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HOME > 2016年7月-9月(No.18) > 特別企画 > 「第102回品質管理シンポジウム」ルポ

テーマ: 感動と安心への品質創造と品質保証
-ICTを活用した地球規模での感動・安心の創出-

長塚 豪己(ながつか ひでき) 氏

中央大学 理工学部
教授 長塚 豪己(ながつか ひでき) 氏

「第102回品質管理シンポジウム」開催

日本科学技術連盟が主催する第102回品質管理シンポジウム(以下、QCS)が、2016年6月2日(木)~4日(土)に箱根ホテル小湧園(神奈川県足柄下郡:写真1)にて開催された。火山活動の影響により、昨年12月の第101回QCSは大磯プリンスホテルで開催されたので、1年ぶりの箱根ホテル小湧園での開催となった。開催期間中は、この時期としては珍しく晴天に恵まれた。参加者は総勢約230名であった。

写真1 箱根ホテル小涌園(神奈川県足柄下郡)
写真1 箱根ホテル小涌園(神奈川県足柄下郡)

さて、第102回QCSでは、電気通信大学大学院の鈴木和幸特任教授が主担当組織委員を務められ、「感動と安心への品質創造と品質保証―ICTを活用した地球規模での感動・安心の創出―」をテーマとし、以下のようなプログラム(表1)で進行された。

表1 102QCSプログラム
月日 時間 科目 講演者(敬称略)
6/2
(木)
夕刻〜 <特別講演>我が国製造業はどこに向かうのか?
-「2016年版ものづくり白書」をふまえて-
糟谷 敏秀
経済産業省 製造産業局長
グループ討論/メンバー自己紹介
談話室(参加自由)
6/3
(金)
午前 主催者挨拶 佐々木 眞一
(一財)日本科学技術連盟
理事長
<基調講演>
感動と安心への品質創造と品質保証
鈴木 和幸
電気通信大学 大学院 特任教授
※102QCS主担当組織委員
<講演1>
日本の復権に必要なこと
辻野 晃一郎
アレックス(株)
代表取締役社長兼CEO
<講演2>
水素社会の実現に向けて-トヨタの環境技術戦略-
伊勢 清貴
トヨタ自動車(株)
専務役員
午後 <講演3>
味の素(株)の安心、安全への品質創造
加藤 敏久
味の素(株)
常務執行役員
<講演4>
インターネットの発展とIoT時代の品質管理のあり方
浅羽 登志也
(株)IIJイノベーションインスティテュート
取締役
グループ討論
談話室(参加自由)
6/4
(土)
午前 グループ討論報告 司会:鈴木 和幸
報告:各班リーダー
総合討論
第102回 品質管理シンポジウム まとめ 鈴木 和幸
次回(103回)品質管理シンポジウム案内 103QCS主担当組織委員
佐々木 眞一

本文内掲載の所属・役職は開催時のもの

QCSは、「講演」と「グループ討論」の2本柱で構成されている。「講演」では、蓬莱の間と呼ばれるメインホールにて各講演者の講演を全員で聴講する(写真2)。また、質疑応答も行われる。今回のQCSでは5件の講演があった。「グループ討論」では、テーマごとにわかれた班で討論を行い、最終日に全体報告を行う。また、シンポジウムに先立ち、班ごとにメーリングリストを利用して自己紹介、アンケート回答、情報共有も行う。今回は全部で7班が設けられた。各班のテーマは表2のとおりである。

写真2 蓮菜の間での講演の様子
写真2 蓮菜の間での講演の様子
表2 「グループ討論のテーマ一覧」
表2 「グループ討論のテーマ一覧」
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1日目(6月2日)

1日目には、特別講演、グループ討論メンバーの自己紹介が行われた。以下に特別講演の内容を記す。

<特別講演>
『我が国製造業はどこに向かうのか? ―「2016年版ものづくり白書」をふまえて―』
糟谷 敏秀 氏 (経済産業省 製造産業局長)

