クオリティマネジメント Quality Management

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HOME > 2017年1月-3月(No.20) > 特別企画 > 「第103回品質管理シンポジウム」ルポ

テーマ: IoT時代における品質管理の役割と重要性
-IoT時代の品質保証とTQMの姿を探る-

准教授 稲葉 太一(いなば たいち)

神戸大学 人間発達環境学研究科
准教授 稲葉 太一(いなば たいち) 氏

「第103回品質管理シンポジウム」開催

 (一財)日本科学技術連盟が主催する第103回品質管理シンポジウム(以下、QCS)が、2016年12月1日(木)~3日(土)に箱根ホテル小涌園(神奈川県足柄下郡:写真1)にて開催された。このホテルは、QCSがはじまった1950年ごろからほぼ一貫して会場として使用しているため、通称「箱根シンポ」と呼ばれる由来にもなっている。今回(第103回)の参加者は、本シンポジウム史上最多の総勢約250名となった。

写真1 箱根ホテル小涌園(神奈川県足柄下郡)
写真1 箱根ホテル小涌園(神奈川県足柄下郡)

さて、第103回QCSでは、(一財)日本科学技術連盟理事長/トヨタ自動車(株)顧問・技監の佐々木眞一氏が主担当組織委員を務められ、「IoT 時代における品質管理の役割と重要性-IoT 時代の品質保証とTQMの姿を探る-」をテーマとし、以下のようなプログラム(表1)で進行された。

表1 103QCSプログラム
月日 時間 科目 講演者(敬称略)
12/1
(木)
19:30〜20:40 <特別企画>
「自動車の明るいミライへの挑戦」
豊田 章男 氏
トヨタ自動車(株)取締役社長
対談:小谷 真生子 氏
(BSジャパン日経プラス10 メインキャスター)
20:40〜21:00 質疑・応答
21:00〜22:00 グループ討論メンバー自己紹介
22:00〜23:00 談話室
12/2
(金)
8:30〜8:50 主催者挨拶 (一財)日本科学技術連盟
理事長 佐々木 眞一
(103QCS主担当組織委員)
8:50〜9:50 <基調公演>
「つながらない製造業は生き残れるか?〜キャッチアップからイニシアティブへ〜」
西岡 靖之 氏
法政大学 デザイン工学部 教授
(インダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ 理事長)
9:50〜10:00 質疑・応答
10:10〜11:10 <講演1>
「コマツにおけるIoT活動について」
大橋 徹二 氏
(株)小松製作所
代表取締役社長(兼)CEO
11:10〜11:20 質疑・応答
11:30〜12:30 <講演2>
「ロボット革命により世界に勝つ日本のものづくり」
小笠原 浩 氏
(株)安川電機
代表取締役社長
12:30〜12:40 質疑・応答
12:40〜13:30 昼食休憩
13:30〜14:30 <講演3>
「オムロンが提案する、新しいオートメーションによるモノづくり革新」
山田 義仁 氏
オムロン(株)
代表取締役社長CEO
14:30〜14:40 質疑・応答
14:55〜15:55 <講演4>
「Becoming Digital Industrial」ー『次世代製造業』を目指すGEの挑戦」
熊谷 昭彦 氏
GEジャパン(株)
代表取締役社長兼CEO
15:55〜16:05 質疑・応答
16:05〜16:15 グループ討論の主旨説明 佐々木 眞一
16:15〜18:10 グループ討論(1)
18:15〜19:15 夕食(立食)
19:20〜21:00 グループ討論(2)
21:00〜23:00 談話室(自由参加)
12/3
(土)
8:30〜9:55 グループ討論報告(10分×7班 ※予備15分) 司会:佐々木 眞一
報告:各班リーダー
10:10〜11:40 総合討論
11:40〜11:50 第103回品質管理シンポジウム まとめ 佐々木 眞一
11:50〜12:00 次回(104回)品質管理シンポジウム案内 中條 武志 氏
中央大学 教授
(104QCS主担当組織委員)
12:00〜 昼食・解散

※ 本文内掲載の所属・役職は開催時のもの

QCSは、「講演」と「グループ討論」の2本柱で構成されている。「講演」では、蓬莱の間と呼ばれるメインホールにて各講演者の講演を全員で聴講する(写真2)。また、質疑応答も行われる。今回のQCSでは5件の講演があった。「グループ討論」では、テーマごとにわかれた班で討論を行い、最終日に全体報告を行う。また、シンポジウムに先立ち、班ごとにメーリングリストを利用して自己紹介、アンケート回答、情報共有も行う。今回は全部で7班が設けられた。各班のテーマは、表2のとおりである。

