーズを理解する、国内を市場とするか世界を市場とするかで異なるといった内容を議論した。

第2班「イキイキと働くことに繋がる目的・ビジョンの共有と秘訣」

第2班のメンバーが企業内で実践していることを共有した上で議論した。内容は次の2点にまとめられる。

1つめは「イキイキと働くことを仕組みとしてサポートする秘訣」である。ここでは明確な上位方針の設定と展開、難しいことにチャレンジできる環境づくり、自律的な問題解決・課題達成ができる人材の育成といった内容を議論した。

2つめは「ビジョンを共有・浸透させるための秘訣」である。強い意志と信念にもとづき、ぶれないトップのリーダーシップ、ビジョンに関して職位間で対話を連鎖していく、ビジョンを語る際にWhyを伝え、納得させるといった内容を議論した。

第3班「改革・改善におけるシステムズ・アプローチ」

3つの論点に沿って次のとおり議論を進めた。

論点1は「バリューチェーンを見直し価値創造に成功した事例におけるボトルネックと組織全体へ波及させる改革のポイントは何か」である。機器販売のビジネスから顧客の業務を支援するビジネスに拡大した事例を共有した。技術的課題を克服するためには、顧客の課題を理解し解決策を提案できる技術者が必要となるといった議論があった。

論点2は「バリューチェーンの改革・改善において、やるべきことは何か」である。改革、改善を進めるためには、各自やるべきことを自覚し、全社一丸となり継続的改善を進める必要があり、継続した結果、改革が可能になるといった点を議論した。また、自工程の基準さえ満足すれば良いと考え、他の工程の状況を知ろうとしなかったり改善を試みようとしなかったりする偏った自工程完結について議論した。

論点3は「持続的成長のための改革・改善の手順化と実効化に向けた提言」である。全体最適につながるような適切な評価指標の設定が重要である、ミドルアップ・ミドルダウンが重要、改革・改善を担うことができる若手技術者の育成が必要である、といった議論があった。

第4班「局所的な変化の大きな変化・成果への価値化」

局所的な変化の事例をあげた上、次の3つの論点について議論した。

論点1は「有効な局所的変化を察知するためにはどのような人財が求められるか」である。気づく人がもつ特徴として、何が起きているかわかる人、ちがう角度からものを見ることができる人、自分の仕事だけではなく他の領域にも関心をもつといった点があげられた。

論点2は「局所的変化を周辺領域・組織を巻き込んで価値化するプロセスとは」である。3つの手順①気づく(発信)、②決める(発信されたものから選択し、組織として受け止め、リソースを検討する)、③実行する(リソースを割り当てる)をあげられた。

論点3は「局所的変化を取り入れてビジネスモデルの革新に結び付ける組織とは」である。トップダウン、トップリーディング、ニーズの高いところが決定する、共有と共感、参加者意識が大切といった意見を出し議論した。

第5班「需要構造の変化に対応できる組織能力」

需要構造の変化とその対応に関して事例を事前に集めた上で、議論した。内容は次の3点にまとめられる。

1つめは「需要構造の変化に対する“気づき”のマネジメント」である。自社の社会貢献・存在意義・提供価値を明確にする、他社事例から学習する、変化の見える化とビッグデータ解析といった点を議論した。

2つめは「気づきを起点とした行動マネジメント」である。処置を実施するかどうかはトップが判断する、変化にはチャンスの場合とピンチの場合がある、トップの判断に役立つ情報を提供するといった点を議論した。

3つめは組織能力である。情報共有、瞬発力、実行力といった点を組織能力として議論した。

第6班「ソリューションビジネスを担える開発の進め方」

次の3つの論点に関して議論し、それぞれの論点に関して提言を検討したことが報告された。

論点1は「顧客との接点を重視した仕事の進め方の要点」である。ソリューションを問題解決型ソリューションと課題達成型ソリューションの2つに分類して検討した。課題達成型ソリューションでは、経営者は全体最適の視点で課題を解決する。その際、現場マネージャや現場担当者には要求事項はあっても具体化されないことがある。

論点2は「ライフサイクルを見通した開発の進め方」である。ライフサイクルとライフタイムの両方の視点で開発することが提言された。ライフサイクルはイノベーター理論を参考にし、導入期、成長期、成熟期とした。ライフタイムは契約、納入、使用、廃棄である。