冒頭で、わが国における製造業の現状について、以下のポイントに絞って説明がなされた。

  • ・製造業の業績(営業利益、設備投資費)の回復
  • ・GDPの推移(1997年がピーク)
  • ・経常収支の黒字拡大化(5年ぶり)
  • ・国内の事業環境の変化(行き過ぎた円高、エネルギーコストの上昇、労働人口の不足、など)
  • ・生産の国内回帰

つづいて、わが国において現在、以下の変化が起こっているとの説明がなされた。

1.技術のブレークスルー

  • ・IoT、ビッグデータ、AI、ロボット
  • ・上記の技術をもとに、産業構造や就業構造が劇的に変わる可能性。

2.第四次産業革命(インダストリー4.0)

  • ・自律的な最適化が可能に。
  • ・開発・生産工程管理では、設計、生産、販売、保守までのリードタイムが大幅に短縮。
  • ・サプライチェーン管理では、ERP、MES、PLC間が一元化され大幅な効率化がなされることが期待(まだ問題多数有り)。

さらに、IoT、ビッグデータ、AIの発達が製造業にもたらす変化についても説明がなされた。また、現在、国内メーカーが、これらの技術をもとに取組んでいる事業内容について豊富な具体例があげられた(設計、開発製造のデジタル化:4例、生産工程の見える化・最適化:3例、販売情報の活用・サービス提供・保守:3例、新たなビジネスモデル:3例)。

その後、海外プレーヤーのグローバル戦略について解説がなされた。ネット上の強みを生かしてリアルな事業分野への拡大する向き(アメリカに多い)と、リアルの強みを生かして、ネットワークを通じた新たなプラットフォーマーをめざす動き(ドイツに多い)があるとのことである。GEなどの米企業5社が発起人となり、IoT関連技術の標準化団体として設立された、インダストリアル・インターネット・コンソーシアム(IIC)についても解説がなされた。GEがエンジンの製造・販売よりもアフターサービスで稼ぐビジネスモデルに転換した話は興味深かった。

一方、日本は生産技術に強みがあるが、スマイルカーブにて付加価値が高いとされる設計・開発やソリューションでは他国に比べて弱い。そこで、これまでの技術力等の強みは引きつづき強化していくとともに、ビジネスモデルの変革に対する積極的な意識や取組み(ものづくり+企業)が求められるとのことである。このような現状の中、以下の政策的課題と対応があげられた。

  1. 1.ユースケースの創出
  2. 2.規制・制度改革
  3. 3.サイバーセキュリティー
  4. 4.国際標準化への貢献(IEC/ISO)
  5. 5.中所企業への導入支援
  6. 6.人材育成
  7. 7.国際協力

最後に、わが国の製造業の未来を考えるいくつかのポイントをお話しされ、本講演が締めくくられた。

2日目(6月3日)

2日目には、主催者挨拶、基調講演のほか、4つの講演、グループ討論が行われた。

<主催者挨拶>
佐々木 眞一氏((一財)日本科学技術連盟 理事長/トヨタ自動車(株)相談役・技監)

佐々木氏

基調講演に先立ち、主催者挨拶としてトヨタ自動車相談役・技監の佐々木眞一氏より挨拶があった。

<基調講演>
「感動と安心への品質創造と品質保証」
鈴木 和幸 氏 (102QCS主担当組織委員/電気通信大学大学院 特任教授)

鈴木氏

はじめに、発作や急病が原因で発生する自動車事故が年間200件あること、寿命を超える道路橋が年々増加していることなどがあげられ、これらの問題にどのようにICTを活用したらよいか問題提起がなされた。

品質保証の意義は、顧客・社会への感動と安心、そのためには顧客・社会のニーズを徹底的に洗い出すことであり、顕在ニーズ、潜在ニーズを徹底的に洗い出すことにICTが活用できる。さらに、現在は、グローバル化による顧客ニーズの多様化やカスタマイゼーションからパーソナライゼーションへの変革が求められており、このような問題に対してもICTの活用が有効であることが期待されるとのことである。

情報とビジネスについては、以下の変遷を辿った。

  • 第一期: ハードウェアの優劣が勝敗を決す
  • 第二期: ソフトウェアがハードウェアを凌駕
  • 第三期: 情報そのものを持つ者が勝つ
  • 第四期: 情報のオープン化とその分析力