写真2 蓮菜の間での講演の様子
写真2 蓮菜の間での講演の様子
表2 「グループ討論のテーマ一覧」
表2 「グループ討論のテーマ一覧」
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【1日目(12/1)午後】

1日目には、特別企画、グループ討論メンバーの自己紹介が行われた。以下に特別企画の内容を記す。

<特別企画>
「自動車の明るいミライへの挑戦」
豊田 章男氏(トヨタ自動車(株) 取締役社長)
対談:小谷 真生子(BSジャパン日経プラス10 メインキャスター)

会場は、講演がはじまる前から250名以上の参加者の熱気に包まれていた。103QCS主担当組織委員である佐々木眞一氏から、「米公聴会での危機的な状況から業績をV字回復させ、また、自分で車を運転して確かめる、異色の社長である」との紹介があった後、颯爽と、お二人が登壇された。

1.トヨタの厳しい状況

はじめの話題は、豊田氏が社長に就任した直後、アメリカ議会の公聴会で追求された時の話であった。この品質問題における議論において、追求され、相手にわかって貰えない辛さを感じた一方で、アメリカの販売会社、工場関係者から「100%あなたを信じている」という言葉をもらい、どれだけ勇気づけられたかと当時の思いを語られた。

2.社長の役割

2つ目の話題は、社長に求められることは何か、という話であった。公聴会の後、トップの役割は「責任を取ること」だと強く認識するようになったそうである。自動車産業は裾野が広く、自分の発言が多くの企業の代表として取られることや、実は自分がいかに現場に支えられているのか、ということを再認識できたとのことであった。豊田氏は、以前はメディアが嫌いで、説明してもわかって貰えないと考えていたそうであるが、これ以降は、自身が説明する人に変わったと話されていたのが印象的であった。

3.トヨタの人づくり

3つ目の話題は、トヨタ工業学園における人材育成の紹介からはじまった。この学園は、創業者の豊田喜一郎氏によって会社設立の直後に、若者が「自ら考え、自ら動く人材」になり、トヨタの強い現場を支える優秀な技能者を育成することを目的につくられた学園である。学園でもっとも大切なことは道徳観念であり、挨拶をする、部活動を行うなどのさまざまな活動を通して、後工程に不良を流さないという品質管理の原点を守ることの大切さ、車づくりで大切な人づくりの重要性を教育しているとの説明があった。

4.社員との対話

最後は、ニュルブルクリンク(ニュル24時間耐久レース)というレースへの参加を通じて、技術や車づくりの原点を社員と共有しているという話題であった。このサーキットは、世界屈指の難コースであり、1周25km、高低差300m、時速200km/hを24時間で最大何周できるかを市販車で臨むレースである。当然のことながら、トラブルが頻発するため、それによってメンバーが鍛えられ、さらに、チームワークが大切だと身をもって体験する。ここに社長が参加することで、「良い車とは」という根源的な問いに対する意識を参加したメンバーと共有できるのだという。

これら3つの話題について、軽妙な小谷さんの語り口も加わり、豊田社長の人となりが滲み出て、とてもにこやかな雰囲気の中、対談が終了した。

<グループディスカッション、懇親会>

私は、第3班に参加した(メンバーは29名だった)。自己紹介は事前にメールで行っていたため、スムーズに議題へと話は進み「生産現場でIoTが有効に機能する場面」をテーマとして、どのような場面があるかについて議事が進行した。

その後、懇親会場では“IoTは、わが社では使わない”とか、“IoTで繋がってデータ化しても放置されるケースがある”などといった本音の話を聞くことができ、2日目の講義内容にますます興味が湧いてきた。

【2日目(12/2)午前】

2日目には、主催者挨拶、基調講演のほか、4つの講演、グループ討論が行われた。

<主催者挨拶>
佐々木 眞一氏((一財)日本科学技術連盟 理事長/トヨタ自動車(株)顧問・技監)

基調講演に先立ち、(一財)日本科学技術連盟理事長/トヨタ自動車(株)顧問・技監の佐々木眞一氏より主催者挨拶があった。

<基調講演>
『つながらない製造業は生き残れるか?~キャッチアップからイニシアティブへ~』
西岡 靖之氏(法政大学 デザイン工学部 教授)

