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HOME > 2016年7月-9月(No.18) > コラム・エッセイ > 第19回「若いうちに作業服を汚す仕事をしよう」
テーマ[過去・現在・未来]

第19回
「若いうちに作業服を汚す仕事をしよう」

読者の皆さんは、この題名から筆者がどのようなことを推奨していると想像されるだろう。『苦労は若いうちに』とか、『体力のあるうちに現場を経験しなさい』と小言を言っているように感じたのではないだろうか。たしかにその意味も含まれるが、このテーマの真意は異なる。製造業(=メーカー)に就いて生計を建てるのであれば、就職した会社のつくる製品がどのようなステップを踏んで製作され、お客様に購入・運用、そして廃棄されるのか、頭だけでなく身体で工程を経験して欲しいという想いからである。

製造大手と呼ばれる企業の事業所から、加工や処理といった手を汚す現場の仕事がほとんどみられなくなって、どれくらいになるだろうか。クリーンルームや建物ごと設備投資を行う半導体や、車、食品、インデント系製品[1]の組立事業場は残っている所もみられる。油まみれで切削する金属の機械加工現場、加工後の表面処理や塗装を行う現場、FRP(Fiber Reinforced Plastics:繊維強化プラスチック)などの成形品をつくる現場が残っているところは少ない。コモディティ化[2]する製品の場合、現場はそのほとんどが海外に移動してしまった。国内は、現場作業の企業が、下請の地位で少量、多品種、短納期に対応できた場合である。厳しい環境の中、一級品の技術を駆使して高齢の体にムチ打ち、汗水流している職人さんがかろうじて残っている。そんな職人さんたちのもつノウハウを、すべて引き継ぐのは不可能に近いことであろう。

  • [1]インデント系製品:製品ごとに製造工程や工数が異なる製品(受注生産品)。発注者の好みや感性で選んだ少量仕入品。
  • [2]コモディティ化:差別化特性がなくなり、顧客からすると製品にちがいが見出すことができない状態のこと。

しかし、人は身体で経験したことは、何十年も記憶の中に残るものである。筆者も若い頃こんな経験をしている。

それは、宇宙空間で人工衛星に取り付けられる金属部品の腐食を防ぐための塗料の話である。無機物質のその塗料は、粉と液体を撹拌(かくはん)して部品に吹き付けるものだった。しかし、一生懸命撹拌しても均一に混ざらない。吹き付けると、表面がざらざらになり、ほこりの発生を嫌う人工衛星には使えない。さらに悪いことに、一旦吹き付けるとセメントのように張り付いてきれいに剥がれない。長期間、放射線から保護する目的なので、耐久性は抜群なのだが、どうしたら均一にうまく塗れるのかと、途方に暮れた。

模索する中、解は撹拌する工程で見つかった。ポットミルという撹拌装置を利用することで均一に混ざり塗装できるようになったのだ。難産だった塗料を塗った製品は、宇宙空間で要求寿命の何倍の期間も稼働することができた。長寿の理由は他にもあるだろう。でも、自画自賛と承知しながらも、塗装方法の確立もその1つであったと考えている。

この経験から、筆者は『解は現場にある』という想いを強くもつようになった。当時も悩んでわからない時、現物を見ながら現場の方と素朴に「何で混ざらないんだろうね」と話す中でみつかったからだ。机上では見つからなくとも、現場に足を運び探しに行こう。作業服を汚して。

(Yo.K)

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