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HOME > 2015年07月-09月(No.14) > コラム・エッセイ > 温故知新「日本のテレビの父-高柳先生にうかがう」Part2
温故知新 石川馨先生からの時を超えたメッセージ

『品質管理』誌 1972年2月号「着想と実行」より
日本のテレビの父-高柳先生にうかがう Part2

とき:1971年(昭和46年)12月15日

ところ:日本ビクター・本社事務所

語り手:高柳 健次郎 氏(日本ビクター 副社長)

聞き手:久米 均 氏(成蹊大学 助教授 経営工学科)

※ 掲載内容、聞き手、話し手の所属は、1971年(昭和46年)の掲載当時のものです。
※ 掲載にあたり、現代仮名遣いに改めるほか、用字用語の統一や誤字修正を行い、読みやすさに配慮して再編集を行いました。

着想をいかに展開するか

高柳

題目日が決まって、今度は中題目、小題目のほうになりますが、テレビジョンをやるとなって一体どういうやり方をしたらいいか調べてみると、それまでは皆さん円板を回したり、鏡を回したりしておられたのですが、いろいろ比較検討して映像の品質のことを考えてみた結果、非常にむずかしい道ではありますが、全電子式でやろうということにした。このようにいろいろよく考え、検討して方針を立てることが2番めによく考えなければならないことだと思います。

で、その方針にもとづいて実験を進めていきますといろいろ問題点にぶつかる。それを1つひとつつきつめて、こういうやり方をしなければいかんという一応最良の案というところにこぎつけて、それで実用化できるところまでもっていったわけです。

ある問題があってこれを解かなければいけない。しかもこういう性能、特性をもたなければいけないという時に、それを解くヒントがどうしたらえられるか、そこが一番問題です。それには、その命題の基本条件をよく吟味して、それについての原理的なものを見つけて、その上にそれを達成するための回路なり部品、材料なりを積み上げていくというやり方をしなければならない。そのメソッドとして何か1つのものをえたとします。しかし、それだけに終始してしまってはいけないのであって、その考えを右にも左にも、上にも下にもエクステンションするという風な大きなパウンダリーをつくりまして、そのうちに1番いいケースに絞っていく考え方をしなければならない。アイデアが生まれても、すぐそれを最良だと思って結局うまくいかない。私は考え方においてあらゆる極端を考えまして、そのうちのいいところやるという風に、発明、考案とかヒントをシステム的に、じゅうたん爆撃しなければならない、ワン・ポイント爆撃では効果を逸すると思います。

久米

今のお話は非常に重要なことと思うのですが、そういうやり方だとえてして金がかかるとか、時間がかかるということで・・・・。

高柳

たしかにそうなんですね。それでなるべく金や時間がかからないようにするには、そのような思考の累積を行い、できるかぎり広範に理論上の推定の完全なマップをつくる。そして、その思考の基本原理となるものについて選択して確認の実験をしていけば、マップの正確な把握ができる。そのマップのもっとも好ましいところを今度は総合的実験試作を行っていき、その結果につき検討・反省して、次の改善開発を進めていけばあまりにムダなしに、目的に達するのではないでしょうか?

ただこの試作実験して自分の理論を確かめる場合に、ただちに正確な答えがえられぬ場合が多いのです。それは、実験に他のその結果を左右する大きな因子があって、答えが意図とよく出すぎたり、悪く出すぎることがありましょう。そこで、それを取除いて真に理論上の成果が確認されることが必要なように思います。こうして自分の考えた理論について正確な成果の範囲が確認されれば、その理論を延長し拡大することにより、所要の成果に到達するようになりましょう。実験に学ぶことがたいへん大事ですね。

現在ではグループでやればもう少し早くできると思うのです。この人はこういう考えだ。それで確かめてみてこれはいけないということがわかる。そこで、連鎖反応でもう1つの説があればそれもやってみる。アイデアが出たらそれを実施してみてチェックして、その成果をみてエバリュエーションやって、そしてその欠点を削除してまた次に進む。そのサイクルをできるだけ早く繰り返してどんどん螺旋状で上に上がっていくようにしなければいけないと思います。

久米

その場合、他人と価値観が異なる場合が出てきますと、本来いいアイデアがつぶされてしまうという危険もあるんじゃないと思うのですが・・・・。

高柳

それは非常にありますね。ですから研究者自身としては実際に実験に立ち会って、その最終のやり方と結果をチェックして分析する必要がある。それをやらないとよく見逃してしまうことになる。他人のアイデアに対しては"これはだめだ。そういう考えはものになりませんよ"ということになりがちですね。自分のものだと"そんなはずはない。もう一度やってみよう"ということになるのですがね。

ところがえてして、自分が専門家でないために人にものをつくってもらうということになりますと、たとえば私も撮像管(アイコノスコープ)を研究する。原理としては私が撮像管の積分法を発明したから専門家なんです。しかし、それを具体化したものをつくろうとして3年も努力してきたがうまくいかないで止まっている。そのちょうど3年めにズウォーリキン博士がアイコノスコープを発明した。これでテレビジョンが実用化になったわけです。これはたいへんだということで渡米してズウォーリキン博士にお目にかかりアイコノスコープの開発も見せていただいた。やはり博士がアイコノスコープをパッと完成したんじゃないんですね。研究室の棚の上に6年くらい前から種々の撮像管の改良型がたくさん並んでいる。いろいろ聞いてみますと、思いついたものを全部自分で実験してみて、1年に4つも5つも改良していったんだということでした。私は積分法という原理を発明しながら、それを実施するのによそへ頼んでいた。そうしますと年2回くらいしか改良実験ができない。その間、こっちはボンヤリしているようなもんですね。

久米

ズウォーリキン博士というのは・・・・?

高柳

RCAの研究所の方で、米国で全電子式テレビ方式を開発・完成して、今日のテレビの実用化に貢献された『テレビジョンの父』といわれる人です。

で、ズウォーリキン博士に会って帰ってきてから、私はガラス細工も真空も知らないけれど、逓信省の電気試験所の好意でガラス細工技術者をいただいて真空管研究所室をつくり、1年でアイコノスコープのいいのをつくることができました。研究するのに、自らやらずに他人にやってもらってその報告を聞くというのは、靴の上から足をかくようなもんですよ。ですから私は、会社では"それは専門が違うから自分は手を触れないなんていうのはだめだ。その題目が真空であろうが化学であろうが、なんでもまっしぐらに入っていけ。そして、その専門の人たちに一緒になってもらってやればできるのだ"といっているんです。

久米

プロジェクトチームがそういうことですね。

高柳

そうなんです。ある考え方についていろいろな専門の断面から論じていただき、そのチームワークで開発すると早くいいものができる。種々な方面のエキスパートがその持ち分を生かして、協力して1つの問題にあたれば早くよいものができるでしょう。

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