今回のQCSのテーマである「IoT」について、IoT化のポイント、IoTがものづくりをどう変えるか、IoT時代の重要なことの3点についての次のような講演があった。

  • 1.ものづくりにおけるポイントはデータ化
  • 2.データ化で繋がり、コア技術は守る
  • 3.IoT時代になっても現場が大切

はじめに、IoT化のポイントとはデータ化のことであり、海外生産では、ドライで理詰めであることが要求されるが、このような場合の生産管理においては、日常業務を標準化し、アナログでしか表現できないものと、デジタル化できる境界線を明確にすることが大切である。

次に、IoTによってものづくりはどう変化するかについて、製造段階でデータ化が進めば、製品検査のいくつかは不要となり、工数の削減が実現する。これによって、より設計段階が重要となり、いかにデータ化するかで勝負が決まる。また、何がコア技術かがより大切になり、どこまでをクローズに、どこからをオープンにするかの戦略が求められる。これらによって製造業は、現物の製品を売るという側面のみならず、製品に付随するサービスを売る、すなわちサービス化が加速する。

また、IoT時代になっても重要なことは、現場である。現場こそが、競争力の源泉であり、これを活かす「プラットフォームづくり」が重要である。つまり、デジタル化も、現場とサプライチェーンの連携があってはじめて活きたものになる。

最後に、まとめとして西岡氏から

「IoTのゴールは、繋がることではない。有機的に繋がること、すなわち自律化である。
自律化のゴールは自動化ではなく、人との協調である。」

とのコメントがあった。

現場力、サプライチェーンとの協力体制など、日本企業の強みを活かす工夫、時代は変わっても、最後は「現場、人なんだなあ」と感じた。これは、前日の特別企画での豊田氏の話とも重なり、決して忘れてはならないと認識を新たにした。

<講演1>
『コマツにおけるIoT活動について』
大橋 徹二氏((株)小松製作所 代表取締役社長 (兼)CEO)

講演は、コマツの歴史の紹介からはじまり、建設機械事業の置かれている状況、コマツの企業文化としてのコマツウェイ、実際のIoT活動への取組みについて、活用事例として次のような現状報告があった。

  • 1.建設機械事業の特徴
  • 2.コマツウェイとIoT(現場主義、PDCA、品質と信頼性)
  • 3.活用事例1(無人ダンプトラック運行システム)
  • 4.活用事例2(スマートコンストラクション)

建設機械事業は、自動車業界と比べてお客様が少なく、使われ方を調べることが大切である。つまり、新車を売ることも重要であるが、すでに納めた車の部品供給、サポートやメンテナンスが非常に重要である。たとえば自動車では、部品価格は新車価格の10%であるが、建設機械でほぼ同額、鉱山機械では新車価格の約2倍である。

コマツは、現場が強いことを大切にしてきた。その上で品質や信頼性も高める活動を続け、デミング賞を受賞している。このような企業文化を「コマツウェイ」と呼んでいる。ただ、従来はサンプリングしてデータを取っていたが、2001年以降はICT(IoT)活動として、全データを集める方針に転換して現在に至る。

この繋がる現場の事例として、無人ダンプシステムがある。建設事業に従事する労働者の年齢は他業種に比べて高く、深刻な労働力不足が目前である。そこで、切削現場の地形データを、ドローンを活用して正確に測定し、全ダンプにはGPS機能を搭載し、オペレータが1人で自動運行できるシステムをつくり運用している。

また、これを支えるシステムとして、スマートコンストラクションがある。このシステムは、顧客、代理店、協力会社、生産現場を繋ぎ、もっとも大切な顧客のニーズを、全社をあげて迅速に対応できる体制となっている。現場の状況に応じた修理部品の調達など、従来であれば連絡を貰って詳細な聞き取りの後に、発注、修理などの手順となる所が、リアルタイムで対応を行えるようになっている。

最後に、まとめとして大橋氏は

「IoTを活用して、いかに顧客価値を創造していくのか、他社との差別化・競争力の向上
させるのか、現場力で勝負することが大切である。」

とのことであった。この講演から、必要に迫られたとはいえ、ずいぶん早い時期から IoTを活用しているのだと強く印象付けられた。講演後、これは単価の高い「建設機械」に限定されたことなのか、より一般的な製品ではどうなのかに興味を感じた。

<講演2>
「ロボット革命により世界に勝つ日本のものづくり」
小笠原 浩氏((株)安川電機 代表取締役社長)

