クオリティマネジメント Quality Management

文字サイズ
  • 標準
  • 拡大
ログイン
掲載情報をメールでお知らせします。
購読申込
HOME > 2016年10月-12月(No.19) > コラム・エッセイ > 第22回「日本で開催される3回目の夏季オリンピックの時代を想う」
テーマ[過去・現在・未来]

第22回
「日本で開催される3回目の夏季オリンピックの時代を想う」

2016年8月に、第31回目のオリンピックが南米のリオネジャネイロで開催された。次の開催地は東京。私にとっては、母国で2回目のオリンピックを迎えることになった。団塊世代の一市民として、過去から現在のオリンピックの時代を振り返り、そこから未来の日本のあって欲しい姿に想いをはせた。

◆過去(1964年 初の東京オリンピック開催の頃)

私が最初にオリンピックを意識したのは、1960年のローマオリンピックだった。エチオピアのアベベ選手が裸足でローマの街を駆け抜け、初のマラソン優勝したのが印象的だった。

そして、4年後の東京オリンピックの開催日。1964年10月10日の国立競技場の上空に広がる真っ青な天空に、航空自衛隊のブルーインパルス5機が五輪を描いた時の興奮は今でも覚えている。

当時、世の中はまさに戦後経済の高度成長期にあり、社会が非常にダイナミックに変化していくのを実感していた。日本ではじめてオリンピックを開催することは、先進国の仲間入りを果たすことであり、この1964年東京オリンピックを契機に、海外からお客様を迎えるための近代的なホテルが多数建設され、1963年には日本初の高速道路「名神高速道路」の開通、翌年10月には新幹線の開通など、わが国の社会インフラが急ピッチで整備された。このころ、人々の欲求は一昔前の家電3種の神器「テレビ・洗濯機・冷蔵庫」から、新3種の神器「カラーテレビ、クーラー、自動車」へ移りつつあった。ただ1960年代前半、これら新3種の神器はまだ値段も高く、すぐに手に入るようなものではなかった。しかし、多くの人はどの家庭でも、やがてはこれらを所有することになるだろうと確信をもっていたように思う。今思うに、国が若かった。それゆえに豊かになることへの強い願望があり、それを叶えようとする社会の熱気、勢いがあったように思う。

◆現在(2020年 第2回目東京オリンピックを迎える)

あれから約半世紀が経って、2020年の東京オリンピックを迎えようとしている。随分と日本の社会の様相、人々の考え方、欲求、意識も変わってきた。あの怒涛の勢いにあった日本経済の高度成長は終焉し、バブルを経験し、人々の働き方も変わった。デジタル化とグローバル化が急速に進み、一般の消費者はモノにお金を使うよりも、コミュニケーションやエンターテイメントなどへの出費を多くしている。今までのモノに対しては、より快適で使いやすい、質が高いなどのニーズが掘り起こされて次々と新しい商品やサービスが提供されている。サステナビリティ、ユニバーサルデザインなどの言葉も以前の東京オリンピックの時代にはなかったが、今やあたり前に社会のインフラや道具の中に取り入れられている。確実に、ハイクオリティ社会に移行した。

そして、最近は海外からの旅行者も急増した。彼らは、日本の古い建築物、工芸品など伝統的な文化と同時に、現代の日本のファッションやアニメ、ゲーム、料理など、私たちがあたり前と受止めている日常の生活文化にも興味と関心をもっている。最近の言葉でいえば、クールジャパン、伝統的なもの、現代的なものが程よく調和して深められていく文化の国。この日本が4年後にはオリンピックを迎える。どのような演出が見られるのか、これから楽しみである。

  • [1]サステナビリティ(Sustainability):広く環境・社会・経済の3つの観点からこの世の中を持続可能にしていくという考え方のこと。
  • [2] ユニバーサルデザイン(Universal Design、UD):文化・言語・国籍の違い、老若男女といった差異、障害・能力の如何を問わずに利用することができる施設・製品・情報の設計(デザイン)のこと。

◆未来(20XX年 日本で3度目の夏季オリンピック開催の頃)

日本の高齢者、いわゆる65歳以上の方の全人口に占める割合をみれば、過去、東京オリンピックの年(1964年)は全人口の6.2%であった。そして2016年で25.9%、近未来の2035年には33.4%。3度目のオリンピックが開かれる頃、まぎれもなく日本は、世界でダントツの高齢者大国になっている。社会のしくみ、意識も相当変わっているように思える。昨今ではそのような社会に向け、高齢者を国としてどう養うか、その財源をどうするか、若者の負担をもっと軽くできないかなどが議論されているが、ついつい前向きな空気になりにくい。多くの人々は今の生活に充足感はあっても、将来に向けて世代を問わず、自らの幸せや成功のイメージを膨らませることが難しくなっているように思う。漠然とした不安がどうも吹っ切れない。

私は思う。これではいけない。高齢者で働ける者はもっと働こう、若者の仕事をサポートしようと、社会に役立とうとする気持ちをもっともちたいものである。世界で一番高齢者がイキイキと働く国。そして若者が能力を存分に発揮し、社会を牽引し、老・壮・青がお互いを補完し、伸ばしあう。そんな国になれたらと夢を描いている。

一方で、伝統文化が素晴らしいのはわかるが、日本の美しい自然は劣化してきていると思う。新幹線の車窓から見える田園には、耕作放棄地がかなり増え、荒れてきている。里山も手入れが行き届かなくなり、猿や鹿の被害も増えている。どうかこの日本の美しい自然を壊さず、取り戻し、維持していきたいものである。この分野でも、高齢者が役立つ場はかなりある。頑張ろう高齢者(自分のことです)。3度目に日本で行われるオリンピックの頃には、独特の成熟した文化と昔ながらの美しい田舎の自然が、世界の人々を魅了していて欲しいと、これは筆者の余命からしてただ願うばかりである。

(M.K)

コラム・エッセイ

全てを表示

年度別 INDEX

編集部だより Editorial department
読者の声 voice