論点3は「ソリューションビジネスを担える人財の開発、育成」である。論点3の提言は顧客の課題の理解能力の育成である。

総合討論

個々のグループの報告、報告全体を通じて質問や参加者への問いかけがあった。「情緒品質をどのように解釈し実現していくか?」「オフショア先や委託先とどうやって危機感、緊張感を共有していくか?」といった質問や問いかけがあり、建設的な意見交換となった。比較的大きな会場で150名近くの参加者の中で質問するのは、簡単ではない。その中で建設的な意見が交わされるのは非常に印象的であった。私の席から見える範囲だけでも、総合討論でのやりとりをメモにとる参加者が多数いた。

参加後にシンポジウムを振り返って

会場からの帰り道にシンポジウムを振り返った。どの講演も興味深かった。グループ討論会では業務経験豊富な方々が自身の意見を述べる(講演登壇者だけでなく、各グループにも部門長や役員の方が多かった)。全体をとおして議論の機会が非常に多く、さまざまな意見が交わされた。総合討論、グループ討論、談話室にとどまらず、立食形式の夕食、朝食、休憩時間でも意見交換や議論の機会があった。これらを合算するとかなりの量の議論があったと思う。これだけ長時間にわたれば排他的な意見や代案のない否定的意見に出くわすことがあっても不思議ではないが、少なくとも私が見聞きした範囲ではなかった。3日目のグループ討論の報告を聞き、内容の濃さを鑑みると他のグループでも同様に排他的、否定的意見はなかったのではないかと推測する。皆さん議論を楽しんでいるように私の目には映った。本シンポジウムが長くつづいている理由の1つは、こうした議論の場を提供できていることではないかと思う。ただし、その場はだまっていて自然発生するものではない。建設的な意見を発することができる参加者、組織委員、グループのリーダー、世話人、講演者、事務局の想いが結集し、はじめて実現するものである。

私の本シンポジウムの参加目的は2つあった。1つは、ものづくりにおけるソフトウェア開発の役割や位置づけに関して理解を深めることである。私の専門分野はソフトウェアエンジニアリングである。ソフトウェアエンジニアリングの研究は、ソフトウェア開発の効率化やソフトウェアの高品質化をめざした技術や技法を対象としている。「ものづくり」から「ことづくり」へという表現や単に製品を売るだけでは不十分という話を耳にするたびに、ソフトウェアはその役割の1つを担うことができると私は思っている。しかしながら、ものづくりを事業とする組織のソフトウェア技術者からそうした話を聞くことはそれほど多くない。産学連携での共同研究の機会をいただき事例研究を重ねたり、ソフトウェア品質シンポジウムをはじめ技術者の集まるイベントの情報交換会に参加して、そうした情報を広く集めているつもりである。今回の参加で談話室、立食形式の夕食の時間でベテランの方との話の中でその原因が少しわかってきたように思う。

もう1つの参加目的は、日本科学技術連盟主催の「ソフトウェア品質シンポジウム」に参考になる点を見つけて、新しい取組みにチャレンジしたり新しい仕組みをつくったりすることである。私はソフトウェア品質シンポジウムの委員長を2012年から拝命している。会場も参加者層も異なる品質管理シンポジウムのよいところをソフトウェア品質シンポジウムに取込めないか勉強のために参加した。ソフトウェア品質シンポジウムの主な内容は査読により選ばれた一般投稿である。例年20~30件程度の発表があり、ソフトウェア技術者の経験や事例を発表形式で共有する。開催場所は東京都内であり、併設イベントと合わせると2日半の会期がある。2014年は、のべ1,400人程度の技術者、研究者が参加した。ソフトウェア品質シンポジウムの企画にも、今回の品質管理シンポジウムで学んだことを活かしたい。

本シンポジウムはこうした私個人のサブテーマも満たすこともできる懐の深いシンポジウムであった。

佐々木 氏
佐々木 氏

次回は、2015年6月5日(金)、6日(土)箱根ホテル小涌園で「第100回記念品質管理シンポジウム」を開催する。テーマは、『日本の成長戦略を支える品質管理の役割~これから求められる価値ある品質を考える~』。主担当組織委員は、日本科学技術連盟 理事長 佐々木眞一氏。第100回を迎える品質管理シンポジウムでは、これまでの品質管理・TQMの歴史を振り返り、これからの品質管理・TQMについて議論する。

詳細は、日科技連ホームページ「品質管理シンポジウム専用サイト」をご覧ください。



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