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HOME > 2016年7月-9月(No.18) > コラム・エッセイ > 第20回「デジタルの世の中だからこそ、アナログ的なものも!」
テーマ[過去・現在・未来]

第20回
「デジタルの世の中だからこそ、アナログ的なものも!」

約40年前の学生時代、マーケティングの初回の授業で開口一番に言われたことを今でも鮮明に覚えている。それは、「“もの”がどんどん豊かな時代になってきた。これからは“もの”に加え、“精神的なもの”が求められる時代になっていく。」という内容であった。

思い起こすと、少し前からいろいろな新しい“もの”が溢れはじめていたのではないだろうか。新宿駅の西口にはいつの間にか超高層ビルが立ちならび、新しいコンセプトの製品や高機能の製品が次から次に発表され、私も、見たさ、触りたさに銀座のショールームや秋葉原によく通ったものである。テレビやラジオからは常に最新機器が紹介され、今、持っているものが時代遅れのものであるかのようなCMが流れていた。そのため新しいものが欲しくなり、今、使っているものが早く壊れないかな・・・と願っていたような覚えもある。そのあとしばらく経って、“精神的なもの”も求められる時代になってきたが、この時代は新しい“もの”さえ手に入れられれば、すべてに満足していたのではないだろうか。

サックス(筆者写真提供)

“もの” と言えば、真鍮(しんちゅう)を原料にした「サックス」という楽器がある。この楽器は、楽器の中でも比較的新しく1840年代に開発されたもので、約600個のパーツから構成されている。構成パーツが多いため、専門家に定期的に調整してもらう必要があり、長年使うには少々手間のかかる楽器でもある。

この楽器にはヴィンテージというものが存在しており、195X年代もので製造Noはここからここの間のものがいいだとか、ただ古いだけでなく年月を経て程良く味わいがでたものを指している。これは製造当時の原料の配合率や不純物、また製造のバラツキなどで、プロの演奏家が求める響き(個性)がでるものができ、こう言われているのではないかと思う。最近のものは原料も管理され、製造技術も進化したことで均一化されたものがつくられ、さらにユーザビリティも改善されている。このため、当たり外れなく安心して入手することができるが、今、製造されているものが、50年後にヴィンテージとしてもてはやされることは決してないだろう。

今後も楽器は楽器として残っていくだろうが、その一方で、電子化によって名器と言われているような音色を簡単につくりだせるものができてくるのではないだろうか(すでにあるのかもしれないが・・・)。

しかし、この音楽の世界、苦労をしながらも自分なりに音色をつくり出していくという楽しみは残しておいて欲しいものである。簡単にはできないからこそ、チャレンジするという楽しみがある。メンテナンスフリーではなく、手入れに少々手間がかかるからこそ、愛着もでてくる。簡単に最高のものができるようになったら、チャレンジという言葉が無くなるのではないかと、ふと頭をよぎった。

今、指一本で何でも調べられ、また欲しいものを直ぐに手に入れることができる時代になった。一方、それがあたり前になり、手に入れた時の喜びは以前ほどではないような気がする。ますます便利になる世の中だから、逆に苦労する喜び、試行錯誤する楽しさ、手間をかける時間をあえてつくるのもいいかもしれない。

世の中、デジタル化が進んでいるからこそ、アナログ的なものがますます重要になってくるのではないだろうか。アナログ的な部分を意識して増やすことで、精神的な満足もより得られるのではないかと思う。

P.S.
 職場で少し先の未来を見据え、ある検討を行う場がある。今までパソコンとプロジェクタを使用して実施していたが、昨年から模造紙、ポストイット、マジックに変更した。当初はメンバー全員が戸惑っていたが、次のような感想がでた。(もちろん感想も、参加メンバー全員がポストイットに記載して模造紙に貼り付けながら紹介した)

  • ・意見はかならずポストイットに書いて説明しなければならないが、いざ書こうとするとなかなか書けない
  • ・誰が何をどう考えているかがより明確にわかり、こんな場ははじめて経験した
  • ・いろいろな視点で多くの意見がでて、多くの気づきを得ることができた
  • ・次にチャレンジするテーマが体系的に整理できた
  • ・テーマ達成に向け、課題抽出や突破のための工夫など、アイデアが多くでた
  • ・全員の意識、方向性が短時間で共有できたことには驚いた など

このような方法は古いやり方かも知れない。アナログ的なやり方は一見、手間がかかるように見えるが、全員が一丸となって取組むことでアイデアも多くでて、かつ意識共有を含め効果は大きいと確信している。なお、その後のコミュニケーションも一段と良くなったのは言うまでもない。今ではアイデアを出し合う時は、模造紙、ポストイット、マジックが基本装備となっている。

(Yu.K)

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