講演は、安川電機の事業についての紹介からはじまり、Industry4.0を安川版に改変して活用していること、将来のロボットのめざす方向性についての話があった。

  • 1.FA企業としての取り組み
  • 2.安川版Industry4.0 の作成
  • 3.将来のロボットのあるべき姿

安川電機は、1915年創業時、炭鉱の石炭運搬を行い、そのモーターの制御技術がコア技術となっている。インバータがモーターを動かす技術、ACサーボモータが止める技術である。この意味で、製造業(FA系)における産業用ロボットの位置づけとしては、全体のど真ん中に位置しており、約70%が海外取引となっている。また昨今は、産業用ロボットの3品(食品、医療、化学)が主力製品となっているが、国によってはニーズが異なり、規格が合わないという場合も多いとのことである。(安川版Industry4.0の必要性)

ここで重要なことは、ロボットの発注が従来のカタログから選ぶ注文発注(BTO:build to order)から、ユーザ側の回転速度やトルクなどに合致する製品を求める傾向に変わりつつあるということである。たとえば、300万円の機械に200万円のAIを故障対策で付けるより、2台購入する方が安いということだ。また同じ製品を3,000個程度注文があると、工業製品として精度の高いものができるが、少量多品種だと精度が上がらない。

そこで将来のロボットに求められるものは、現在達成されている「人を超える正確性・再現性」「スキルの可視化・共有化」に加えて、「高い自在性や柔軟性」である。未来のものづくりは、人とロボットの共存作業であり、いかにロボットを賢くできるかにかかっている。

たとえば、ジョブ変更の場合、新しい部品が流れてくるとそのための作業を変え、未経験の状況になれば、クラウドに問い合わせるようなシステムを構築することが最大の課題である。

最後に、小笠原氏は

「インダストリ4.0 業界に期待する事と題して、1極集中にならず、健全な競争環
境を構築することで産業全体の発展を望む」

との提言をなされた。規格が統一され、強い企業だけが勝ち残るのではなく、むしろ多様な業界となることを望んでおられる姿勢に、企業トップの心意気を見た思いであった。

【2日目(12/2)午後】

<講演3>
『「オムロンが提案する、新しいオートメーションによるモノづくり革新』
山田 義仁氏(オムロン(株) 代表取締役社長 CEO)

講演の冒頭、「自動卓球ロボット」が紹介された。このロボットは、相手の打球に対して、複数のカメラで位置、回転数などを測定し、どのように返球すると相手のコートに返球できるかを計算し、そこにラケットを移動して打ち返す。これらを非常に短い時間で計算し、実現している。さすが、日本初の自動改札を実現した会社だと感心させられた。

講演の内容としては、オムロンのめざす方向性、3つのイノベーション、実際のIoTの活用事例について、次のような話があった。

  • 1.ものづくりにおけるニーズとシーズの変化(オムロンのめざすもの)
  • 2.3つのイノベーション(制御進化、知能化、人と機械の協調)
  • 3.実装ライン見える化による生産改善

オムロンの企業理念は、徹底的なニーズの掘り起こしである。高いセンシング技術や制御技術が支えているのは当然として、何よりも考えることを社員に求めている。

また最近のものづくりは、高度化(高品質化)しており、たとえば、従来は国内のマザー工場での一元管理であったのが、最近は海外でグローバル生産と変化している。海外生産では「1年後には全員が退職」という事態も起こり得るゆえ、自動化(標準化)をより新しくすることが求められている。これらを、ICT、ロボテックス、AIなどシーズの技術革新とリンクさせ、相互に触発させる。

製造業の現場を革新すること、これらを次の3つ言葉から i を抜き取り「i-automation」という。1つ目は制御進化(integrated)であり、製造を高速化・高精度化する。2つ目は、知能化(intelligent)であり、情報を活用して生産性と品質を向上する。3つ目は、人と機械の新しい協調(interactive)であり、ロボットと人の協働を実現する。これらを駆使して常に他社の1歩先2歩先を行き、新しい事業の創造をめざすとのことである。

また、表面実装ラインに見える化を導入した例が紹介された。製造ラインの全装置データを各基板で紐付けし、生産状態を見える化する。これによって、各基板の善し悪しが一目でわかるようになり生産性が30%向上、熟練者でなくても問題点の抽出が可能となり、段取り時間の短縮にも繋がった。

山田氏は「ロボット業界に参入したいわけではない」という。つまり、まだ自動化できていない、人しか行えない作業に対して、ロボットが人間と協調することをめざしている。

「製造業は、ニーズの変化が厳しく、IoT時代と言われてもピンとこない、ずっと前から、
繋がるのは常識。単に繋がるだけではだめで、新しいニーズの掘り起こし、シーズとの
相互触発が肝心だ」

