クオリティマネジメント Quality Management

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HOME > 2015年10月-12月(No.15) > 特別企画 > 「第101回品質管理シンポジウム」連動特別企画
特別企画 「第101回品質管理シンポジウム」連動特別企画

日本の製造業再強化のために品質世界一の確立
~サプライチェーン全体で作る「安全・安心・信頼」のモノづくり~

一般財団法人 日本科学技術連盟
教育推進部 次長 安隨 正巳 氏

品質管理の山を高くするためのビッグイベント「QCS」

1965年に創設され、本年6月に100回目を迎えた「品質管理シンポジウム」(以降、QCS:Quality Control Symposium)。第100回は、通常とは異なるさまざまな企画を実施し「第100回記念 品質管理シンポジウム」として開催された(関連記事:『クオリティマネジメント』No.13「第100回記念品質管理シンポジウム」特別連動企画、No.14「第100回記念品質管理シンポジウム・ルポ」を参照)。

本シンポジウムは、前述のとおり50年の歴史を誇り、TQMや品質管理を推進している企業にとって、トップや経営幹部が参集する品質管理界の一大イベントとしてその名は知れ渡っており、わが国の産業界に広く品質管理に関する今後の方向性を示す事業の1つとして、その存在感は大きい。

「100QCS」風景より
「100QCS」風景より

日本の「モノづくり力」劣化への懸念

101QCS主担当組織委員 田中千秋氏

101QCS主担当組織委員
田中千秋氏

昨今、自動車関連の大規模リコールや耐震性能の偽装問題など、品質に関する不祥事が頻発しており、「品質立国ニッポン」と賞賛された地位が揺るがされているといわざるをえない目を覆いたくなる信じ難い事象ばかりである。

101QCSの主担当組織委員を務める田中千秋氏(現 東レ㈱ 顧問)は、101QCSの趣旨について以下のように述べている。

品質経営の発展を振り返ると「第一世代:是正」「第二世代:再発防止」「第三世代:未然防止」「第四世代:品質経営(予知・予防)」と位置づけられ、品質トップの日本メーカーは第四世代の品質経営を実践しているとされる。この間、日本は品質管理を学んできた米国を抜き、品質・コスト競争力からJapan as Number1といわれる製造業におけるトップの地位を獲得したが、最近はその地位が揺らいでいる。その背景には、欧米勢の巻き返しや新興国の追い上げ急があげられるが、それだけではなく、日本の圧倒的に強くて他の追随を許さなかった「モノづくり力」が劣化してきているのではないかと思われる。

(101QCS 開催趣旨より抜粋)

同氏は、その「モノづくり力の劣化」の原因については、次の2点にあると指摘する。

  • ①[内的要因]: 製造業の現場力の低下
  • ②[外的要因]: グローバルな顧客ニーズ把握力の弱さや開発スピードへの対応の遅さ

そして、1980年代までは欧米に追いつけ追い越せと進めていればよかった従来の産業構造が、モノづくりでは通用しなくなっている現状はあらためていうまでもないが、資源に乏しい日本はこれからも「貿易立国=製造業立国」として生きつづける必要があり、製造業のモノづくり力の復活が喫緊(きっきん)の課題となってきているとも提言している。

日本の製造業再強化のために品質世界一を確立する

前述のとおり「日本メーカーの品質そのものが低下している。海外勢と比べた品質の優位性が落ちている」という問題に正面から取組むとともに、原点に立ち返って品質と品質管理を真摯に見直す時がきているのかもしれない。日本の産業競争力を考えると、やはり最後に勝ち残れるのはモノづくりであり、製造業立国の最後の砦は品質競争力である。いい換えれば「安全・安心・信頼」である。これからも日本を「品質立国」として断トツ世界一をめざすことはきわめて意義あることと考える。

品質を「本当にお客様が何を求めているのか」という“価値創造”という視点で捉え、モノづくり自体の変革も検討していくべきである。最近、話題になっている「Industry4.0」ではドイツの姿勢は明確で、国内にとどまらず、欧州全体、さらには世界中から1番安くていいものを迅速に集められる仕組みをつくろうとしているが、こうした動きに対抗して、日本は広義の品質の面で優れた価値あるものを創出していくことが求められてこよう。

101QCSの概要

101QCSのプログラムは下表のとおりだが、2015年12月3日(木)夕刻のコマツ坂根正弘相談役の特別講演を皮切りに、12月4日(金)には101QCS主担当組織委員の田中千秋氏(前出)の『日本の製造業再強化のために品質世界一の確立~サプライチェーン全体で作る「安全・安心・信頼」のモノづくり~』として本シンポジウムのテーマについて基調講演で問題提起を行う。そのあと、引きつづき日本を代表するエクセレントカンパニーである以下の4社のトップからの講演を予定している(各講演内容詳細はこちらをご覧ください)。

