クオリティマネジメント Quality Management

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HOME > 2016年07月-09月(No.18) > 特集 > “地域発”JAPANブランド「竹内 良造氏(竹内光学工業(株))」

日本の各地には、世界に通じる品質を有する企業が数多く存在し、JAPANブランドの一翼を形成するとともに、地域経済にも大きく貢献している。そのような企業の多くは、地域が育んできた風土、文化、産業などを独自性や強みに活かし、インターネットと物流の進化を機として商域を拡大している。本特集では、上述のプロセスで成長を遂げている企業・組織に焦点をあて、世界品質を確保し、かつ競争優位にするための取組みを紹介したい。とくに、より大きく、多様なマーケットに適応するために、従来は個が有していた技術や暗黙知を、企業として、あるいはコミュニティ全体で形式知化(基準化、しくみ化など見える化)していく過程を紐解いていきたい。

今回は、福井県にスポットをあて、地域の特色が多様な事業へ結実していく側面にも触れ、このように地域発のブランドが、グローバル社会でさらなる輝きを放ち、地域活性化に貢献していく姿を探求するべく、企業・組織をご紹介したい。

(編集部)

鯖江地区でいち早く取り入れたトヨタ生産方式

竹内 良造氏

福井県眼鏡工業組合 前理事長

竹内光学工業株式会社 社長 竹内 良造氏

※ 所属・役職は取材時のもの(2016年5月)

Part2

「眼鏡はまるで軟体動物のようですね」

竹内光学工業(株)本社(福井県鯖江市)

竹内光学工業(株)本社(福井県鯖江市)

製品写真 写真提供:竹内光学工業(株)

製品写真
写真提供:竹内光学工業(株)

――竹内さんには組合の要職の他に、自らの会社を率いる経営者としての横顔があります。他社に負けない強みはなんですか。

竹内氏(以下略):福井県の眼鏡産業の特質のところでお話したように、当地は小規模事業者が全体として産地を形成しているので、各社ごとに際立った特徴があるわけではありません。しかし、その中で、同業他社にはない強みをしいてあげれば、鯖江地区でいち早く、トヨタ生産方式(TPS)を取り入れたことでしょう。

――興味深いですね。どのような経緯でTPSに出会われたのですか。

時代を遡ると、1992(平成4)年のころです。当時は中国製品が日本に大量に流れ込む第一波が押し寄せてきた時期にあたります。まさに想像を超える事態で、産地は大混乱に陥りました。第一波がきたということは二波や三波も覚悟しなければなりません。

各社は対応に追われました。当社も例外ではありません。正直、事業規模の縮小も考えました。しかし、後ろ向きの選択よりも、モノづくりの仕組みそのものを変えるべきではないかと思ったのです。そこで、人を介してアイシン精機のTPSのエキスパートを迎えることになりました。結局、8年間にわたって指導を仰ぎました。

――手応えはいかがでしたか。

これまでのつくり方を根本的に変えることになるので、TPSを導入した初日に全社員を集め「一人で複数の機械を操作するので立ち作業になる。つらいかもしれないが、私よりも先生を信じてついていけ」と激檄を飛ばしました。小ロット生産に切り替えたことで品質レベルが整い、不良在庫も激減しました。何より、誰一人として辞めてもらうことなく、事業を継続できたことが収穫でした。

8年間で印象的だったのは、指導を仰いだ先生から「眼鏡はまるで軟体動物のようですね」としみじみいわれたことです。その心は、文字どおり、つかみどころがない。先生が長く携ってこられたクルマとちがい、眼鏡の工程には作業が行ったり来たり、枝葉の部分が多すぎるからです。これなども、産地全体が一つの大きな生産工場という眼鏡の特長を表していると思います。リードタイムにしても、全体としては短くなったが、数秒で済む工程と10分近くかかる工程が混在する。そのレベル合わせやバランス調整に苦労されたようです。

――TPSの導入で貴社のモノづくりはどう変わりましたか。

モノづくり以前に、人が育ちました。指導を受けるにあたって、この考え方を継承する二人の弟子をつけてくれと先生からいわれました。実際、彼らは必死に勉強して、先生の考え方を学び、社内で“布教活動”ができるほどに成長してくれました。その時に育まれたTPSの考え方や手法は、現在の生産現場でも生きつづけています。

肝心のモノづくりについては、導入前にも増して丁寧につくるという姿勢が全社員に浸透したとみています。よく「顧客満足度」といいますが、世の中には言葉だけで終わっている場合が少なくありません。誤解を恐れずにいえば、満足度を高めるために特別なことをするのではなく、産地に根付く業者として、ちゃんとしたものを、心を込めて丁寧につくり込む。それが結果として顧客満足度につながるのではないかと思っています。

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