とのことである。基調講演で西岡氏が述べておられた「自律化のゴールは、人との協調」との話と繋がり、こういう事例があるのだと納得できた。

<講演4>
『Becoming Degital Industrial 「次世代製造業」を目指すGEの挑戦』
熊谷 昭彦氏(GEジャパン㈱ 代表取締役社長 兼 CEO)

話の冒頭、発明王エジソンの言葉として「世界が今、本当に必要とするものを創る」が紹介され、オムロンの山田氏が言っておられたことと似ていると感じた。トップ企業になるとめざすものが驚くほど似ている。熊谷氏は、次のようなことを述べられていた。

  • 1.デジタル・インダストリアルカンパニーとしてのGE
  • 2.新しいものづくり(ブリリアント・ファクトリー)
  • 3.GEの企業文化を変える3つの施策

GEは、IoTの進化の中、変革の真っ最中にあり、保険、プラスチック、放送事業などを売却することで、2015年は工業(インダストリアル)が90%を占めている。さらに、セキュリティ会社を買収し、全社共通のプラットフォームとして「PREDIX」[1]を用いて、お客様、協力会社にもオープン化している。これらを、鉄道会社、火力発電、航空会社の事業の効率化に活用している。

[1]PREDIX:産業機器向けのインダストリアル・インターネットを実現するためのプラットフォーム。

新しいものづくりとして、3Dプリンターを活用し、「航空機エンジンの燃料ノズル」や「バルブ部品」を製品化して耐久性が従来の5倍を実現している。また、デジタル・ツインとして、「現実世界のマシン」に対して最新デジタル技術を駆使した仮想的なマシンを構築することで、航空機のフライトごとに更新されるブレード損傷モデルを活用することでコストを低減する。最後に、グローバル・ブレインとして、新しい考えを広く技術公募する。たとえば、航空機エンジン部品のアイデアとして、20代のエンジニアの案を採用するなどがある。

3つの施策として、1つ目は私たちの行動指針(GE Beliefs)を平易な言葉で表すことで、行動に繋がることをめざす。2つ目は、新しい働き方(Fast Works)として、社内の組織やプロセスを簡素化し、まず行動することを推奨する。3つ目は、社員の行動の変革を促進する(Performance Development)ことで、評価制度を固定的な制度を止め、顧客ニーズに即したタイムリーなものに変えることである。

最後に、熊谷氏は

「今までの“箱売り”から“ソフト付き”に変えて差別化を図ること、オープンソース
化していく。」

とのことだ。とくに、オープンソース化については反対意見も多かったとのことであった。基調講演の西岡氏は「オープン・クローズ戦略」を勧めており、GEがセキュリティを高めた上で、オープン化を企業の活力に繋げていると感じた。

<各グループでの討論>

16時15分から各グループにわかれてグループ討論を行った。メーリングリストでの事前の議論、1日目の自己紹介をもとに活発な討論があった。途中、18時15分から19時15分の1時間の間に立食式の夕食があり、参加者同士の交流が図られた。その後もグループ討論が行われ、3日目のグループ討論報告に向けて各グループともに討論のまとめとスライド資料づくりが行われた。早いグループは、予定の時間である21時には終わっていたが、資料づくりが深夜にまでおよんだグループもあったそうである(リーダー、書記の皆様、お疲れ様でした)。その後は、1日目の夜と同様に談話室が設けられ、参加者同士の自由な交流が図られた。この段階になると、班のメンバー同士の仲もだいぶ深まった。

グループ討議の様子
グループ討議の様子

【3日目(12/3)午前】

<グループ討論報告>

グループ討論報告の内容を以下に要約する。

グループ討論報告

● 第1班 テーマ「IoT時代の品質経営のトップの役割」

以下について議論が行われた。

  • (1) 社会情報インフラやIoTの技術的動向を踏まえた、顧客に新たな価値を提供する新たなビジネスモデル、製品、サービスの探索
  • (2) IoT活用による、より確実な品質保証、よりよい製造方法、サービス提供方法の実現
  • (3) 自社で行うことと連携で行うことの切り分けや、自社技術として囲い込むことと連携で実現することの切り分け

