クオリティマネジメント Quality Management

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HOME > 2015年10月-12月(No.15) > 特別企画 > 「石川 馨先生 生誕100年記念 国際シンポジウム」ルポ

特別企画 「石川 馨先生 生誕100年記念 国際シンポジウム」ルポ

前田建設工業株式会社
総合企画部グループ企業グループ長
新倉 健一 氏

今日の品質管理界の父親的存在が、石川馨先生であろう。戦後日本の劇的な復興、高度成長は品質管理の存在無くして成しえず、日本における品質管理の普及・推進のパイオニアのお一人として、先生の功績は語り尽くすことができない。また、国際品質アカデミー(IAQ)、品質国際会議(ICQ)を創設、米国、台湾、中国、英国、インドなど多くの国々に日本で培った品質管理を伝承されるなど、世界的権威として品質管理の発展に尽力された。先生が他界されて四半世紀が過ぎつつも、その教えは弟子たちにより脈々と継承され、卓越した理論は時代を超えて今なお燦然と輝きを放っている。そこで、先生の生誕100年にあたる2015年9月28日(月)に東京大学・伊藤国際学術研究センター 伊藤謝恩ホールを会場として約270名の参加者が集い、「石川 馨先生 生誕100記念 国際シンポジウム」が開催された。

開会挨拶

久米 均氏(東京大学名誉教授/石川 馨先生 生誕100年記念事業組織委員会委員長)

久米 氏
久米 氏

石川馨先生の門下生を代表して石川馨先生 生誕100年記念事業(以下、本事業)の組織委員会委員長を務められている久米均氏から開会にあたり、品質月間テキスト『石川馨 品質管理とは』[1]の紹介があった。かつて石川馨先生が日本に品質管理を普及するべく執筆された『品質管理とは』(後日、『品質管理入門』[2]として発刊)が命名の由来であり、本書をはじめ石川先生にゆかりのある多くの方々の講演などをとおして、石川流品質管理が広く浸透し、新たな形でリフレッシュされ、再スタートすることを期待する旨のメッセージをいただいた。

  • [1]久米均(2015):「石川馨 品質管理とは」、『品質月間テキストNo.409』、品質月間委員会。
  • [2]石川馨(1989):「品質管理入門(第3版)」、日科技連出版社。

オリエンテーション

小大塚 一郎氏((一財)日本科学技術連盟専務理事・事務局長/本事業実行委員会副委員長)

小大塚 氏
小大塚 氏

本事業実行委員会副委員長の小大塚一郎氏から、本日のプログラムが2つのパートにより構成され、前半は「Part A:石川馨先生の成し遂げられた偉業とお人柄」を振り返り、後半は今なお示唆に富む先生の教えをもとに「Part B:TQMとQCサークルの一層の発展のために今後なすべきことは何か」について討論する場を設けている。石川馨先生の生誕100年にあたり、今なお示唆に富む先生の品質管理の思想や教えを再認識し、今後の持続的成長に向け品質管理を発展させる場となり、少しでも皆様方の今後の活動のお役に立つことを祈念する旨のお話があった。

表1 プログラム

科目 講演者
公演
開催挨拶 久米 均氏 東京大学名誉教授/本事業組織委員会委員長
オリエンテーション 小大塚 一郎氏 (一財)日本科学技術連盟 専務理事/本事業実行委員会副委員長
Part A:石川先生の成し遂げられた偉業とお人柄
QCサークル活動と石川馨先生 細谷 克也氏 品質管理総合研究所 代表取締役所長
わが恩師 石川馨先生による台湾へのQCサークルの導入と発展 鍾 朝嵩氏 先鋒品質管理研究基金会 栄誉董事長[台湾]
石川馨先生のTQCによる企業経営へのご貢献 山岡 建夫氏 JUKI(株) 最高顧問
英国品質革命の先駆け David Hutchins氏 Chairman and Senior consultant 、David Hutchins Innovation Limited [英国]
石川馨先生と世界、特にインドでの品質の推進における先生の影響―私の個人的経験 Janak K. Mehta氏 Chairman、International Academy for Quality(IAQ)[インド]
品質管理の真髄 久米 均氏 東京大学名誉教授/組織委員会委員長
パネル討論会① Q&A 【モデレーター】
狩野 紀昭氏 東京理科大学名誉教授/本事業実行委員会委員長
【メンバー】
細谷 克也氏、鍾 朝嵩氏、山岡 建夫氏、David Hutchins氏、Janak K. Mehta氏
Part B:TQMとQCサークルの一層の発展のために今後なすべきことは何か
《基調講演》
石川先生が遺されたものから未来への知恵を集めて
Gregory H. Watson氏 Chairman, Business Excellence Solutions[米国]
パネル討論会② TQMとQCサークルについて今後なすべきことは何か 【モデレーター】光藤 義郎氏 文化学園大学 特任教授
【発表、討論】
  1. 佐々木 眞一氏 (一財)日本科学技術連盟 理事長/トヨタ自動車㈱相談役・技監/本事業組織委員会副委員
    テーマ:『TQMの今後について』
  2. 鈴木 和幸氏  電気通信大学大学院 教授
    テーマ:『TQMとQCサークルの一層の発展のために~人間中心の経営~』
  3. 林 千佳氏 NTN㈱安全・環境管理課長/QCサークル本部認定指導員
    テーマ:『TQMとQCサークルについて今後なすべきことは何か』
  4. Gregory H. Watson氏(上掲)  
総括 狩野 紀昭氏(上掲)