これからは、製品販売+データを使ったサービスをいかに考えていくかが大事とのことである。

家電機器については、国際標準化をいかに検討し、先に獲得していくかが重要であるとの説明がなされ、いくつかの家電機器の事例が紹介された。また、ビッグデータやICTの活用例として、小松製作所のKOMTRAXや熊本地震においてGoogleによる通行可能なルートを示したサービス、運転の仕方により保険料が変化する保険などが紹介された。

さらに、品質保証へのICT活用も考えられるとのことである。3確(確保・確認・確証)が、広い意味での品質保証活動であるが重要であると提唱され、これらの効率的な活動にICTが貢献することが期待されるとのことである。

また、信頼性・安全性の観点から、ICTが未然防止に役立てられることが期待されるとのことである。PDCAのうちCheckがもっとも重要であり、Checkの仕方がICTの活用によって変わってくるとのことである。信頼性については、鈴木氏が自ら提唱されている7つの視点([1]目的(機能)、[2]アイテム、[3]機能達成メカニズム(仕様・設計・工程など)、[4]内部ストレス・外部ストレス、[5]故障メカニズム、[6]故障モード、[7]影響)についての説明もなされた。

最後に、石川馨先生の言葉「経営の第一の目的は人間性尊重の経営である」が紹介され、世の中を良くし、社会問題を解決するためにICT、IoTを活用していく必要がある、との言葉で講演が締めくくられた。

<講演1>
「日本の復権に必要なこと」
辻野 晃一郎 氏 (アレックス(株)代表取締役社長兼CEO)

辻野氏

冒頭、日本の復権のためには「チャレンジ精神」と「すぐやる」が重要であると述べられた。さらに現在、以下の問題意識をもたれているとのことであった。

  • ・大企業の社内改革
  • ・日本人の意識改革
  • ・ベンチャー創出・育成
  • ・地域振興(都心一極化ではなく)

つづいてイノベーションについて述べられた。

  • ・時代を創るのは常にイノベーションである。
  • ・イノベーションは、リスクをとることからはじまる。
  • ・どんなに素晴らしいアイデアやテクノロジーがあっても、広く普及しなければイノベーションとは言えない。

以下が重要である。

Challenge、Action、Risk Taking、Innovation、Entrepreneurship、Global Scalability

辻野氏が日本法人代表取締役社長を務められていたGoogleでは、コミュニケーションの中からイノベーションが生まれるという考えであった。また、東京から本社に提案にする時、最初に返ってくる質問は、「それは世界にスケールするのか?」であった。

辻野氏が以前勤められていたソニーでは、チャレンジ精神をモルモット精神と呼んでいた。これは、人がやらないことをやる、やるのだったら人より早くやるということを表現する言葉である。また、創業者「井深大氏」の設立趣意書の第一項には、「真面目なる技術者の技能を、最高度に発揮せしむべき自由闊達にして愉快なる理想工場の建設」とある。Googleのイノベーションに対する印象は、昔のソニーに近いと感じた。たとえば、何をするにも早い。また、どのような案件を頼んでも自分がやっていることを止めて対応してくれる(割り込み処理に長けている)。

著名な「Google が掲げる 10 の事実」の紹介もあった。さらに、イノベーションを生み出す人たちとして、以下の特徴があげられた。

  • ・人がやらないことをやる
  • ・人にやれと言われた仕事はしない
  • ・常に自分自身のアジェンダを大切にする
  • ・リスクやピンチをチャンスと感じる
  • ・異論場分野の多くの人とたくさん話をする。
  • ・肩書で仕事をしない。
  • ・一度はじめたことは成功するまで止めない。
  • ・合理性を超えたところに理解がある。

これからは、以下の3つのTの時代である。

  • ・ShifT:経済価値の所在が遷移
  • ・MelT:産業の垣根が曖昧に
  • ・TilT:北から南へのパワーシフト

Before Internet、After Internet のちがいを頭の中で明確にしておくことが大事である。Beforeでは、日本はどん底から第2位の国になったが、過去の話になってしまった。これからどうするのかを考えていくべきである。