表1 101QCSプログラム

月日 時間 科目 講演者(敬称略)
12/3
(木)
夕刻〜 <特別講演>
「コマツにおける企業価値向上・顧客価値創造
~ビジネスモデルで先行し現場力勝負へ~」
坂根 正弘
コマツ相談役
グループ討論
談話室(参加自由)
12/4
(金)
午前 主催者挨拶 (一財)日本科学技術連盟 役員
<基調講演>
「日本の製造業再強化のために品質世界一の確立-サプライチェーン全体で作る「安全・安心・信頼」のモノづくり- 」
田中 千秋
東レ(株) 顧問
※101QCS主担当組織委員
<講演1>
「安全な電力貯蔵用リチウムイオン電池が世界を救う」
吉田 博一
エリーパワー(株)
代表取締役社長
<講演2>
「デンソーの「信頼と革新」のモノづくり」
有馬 浩二
(株)デンソー
取締役社長
午後 <講演3>
「TOTOの品質への拘りと拘りの技術」
猿渡 辰彦
TOTO(株)
代表取締役副社長執行役員
<講演4>
「アサヒビールにおける最高品質提供のための取り組み
-サプライチェーン全体を通じた安全・安心・信頼のモノづくり-」
川面 克行
アサヒグループホールディングス(株)
代表取締役副社長
グループ討論
談話室(参加自由)
12/5
(土)
午前 グループ討論報告 司会:田中 千秋
報告:各班リーダー
総合討論
101QCS まとめ 田中 千秋
次回(102回)QCS案内 鈴木 和幸
電気通信大学 教授
102QCS主担当組織委員

所属・役職は掲載時のもの

エリーパワー(株) 代表取締役社長 吉田 博一 氏

エリーパワー(株)
代表取締役社長
吉田 博一 氏

講演1:「安全な電力貯蔵用リチウムイオン電池が世界を救う」
エリーパワー(株) 代表取締役社長 吉田 博一 氏

同社は、業界をリードする高安全・高性能な電力貯蔵用大型リチウムイオン電池を開発・製造している2006年創業の新進気鋭の企業である。エネルギー問題と環境問題の両面を解決する安心・安全な大型リチウムイオン電池についてご講演いただく。

(株)デンソー 取締役社長 有馬 浩二 氏

(株)デンソー
取締役社長
有馬 浩二 氏

講演2: 「デンソーの「信頼と革新」のモノづくり」
(株)デンソー 取締役社長 有馬 浩二 氏

「品質のデンソー」として名高い同社の取組み、とくに「より上流での製品品質・製造品質のつくり込み」、「海外拠点・仕入先様と一緒になった試作/量産一貫活動」、「完成度の高い生産設備づくりとその維持向上」などグローバルに展開するモノづくりについてご講演いただく。

TOTO(株) 代表取締役副社長執行役員 猿渡 辰彦 氏

TOTO(株)
代表取締役副社長執行役員
猿渡 辰彦 氏

講演3:「TOTOの品質への拘りと拘りの技術」
TOTO(株) 代表取締役副社長執行役員 猿渡 辰彦 氏

斬新な商品の創出力だけでなく、手抜きなき品質を埋め込んだ日本品質について、とくに“目に見えない品質”への拘りが引き起こす“インナーイノベーション”について、高い技術力もあわせもつ同社ならではの視点からご講演をいただく。

アサヒグループホールディングス(株) 代表取締役副社長 川面 克行 氏

アサヒグループ
ホールディングス(株)
代表取締役副社長
川面 克行 氏

講演4:「アサヒビールにおける最高品質提供のための取り組み-サプライチェーン全体を通じた安全・安心・信頼のモノづくり」
アサヒグループホールディングス(株) 代表取締役副社長 川面 克行 氏

グループの中核事業であるアサヒビールにおいて、お客様に安心・安全をお届けするために磨き上げてきた品質保証体系と、最高品質提供のためのサプライチェーン全プロセスが連携してモノづくりへの取組みについてご講演いただく。

100QCS時の会場風景

100QCS時の会場風景

これらの講演のほか、QCSの醍醐味ともいえる産学ならびに各企業のトップを交えたグループ討論の場を設けている。事前にそれぞれのテーマごとに編成された6つのグループは、すでに打ち合わせを済ませている産学2人の各リーダーのもと、2日間にわたって行われる講演を受けてグループ討論に入る(グループ編成の詳細はこちら)。そして、最終日に各グループから討論内容を紹介し、総合討論をとおして“日本の製造業再強化”のための具体的方針を提言として取りまとめることを予定している。

おわりに

101QCSでは、『日本の製造業再強化のために品質世界一の確立~サプライチェーン全体で作る「安全・安心・信頼」のモノづくり~』のテーマのもと、「これからのものづくり産業が進むべき道」を探っていきたいと考えている。各議論を通じて出された提言により、日本のものづくり力を再強化する道を模索していく。

海外に目を向けると、前述のとおりドイツが国の存亡を賭けて製造業の振興策として推進している「Industry4.0」、アメリカがGEを中心に推進している「Industrial internet」など、製造業のビジネスモデルを劇的に変革しようとする動きが加速している。日本でも、経済産業省が「ロボット新戦略」を打ち出し、安倍首相の肝いりで設立された「ロボット革命イニシアティブ協議会」を創設し、IoT社会における製造業の方向性を産学官で検討をスタートさせたとはご存じのとおりである。来るべきIoT社会に向けて、ものづくりの方向性とともにTQMや品質保証のあり方の変化も今から検討しておくべき必要があろう。

日本のモノづくりのこれからが問われるこの時期、あらためてグローバル時代の品質競争力とは一体何か。それに対してどうすればいいのかという要求品質の多様化を取り上げ、さらに多様化の背景にある時代や文化の変化への対応、また同時に日本の強みである「現場力」を見直すための議論の場としたい。産学、企業のトップが集まる品質管理のビックイベントともいえるQCSから、これからのTQMのあり方を発信し、同時に「日本の製造業再強化のための日本品質世界一の確立」についての処方箋を提言していきたい。

参考資料

▼『第101回品質管理シンポジウム』は、2015年12月3日(木)~5日(土)の3日間で開催される。テーマは「日本の製造業再強化のために品質世界一の確立~サプライチェーン全体で作る「安全・安心・信頼」のモノづくり~」。本シンポジウムに関心のある方はこちらをご覧ください。

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