Part A. 石川馨先生の成し遂げられた偉業とお人柄

「QCサークル活動と石川馨先生」
細谷 克也氏(品質管理総合研究所 代表取締役所長)

細谷 氏<
細谷 氏

石川馨先生は「QCサークルの父」と呼ばれている。品質管理総合研究所の細谷克也氏から、QCサークル活動の誕生と発展にまつわる石川先生の功績について講演をいただいた。冒頭に、QCサークル誕生の契機となった1962年の『現場とQC(現在の『QCサークル』誌)』発刊に際しての石川先生のメッセージに触れられ、現場第一線の方々を中心とした日本的品質管理が芽吹き、花開いていく過程を「QCサークル本部第1号サークル」登録時などのエピソードを交えて紹介いただいた。また、「畳の上では泳げない。飛び込むしかない」と三現主義を体現された石川先生のありし日の姿に触れ、「石川先生がおられなかったら全員参加の、みんなでやるTQMは育まれず、日本のKAIZENは生まれなかったであろう」と述べ、現場力向上に絶大なる貢献を果たされた石川先生の偉業の結論とした。

「わが恩師 石川馨先生による台湾へのQCサークルの導入と発展」
鍾 朝嵩氏(先鋒品質管理研究基金会 栄誉董事長)【台湾】

鍾 氏
鍾 氏

石川馨先生の功績は、日本にとどまることなく世界各国にも及んでいる。とくに、台湾では1970年にQCサークルを導入し、今日に至る経済発展に大きく寄与している。東京大学の石川研究室を卒業し、台湾においてQCの指導に携わる鍾朝嵩氏は、石川馨先生は「一泊二日の経営者CWQC講座と座談会」に1970年から18年間毎年出席されるなど、台湾における品質管理の普及に力を注がれた「もっとも感謝すべき親しい恩師」であり、石川先生の教えを、永遠に変わることのない「金科玉律(金科玉条の意)」と示された。

「石川馨先生のTQCによる企業経営へのご貢献」
山岡 建夫氏(JUKI㈱ 最高顧問)

山岡 氏
山岡 氏

石川馨先生の企業における指導を体験されたJUKI㈱の山岡建夫氏は、東京大学の教授が直接現場第一線の指導にあたった当時を「画期的」と振り返り、「組立ラインの最終工程の調整を正規作業とするのはおかしい。直行率管理をしなさい」などの指導の実際と真髄を紹介いただいた。

また、「QCが普及すれば国際分業が進展し、これによって各国同士の相互協力依存関係が深まり、結果として争いごと、戦争ができなくなり世界平和が実現する」という石川先生が遺されたコメントを結びとして、石川先生の哲学、世界観を実現していく大義を訴求された。

「英国品質革命の先駆け」
David Hutchins氏(Chairman and Senior consultant,David Hutchins Innovation Limited)【英国】

Hutchins 氏
Hutchins 氏

英国はかつて造船業のシェアがトップであったが、日本に追い越されたのを契機として、David Hutchins氏は日本の製造業の研究を進めた。その結果、社長から現場までのすべての階層にクオリティコントロールの教育が行われ、全員参加でQCを行っていることを知り、1979年に石川先生を英国にお招きし、講演をいただいた。その後、QCサークルは中国、インドなどにも拡がり、QCサークルが世界的な学びの場になるなど、今でも大きな影響力を有している点が石川先生の素晴らしさであり、石川先生の偉業とお人柄を「未来にわたり皆の心の中に残るべき人」と述懐した。

「石川馨先生と世界、特にインドでの品質の推進における先生の影響―私の個人的経験」
Janak K. Mehta氏 (Chairman、 International Academy for Quality)【インド】

Mehta 氏
Mehta 氏

国際品質アカデミー(IAQ)のチェアマンを務めるJanak K. Mehta氏は、1980年代初頭に日本の高度成長をベンチマークするべく石川先生の論文を学んだ結果、テクニックだけでなく人間的側面を強調している点がインドに合致することを確信し、1986年に石川先生をインドにお招きした。そして、「人は生まれつきいいものをもっていて、大きな可能性をもっている。だからこそ教育が必要」であることをご教示いただいた。このように、品質管理において、日本は西洋から多くを学んで以来、多くの国々が日本から多くを学んでいる。石川流品質管理についてMehta氏の見解は、「Qualityに関して全員が責任をもっている」「むずしいことも誰にでもわかる言葉、手法で示している」などの特長をあげ、現在、そして今後も通用する理念であると示唆された。

「品質管理の真髄」
久米 均氏(上掲)