現在、あらゆることの再定義が進んでいる。

  • ・家電
  • ・IoTやAIによる「車」の再定義
  • ・FinTechによる「金融」の再定義
  • ・経済の再定義 (所有する経済から、シェアする経済, e.g., UBER, AirBnB)
  • ・「グローバライゼーション」の再定義

日本人は、過去の積み上げによるincremental なイノベーションには強い。しかし、そのようなやり方では事の本質を見失ったものをつくり上げてしまう(例:戦艦大和、スカイツリーなど)。一方、他国にある世界有数の企業は、破壊的イノベーションに強い。

経営の最重要テーマとして以下があげられた。

  • ・リアルタイム経営
  • ・即断即決即実行経営(クラウドが重要)

今後、日本では世界にスケールさせていくことが大事である。日本だけでしか通用しないような仕組みは、入れないようにしていくべきである。また、「出る杭は伸ばせ」という考えが大事である。リーダーになる勇気が必要であることと、リーダーとしての以下の7つの素養が紹介された。

  1. 1.コンセンサスを疑う力
  2. 2.演繹的に発想する力
  3. 3.地球単位で発想する力
  4. 4.闘争心
  5. 5.自己主張力
  6. 6.ストーリーテリング力
  7. 7.プロフェッショナリズム

「2020年までに何ができるか?そこまで、自分自身を自分の企業を変えていけるか?」との言葉で本講演が締めくくられた。

<講演2>
「水素社会の実現に向けて ―トヨタの環境技術戦略―」
伊勢 清貴 氏 (トヨタ自動車(株)専務役員)

伊勢氏

まず、馬車、蒸気自動車、電気自動車、ガソリン自動車と変遷していった自動車の歴史が振り返られ、化石燃料の大量消費による、石油の将来不安、CO2排出、大気汚染の問題が紹介された。このような現状のもとでトヨタは、以下の基本スタンスを取っている。

  • ・省エネルギー
  • ・燃料多様化への対応
  • ・エコカーは、普及してこそ環境への貢献

具体的には、自動車用燃料(ガソリン、電気、水素 etc)・パワートレーン(HV、PHV、 EV、FCV)の多様化を進めている。HV、PHV、EV、FCVの特徴もここで紹介された。基本的な特徴は、EV:近距離用、HV、PHV:乗用車全般、FCV:中距離用途、である。

トヨタでは、現在水素社会の実現に取組んでいる。何故、水素社会なのかについては以下の理由があげられた。

  1. 1.CO2を一切発生しない燃料である。
  2. 2.エネルギーセキュリティの確保が期待される燃料である。

ここで、1992年に開始されたトヨタのFCV開発とMIRAIについて説明があった。また、日産、ホンダと共同で進めている水素ステーションの運営支援や、トヨタグループで進めているFC事業(トヨタ自動車:MIRAI、日野自動車:FCバス、豊田自動織機:FCフォークリフト、アイシン精機:家庭用燃料電池)についても説明があった。

水素燃料を用いる利点は、CO2排出量0(ゼロ)、ぼぼ無限に存在、溜められる、運べる、ことである。

トヨタが掲げるトヨタ環境チャレンジ2050についても説明がなされ、「クリーンな空の下、子供たちが輝く」との言葉で本講演が締めくくられた。

<講演3>
「味の素(株)の安心、安全への品質創造」
加藤 敏久 氏 (味の素(株) 常務執行役員)

加藤氏

冒頭、味の素グループの生い立ち、創業者たちの志、これまでの変遷について説明があった。グループ理念は「私たちは、地球的な視野にたち、“食”と“健康”そして、“いのち”のために働き、明日のよりよい生活に貢献します。」、グループビジョンは「グローバル健康貢献企業グループへ」である。当社の売上高、営業利益が上がってきている一方、売上高構成比としては、日本の割合は50%を下回ってきているのが現状である。このような背景の下で当社は、事業のグローバル化と多角化を推進している。

