クオリティマネジメント Quality Management

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HOME > 2015年01-03月(No.12) > スペシャルインタビュー >三菱自動車工業(株)・相川 哲郎 氏

地道な仕事にも誇りをもつエンハンスメント業務革新 (株)野村総合研究所 取締役会長 藤沼 彰久 氏

技術と品質のDNAを再確認して
他社とはちがうクルマづくりを実現

三菱自動車の相川哲郎社長は、かつて「ギャランΣ(シグマ)、Λ(ラムダ)」の画期的なデザインにふれ「格好よいクルマを出すメーカー」との憧れを抱いて入社したという。入社後は開発畑を歩み、軽四輪事業本部や乗用車開発本部のプロジェクトマネージャーなど車両開発の責任者として第一線で活躍。初代ミニカトッポや初代eKワゴンの生みの親としても知られている。技術と品質に高い信頼性を保っていた同社だったが、2度にわたるリコール問題により2004年に深刻な経営危機に陥った。その後、三菱グループの手厚い支援を受けて経営再建を進め、東南アジアを中心に販売台数を伸ばしてコスト削減を進めた結果、2014年3月期の連結純利益は過去最高を記録した。他社にマネのできないクルマづくりに向かって進みはじめた三菱自動車工業㈱の相川社長にお話しを伺った。

聞き手:廣川州伸

企業価値のさらなる向上

―2014年6月に社長に就任されてから半年たちましたが、どのような気持ちで経営をなさっているのか、お聞かせください。

当社の再生は、私の感覚としては、ようやく水面の上に顔を出して呼吸ができるようになり、これから陸にあがって山を登っていこうとしている段階です。油断するとまた水面下に沈むかもしれないという危機感をもっています。

とはいえ、ようやく水面に出られるようになったので、このまま呼吸をしつづけられるように、持続的に成長していきたい。そのためには企業価値を上げていく必要があります。

企業価値の向上には、ブランドの再構築が必要ということになってきます。当社の場合、リコールや品質問題によってブランド価値の毀損がありました。品質で失ったブランド価値は、品質への信頼で回復しなければなりません。根がしっかりすれば、幹は成長し、花も咲きます。まず、根となる品質をしっかり固めていきたいと考えています。

しかし、品質だけではクルマを買っていただけません。お客様にとっての魅力、あるいは役に立つことが必要です。そこでは、しっかりした技術で当社にしかできないクルマを提供していくことが求められています。

私たちのDNAとして「よそがやらないことをやれ」といわれて育てられてきました。この言葉は、当社が自動車をつくる前、航空機をつくっていた先輩たちによって生まれました。二代目の社長も戦前の航空技術者ですし、三代目、四代目の社長も、零戦を開発した技術者です。
 

―なるほど、戦前からつづいている歴史観があるのですね。

2013年に映画になった「風立ちぬ」の主人公である堀越二郎氏は、かつての当社社長たちの上司にあたります。堀越氏の本には「よそがやらないものを、よそよりも先にやらねばならない」と書かれてありますが、まさに私たちも、そのように先輩にいわれながら育ちました。それが私たちのDNAなのです。

実際、かつては新しい技術を他社より先にやるという気概がありました。ところが、この10年間、いろいろな制約の中でそれを発揮できませんでした。それをもう一度原点に還って「よそがやらないことをやれ」という想いを表に出し、若い人を盛り上げていきたいと思っています。

今こそ「よそがやらないことをやれ」という三菱のDNAを復活させ、風土も変えようと、2013年度から風土改革を行ってきました。

※画像クリックで拡大できます。 図1 5つの事業展開とそれぞれの取扱製品

「部長の口ぐせ-良き職場風土の見える化と伝承-」
相川社長の “口ぐせ” も紹介されている

この改革は私がリーダーとなって進めたものですが、その1つに「部長の口ぐせ」という小冊子をまとめました。企業風土は、部長の背中を見て、口ぐせを聴きながら感じていくもの。これまで、風土だけを取り上げて明文化したものはなかったのですが、自分が一番部下に伝えたいことを文章に残して伝えようと、1人1つずつ、部下に伝えたいことを口ぐせとして書かせました。この小冊子は「良き職場風土の見える化と伝承」として進め、課長以上に配付しました。

この中で、私は「よそがやらないことをやれ」「新しいことへの取り組みは、三菱自動車のDNA」「新しい着想のアイデアを人より早くやらなければならない -零戦主任設計技師 堀越二郎(私たちの大先輩)」と文章に残しました。部長の日頃の言動を聞きながら、部下はそれを自分でも同じようにやるものと考えています。
 

―DNAに立ち還るところがポイントですね。価値創造の展開はいかがでしょうか。

私たちが得意としていることに注力していく上で、2つのテーマがあります。1つは、『新興国でのプレゼンスを上げること』、もう1つは、『環境対応技術で独自の価値を提供していくこと』です。

図1 5つの事業展開とそれぞれの取扱製品

相川社長と「アウトランダー PHEV」

図1 5つの事業展開とそれぞれの取扱製品
電気自動車「i-MiEV(アイ・ミーブ)」
一般家庭の電力を用いて、充電する

『新興国』については今にはじまったことではなく、タイ、フィリピン、インドネシアでは早くから生産をはじめていましたが、まだモータリゼーションが発達していませんでした。今はASEANでモータリゼーションが盛り上がっているので、われわれがもともと強い地域に経営資源を集中しようと考えています。

具体的には、この数年間、タイに注力して工場も新しくつくり、フィリピンにも他社の工場を買って、その新たな工場で生産しようとしています。(2015年1月末から生産開始)インドネシアでは更地から工場を建てて、2017年頃から新しい車を生産していく予定です。このように、ASEANに力を入れていくというのが、これからのマーケット的な柱です。

もう1つの『技術』には、「電動化」、「SUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)」というキーワードがあります。私たちは、タフなクルマをつくるのが得意で、パジェロなどの四輪駆動車を一生懸命につくってきた経緯があり、道路環境が整っていない地域でもスムーズに走れると、新興国で喜ばれています。

新興国にはSUVやピックアップトラックなどは明確な需要があり、当社の特性を生かすことができます。SUVやピックアップトラックで利益を生み、その利益を糧に将来の技術である電動化を進めていこうと考えています。

われわれは、世界に先駆けて量産の電気自動車をつくりました。その技術をベースに、今、PHEV(プラグインハイブリッド電気自動車)を世界に出しています。
 

―環境問題もありますから、まさにトレンドに乗っている事業ですね。

もっとも、私が電気自動車をやりはじめた時は、これほど早く世界でCO2削減の要求がくるとは思っていませんでした。今後、ヨーロッパの2020年以降のCO2規制は、電動車両がないメーカーはクリアできないレベルになろうとしています。

それもあって、最近、フォルクスワーゲンやBMWなどのドイツメーカーが、EV(電気自動車)やPHEVを出しはじめました。これも2020年以降のCO2規制に向けて導入を進めているのだと思います。

中国もまたPM2.5などによる環境問題対応のために電動化を進めようとしています。予想以上の電動化が必要とされる状況で、私たちのやってきたことが間違っていなかったと感じています。

さらに、クルマの電動化がベースとなり、ICT化が実現していきます。電動化していなければICTとドッキングしたシステム、たとえば自動運転はできません。まずは先進国向けのコア技術ですが、やがては新興国でもあたり前になってくると思います。

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