久米均氏は、「品質管理の真髄は品質保証、もう1つは新製品開発である」など、石川先生の品質管理の哲学は時代を超えて不変であり、より多くの方々が石川流品質管理を理解することこそ失われた20年を乗り越えるために必要と主張された。また、企業経営の目的について、一次目的は「人」であり、二次目的に「品質」「価格・原価・利益」「量・納期」を位置付けている点は、P.F.ドラッカーが1992年に著した『未来企業-生き残る組織の条件』[3]と通じるものがあり、石川流経営哲学そのものと述べられた。そして、講演の結びとして、石川先生の教えで忘れているものはないかを思い起こすとともに、不十分なものは継続的に改善することが重要であると訴求された。

  • [3]P.F. ドラッカー(1992):未来企業―生き残る組織の条件、ダイヤモンド社。

パネル討論会① Q&A

狩野紀昭氏(東京理科大学名誉教授/本事業実行委員会委員長)をモデレーターとして、主に講演内容の質疑応答が行われた。

パネル討論会①の風景
パネル討論会①の風景
パネル討論会①のメンバー(上段左から細谷氏、鍾氏、山岡氏、下段左から狩野氏、Hutchins氏、Mehta氏)
パネル討論会①のメンバー
(上段左から細谷氏、鍾氏、山岡氏、下段左から狩野氏、Hutchins氏、Mehta氏)

Part B. 「TQMとQCサークルの一層の発展のために今後なすべきことは何か」

基調講演「石川先生が遺されたものから未来への知恵を集めて」
Gregory H. Watson氏(Chairman、 Business Excellence Solutions)【フィンランド/米国】

Watson 氏
Watson 氏

国際品質アカデミー(IAQ)の前チェアマンなど品質管理の世界的なプロフェッショナルとして活躍されているGregory H. Watson氏は、”Gleaning”という英国の古い言葉で石川流品質管理を表現した。その意味は、落穂拾いのように丹念に努力をして、何千マイルの道程を慎重に歩んでいくことの重要性と紐解かれた。そして、トップダウンとボトムアップの両方を知り、現場を知ることで、石川先生は誰にもできなかった変革を成し遂げた。石川先生が遺され、私たちが成すべきこと、それは「人のための品質が社会的責務」であることを基調講演の結論として示唆された。

パネル討論会② 「TQMとQCサークルについて今後なすべきことは何か」

モデレーターの光藤義郎氏(文化学園大学特任教授)の進行のもとに、発表、討論が行われた。

まず、佐々木眞一氏((一財)日本科学技術連盟理事長、トヨタ自動車㈱相談役・技監/本事業組織委員会副委員長)から、失われた20年の反省として製造部門以外への展開が遅れた点をあげ、これからのTQMについて、従来TQMの進化に加えて、モノ造り+コト造り(お客様価値創造)に資するTQM改革として、製造部門は“モノからコト(顧客価値)へ”、スタッフ部門は“顧客満足から顧客感動へ”などが提起された。

つづいて鈴木和幸氏(電気通信大学大学院教授/本事業実行委員会副委員長)は、石川先生の哲学を「人間中心の経営」と示され、その要諦は顧客指向であり、専門家だけでなく皆で行うQCであり、1組織でなく人類の平和と幸福のためであることを訴求した。そのために成すべきこととして、ICT活用、初等中等教育などをあげられた。

 

また、林千佳氏(NTN(株)安全・環境管理課長/QCサークル本部認定指導員)は、QCサークル本部・支部・地区の活動が幹事間や他社との交流など学びの場となっている点に着目し、今後もQCサークルは人づくり、“とくに自身で問題を解決できる人”“考えて行動できる人”を育てていくことが求められると結論づけた。

三氏の発表後、討論が行われた。日米の相違点、スタッフ部門のTQMの具体的活動、次世代に対するアプローチなど会場からの質問に対して、三氏とGregory H. Watson氏がパネリストとなり、意見交換がなされた。

パネル討論会②のメンバー<br>(上段左から佐々木氏、 鈴木氏、林氏、下段左からWatson氏、モデレータを務めた光藤氏)
パネル討論会②のメンバー
(上段左から佐々木氏、鈴木氏、林氏、下段左からWatson氏、モデレータを務めた光藤氏)

総括

狩野 氏
狩野 氏

狩野 紀昭氏(上掲)

本シンポジウムの総括として狩野紀昭氏が登壇し、『人間石川馨と品質管理』の英訳プロジェクトが機となった石川馨先生生誕100年記念事業が、国際シンポジウムの開催に進展した経緯と、ご支援いただいた方々、企業に対する感謝の言葉によりシンポジウムは締め括られた。

現在の品質管理界の主だった方々が一堂に集い、石川先生の歩んだ足跡と忘れてならない教えを再認識しつつ、未来への展望を討論した本シンポジウムは、TQMとQCサークルのさらなる発展に向けてのエポックメーキングとして歴史に名を刻むであろう。

石川流品質管理に加えて、石川先生が体現された先見性と使命感は私たちの心の道標、かつ明日を切り開く糧であることを結びとして、ルポルタージュのまとめとしたい。

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