味の素グループにおける食品安全、品質保証への取組みについて概要説明があった。品質保証会議が、品質保証の規定、方針、目標などをまとめ、経営会議が最終決定をするとのことである。また、1つの理念と5つの方針から構成される「味の素グループの品質方針」について説明があった。4番目に記載された「私たちは、国際標準であるISOの考え方を基本にした味の素品質保証システム『*アスカ』で品質を保証します」との方針は、とくに直腸的である。この後、品質保証の国際規格ISO 9001、製造の管理基準HACCP、GMPに味の素グループ独自の考え方と基準を加えて構成されたアスカ(ASQUA)についての概要説明があった。

*アスカ(ASQUA:Ajinomoto System of Quality Assurance)味の素品質保障システム

味の素グループでは、すべての新製品、改訂品について品質アセスメントを実施している。チェック項目は、原料、製造工程、製品、包材、標示、安全性、適法性、社会性、品質管理対応、環境対応に大別される。

また、3つの製品評価の使命(1.科学的見地からの評価の実施・対処・情報の提供、2.法規上の妥当性の検証、3.専門家・研究者の安全性および有用性研究の支援、助成)にもとづき活動を行っているとのことである。

当グループが行っているお客様相談機能とその具体的実施例についても説明があった。お客様相談センターの機能は情報の収集だけでなく、情報提供や分析、提言までを含むと考えている。具体的実施例の紹介では大変興味深い例が多数紹介されたが紙数の関係上、ここでは割愛する。

当グループが考えている食品安全の3要素(フードセキュリティ、フードセーフティ、フードディフェンス)について説明があった。また、フードディフェンスに関する各国(アメリカ、EU、日本、中国)の取組みについても紹介がなされた。宗教(とくにイスラム教とユダヤ教)対応についても、興味深いお話があった。

まとめとして、徹底したお客様視点による品質保証活動を通じ、お客様満足度を一層高め、たしかなグローバル・スペシャリティ・カンパニーとして、味の素グループならではの「社会的価値」の実現をめざしていくことを説明され、さらに、Qualityは品質ではなく質であり、Total Qualityが安心につながる、との言葉で本講演を締めくくられた。

<講演4>
「インターネットの発展とIoT時代の品質管理のあり方」
浅羽 登志也 氏 ((株)IIJイノベーションインスティテュート 取締役)

浅羽氏

1992年に、日本のインターネットはベンチャー企業からはじまった。当時はほとんどが、その存在を知らず「はぁ?」という存在であり、当初は郵政省から事業認可が下りないという問題があった。その頃、大手通信会社は、B-ISDNの開発真っ只中であった。このような背景の下で、インターネットが破壊的イノベーションを起こした。破壊的技術があらわれた時、優れた経営者による健全な決定が大手企業を失敗へと導く。インターネットはまさに、クリステンセン著「イノベーションのジレンマ」における6つのステップに沿って起こったイノベーションであった。とくにインターネットは、人々の価値基準を電話主流からデータ主流に変化させた。

第1の変革として、ネットワークインフラのオープンプラットフォーム化があげられた。ネットワークインフラのオープン性とは、ユーザーへの開放度合いのことである。オープン性が強い領域ではいろいろなものを載せることができる。オープンなインフラを利用して「参入・競争・発展」が可能となる。インフラがオープン化されることで、さまざまな変化がもたらされる(たとえば、個々のサービスからの分離、協調、公平、ユーザーの自由度が大きい、自己責任)。また、オープンなインフラは特定のサービスから独立していなければならない(ステューピッド・ネットワーク[1])。インフラ利用者がサービスを構成するエンドツーエンドサービスが重要となってくる。エンドツーエンドサービスの例として、道路というインフラを用いたミネラルウォーター宅配サービスが紹介された。そして、インターネットは情報流通のための道路であるとのことである。当社がインターネットのインフラをつくっている時、他の企業はATMに注力しており、そのせいでインターネットの設備がほとんど米国製にもっていかれてしまった。標準化されるとコンテンツが乗って、情報サービスが参入してくる(Google, Skype, iTunes etc.)。