これら共通で、1.トップの役割、2.費用対効果、3.連携 について議論がなされた。

● 第2班 テーマ「IoT時代の品質経営のあり方」

以下について議論が行われた。

  • (1) 活用・検討するにあたっての壁
  • (2) 品質経営において変えるもの・変えないもの
● 第3班 テーマ「IoTにより生産プロセスはどう変わるべきか?」

以下について議論が行われた。

  • (1) 製品の企画からライン立ち上がりまで早く標準化するためにIoTは有用か?
  • (2) 高い生産性と不良ゼロの維持のため、IoTで問題発見し、早く対策する要点は?
  • (3) 生産プロセス設計の際、IoTで変えていくべきもの、変えてはならないものは?
● 第4班 テーマ「IoT時代の人財育成と組織開発」

以下について議論が行われた。

  • (1) 顧客ニーズの構造
  • (2) コト品質保証の概念
  • (3) 事業まるごと人財
● 第5班 テーマ「IoT時代のバリューチェーンにおけるホワイトカラーの生産性向上策とは」

以下について議論が行われた。

  • (1) IoTの進歩が、事業やホワイトカラーの業務に及ぼす影響
  • (2) IoT時代におけるバリューチェーンの姿とホワイトカラーの仕事
  • (3) 生産性向上の可能性と課題
● 第6班 テーマ「IoT時代でのお客様への品質保証はどう変わるのか?」

以下について議論が行われた。

  • (1) IoTで実現する世界
  • (2) IoT時代でのお客様への品質保証(3つのアクション)
    • 1) お客様からデータをもらう
    • 2) データを品質保証につなげる
    • 3) 社内を説得し実現する
● 第7班 テーマ「IoT時代に求められる顧客価値とは何か?」

以下の4つの論点について議論が行われた。

  • 論点①a お客様視点での価値
  • 論点①b サプライヤ視点での価値
  • 論点② ①を実現する上での課題
  • 論点③ お客様のリスクや安心

第103回品質管理シンポジウム・まとめ

最後に、佐々木眞一103QCS主担当組織委員より、本シンポジウムのまとめと総括が行われた。

第104回品質管理シンポジウムについて
中條 武志 氏 (第104回品質管理シンポジウム主担当組織委員/中央大学 教授)

中條武志104QCS主担当組織委員から、以下のように第104回品質管理シンポジウムの説明があった。次回、第104回品質管理シンポジウムは、2017年6月1日(木)~3日(土)の3日間、オークラアクトシティホテル浜松にて開催される予定である。テーマは「変化に対応できる、変化を生み出せる組織能力の獲得」であり、現時点では、次の講演が予定されている。

<第104回品質管理シンポジウム>

◆1日目:6月1日(木)

  • ・【特別講演】「お客様第一を基軸に存在感と魅力ある企業を目指して(仮題)」
    吉永 泰之氏(富士重工業(株) 代表取締役社長)

◆2日目:6月2日(金)

  • ・【基調講演】「TQMの実践と品質賞への挑戦を通した、変化に対応できる、変化を生み出せる組織能力の獲得」
    中條 武志氏 (中央大学 教授)
  • ・【講演1】「変化に柔軟に対応できる経営を実現するために必要な組織能力の獲得とTQM(仮題)」
    砂川 博明氏 ((株)キャタラー 代表取締役社長)
  • ・【講演2】「顧客の信頼を勝ち取るために必要な組織能力の獲得とTQM(仮題)」
    長谷川 裕恭氏 ((株)メイドー 代表取締役社長)
  • ・【講演3】「今日の経営に求められる組織能力とその獲得に向けたTQMの再強化(仮題)」
    山本 忠人氏 (富士ゼロックス(株) 代表取締役社長)
  • ・【講演4】「グローバル展開に求められる組織能力の獲得とTQM(仮題)」
    中尾 眞氏 ((株)ジーシー 取締役会長)

※ 講演情報は2017年2月現在のものです。

※講演者名、所属、役職、講演内容は、変更となる場合があります。最新情報はQCS専用ホームページをご覧ください。

おわりに

私はこのルポを書くことで、少し内容の理解ができたと感じる。このような機会をいただいた事務局の方々に感謝したい。最後に長年、箱根ホテル小涌園が品質管理シンポジウムの会場として親しまれてきたが、再開発のため、今回のシンポジウムがこの地での最後の開催となることが告げられた。箱根ホテル小涌園総支配人の山下信典氏より、永年の利用に関して謝辞が述べられた。次回、第104回の品質管理シンポジウムに、ふるってご参加ください。

▼「第104回品質管理シンポジウム」



 

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