検索エンジンが日本で起こらなかったのは、著作権法に抵触したからであった。やっていいと言われないとやらない日本人の気質は問題である。

[1]スティーピッド・ネットワーク(Stupid network):元AT&T社の技術者であるデビッド・アイゼンバーグ氏が、1998年2月に発表した概念。ネットワークを介して通信を行う際に必要なとなる各種機能や、付加価値の提供を端末側に委ねて、ネットワークは高速回線をできるだけ安価に提供することに徹する、という考え方のこと。

第2の変革として、メディアサービスのオープンプラットフォーム化があげられた。コミュニケーションメディアは、放送型、通信型からインターネット型へ変化した。デジタル化とインターネットにより情報がコモディティ化[2]した。さらにマッシュアップによる価値の創出が起こり、情報に対する考え方の変化が現れた。メディアは、ユーザー参加型のメディアへと変化し、常識や概念が変化した。クラウドの存在もこれらの変革に寄与した。

[2]コモディティ化:差別化特性がなくなり、顧客からすると製品にちがいが見出すことができない状態のこと。

第3の変革として、モノづくりのオープンプラットフォーム化があげられる。2014年には37億個だったネット接続機器が、2020年には250億個に上ると予想されている。モノがネットワークに繋がりながらサービスをつくっていく時代になる。GEのインダストリアル・インターネットは、まさにこのようなサービスを実現している。IoT道路についても説明があった。

最後に、これまでの話のまとめと今後IoTが産業界全体にどのようなインパクトを与えるのかについての展望をいただき、本講演を締めくくった。

<各グループでの討論>

16時15分から各グループにわかれてグループ討論を行った。メーリングリストでの事前の議論、1日目の自己紹介をもとに活発な討論があった。途中、18時15分から19時15分の1時間の間に立食式の夕食があり、参加者同士の交流が図られた。その後もグループ討論が行われ、3日目のグループ討論報告に向けて各グループとも討論のまとめと、スライド資料づくりが行われた。早いグループは、予定の時間である21時15分には終わっていたが、資料づくりが深夜にまでおよんだグループもあった(リーダー、書記の皆様、お疲れ様でした)。

その後は、1日目の夜と同様に談話室が設けられ、参加者同士の自由な交流が図られた。この段階になると、班のメンバー同士の仲もだいぶ深まった。

3日目(6月5日)

<グループ討論報告>

グループ討論報告の内容を以下に要約する。

グループ討論報告
グループ討論報告

● 第1班 テーマ:「グローバル化時代におけるICT活用による感動と安心の創出へのトップの役割」

以下について議論が行われた。

  • ・グローバル化時代における感動と安心についての再定義
  • ・感動と安心の創出のためのビジョンと戦略
  • ・感動と安心の創出のためのICT活用
  • ・感動と安心の創出へのトップの役割 (将来への危機感、明確なビジョン、スピード経営、リスクテイク、異業種とのアライアンス推進、自らの経営方針の説明、機会損失をなくす、キャッチフレーズ etc)

● 第2班 テーマ「ICT活用による地球規模の情報収集・分析」

以下について議論が行われた。

  • ・「技術・技能づくり」「組織づくり」「システムづくり」「人づくり」それぞれにおける望まれる姿
  • ・コマツの事例
  • ・あるべき姿の実現を阻害している問題点
  • ・市場情報に関する問題点に対する対策

● 第3班 テーマ「ICT活用を踏まえた感動創出へのモノ・コトつくり」

以下の3つの論点に沿って議論が行われた。

  • 論点1: 感動とは何か?その要因は?
  • 論点2: 何をすると感動させられるのか?
  • 論点3: それをICTを使って実現するには?

また、論点3の議論に入る前に、手段としてのICTでできること・将来実現したいことを議論した。

● 第4班 テーマ「グローバル化における安心・安全、そして感動のつくり込み」

以下の5つの論点に沿って議論が行われた。

  • 論点1と2: 最新のICT等を活用した設計・開発における「プロセス」について、いかに構築・実践したか(1では過去の実績、2ではあるべき姿について)
  • 論点3: 論点2で実践した成果をどのように評価したか、またはすべきか
  • 論点4: 論点1、2、3の全フェイズにおいて、ともに「産学官の共同研究」に関する可能性、実施例
  • 論点5: 全世界の顧客への安心・感動を与えるための設計・開発における「優れたプロセスとは何か」について

● 第5班 テーマ「グローバル化時代における安全な現場の基本」

以下について議論が行われた。

  1. 1.安全のためのシステムづくり
  2. 2.安心・感動を創出する人材育成の現状
  3. 3.安心・感動を創出する人材
  4. 4.レジリエンス(弾力性、復元性、復力)

● 第6班 テーマ「ビッグデータ活用の仕組みとデータサイエンティストの育成」

以下について議論が行われた。

  • (1)顧客の使用状況などのビッグデータの、妥当性確認(validation)などへの効果的な活用について、促進、管理するために直面している課題は何か
  • (2)(1)の活用を積極的に進めることができる人材像について
  • (3)(2)の人材育成のために、社内での取組むべきこと、社会、大学で取組むべきことは何か

● 第7班 テーマ「感動と安心創出への人材育成」

以下について議論が行われた。

  • (1)安心を創出する人材を育成するために、現状ではどのような対策が行われているか。そこでの課題は何か。
  • (2)感動を創出する人材を育成するために、現状ではどのような対策が採られているか。そこでの課題は何か。
  • (3)感動と安心創出への人材育成に必要な事項、あり方とは、どうあるべきか。

<第102回品質管理シンポジウム・まとめ>
鈴木 和幸 氏 (102QCS主担当組織委員/電気通信大学 特任教授)

鈴木和幸主担当組織委員より、本シンポジウムのまとめと総括が行われた。

<第103回品質管理シンポジウムについて>
佐々木 眞一 氏 (第103回品質管理シンポジウム主担当組織委員/ (一財)日本科学技術連盟 理事長/トヨタ自動車(株) 相談役・技監)

佐々木眞一103QCS主担当組織委員から、以下のように第103回品質管理シンポジウムの説明があった。

次回、第103回品質管理シンポジウムは、2016年12月1日(木)~3日(土)の3日間、箱根小涌園ホテルにて開催される予定である。テーマは「IoT 時代における品質管理の役割と重要性-IoT 時代の品質保証とTQM とは-」であり、以下の講演が予定されている。

◆12/1(木)
・【特別講演】「日本経済の成長と自動車産業の未来」(仮題)
豊田 章男氏(トヨタ自動車(株) 代表取締役社長)
◆12/2(金)
・【基調講演】「IoTによるニッポンのものづくり変革」(仮題)
西岡 靖之氏 (法政大学 教授、インダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ理事長)
・【講演1】「コマツにおけるIoTによる経営改革とダントツの商品づくり」(仮題)
大橋 徹二氏 ((株)小松製作所 代表取締役社長(兼)CEO)
・【講演2】「ロボット革命により世界に勝つ日本のものづくり」(仮題)
小笠原 浩氏 ((株)安川電機 代表取締役社長)
・【講演3】「成長戦略のための“つなぐ”ものづくり」(仮題)
山田 義仁氏 (オムロン(株) 代表取締役社長 CEO)
・【講演4】「歴史を変える革新技術の創出のために」(仮題)
熊谷 昭彦氏 (日本GE(株)代表取締役社長兼CEO)
  • ※ 2016年8月現在。講演者名、所属、役職、講演内容は変更となる場合があります。
    最新情報はQCS専用ホームページをご覧ください

最後に

長年、箱根ホテル小涌園が品質管理シンポジウムの会場として親しまれてきたが、再開発のため、次回のシンポジウムがこの地での開催の最後となるかもしれない。箱根小涌園ファンの方、箱根開催に深い思い入れのある方、次回、第103回の品質管理シンポジウムにふるってご参加ください。

写真3 箱根ホテル小涌園(外観)
写真3 箱根ホテル小涌園(外観)
  • ※「第103回品質管理シンポジウム」
    日 程:2016年12月1日(木)~3日(土)
    テーマ:「IoT 時代における品質管理の役割と重要性-IoT 時代の品質保証とTQM とは-」
  • ※ 最新情報は、品質管理シンポジウム専用サイトをご覧ください。(9月中旬、103QCS掲載予定)
    品質管理シンポジウム専用サイト:http://www.juse.or.jp/qcs/

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