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HOME > 2012年7月-9月(No.2) > 特集 > 日本のものづくりの「人」の力を再考する「富士通」
特集 日本のものづくりの「人」の力を再考する

未曾有の災害と闘った経験と現場力が拓く富士通パソコン事業BCPの新機軸

富士通(株)
パーソナルビジネス本部サプライチェーン統括部

ローコストオペレーション推進部
部長BCM事務局 貝嶋 洋隆(かいじま ひろたか)氏


 
貝嶋 洋隆(かいじま ひろたか)
貝嶋(かいじま)氏

富士通(株)パーソナルビジネス本部では、2007年度より「お客様の求める高品質な製品、サービスを安定的に供給する」「社会的責任の遂行を実現する」ことを掲げたBCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)の策定を進めてきた。2002年以降、世界中を震撼させたSARS(サーズ:重症急性呼吸器症候群)とは比較にならないほど高い死亡率が予想されていた高病原性鳥インフルエンザ(H5N1型)対策である。

富士通の顧客接点の最前線に位置する同本部では、国内中心の生産体制を掲げ、福島県伊達市の富士通アイソテック(以下、福島工場)でデスクトップPC、島根県簸川(ひかわ)郡の島根富士通(以下、島根工場)ではノートブックPCを製造していた。BCPの輪郭が固まってきた矢先、東日本大震災が起きた。1000年に1度といわれた大災害は、BCPでの想定をはるか上回る危機をもたらしたが、同本部は危機を無事に乗り越え、震災発生後わずか12日で島根工場での代替生産を開始、38日で被災した福島工場の復旧完了を果たした。(聞き手:大坪 和博)

想定外だらけの3.11

※画像クリックで拡大できます。 図1 パソコンの製造体制
図1 パソコンの製造体制
※画像クリックで拡大できます。 表1 事業継続戦略
表1 事業継続戦略
※画像クリックで拡大できます。 図2 富士通グループ被災状況
図2 富士通グループ被災状況

―東日本大震災後、多くの国内製造業が被災し、サプライチェーンが寸断したことによって、事業の復旧に多大な時間を要しました。しかし、御社では島根工場への製造移管、福島工場での事業再開を非常に短期間に成し遂げられました。この要因をお聞かせください。

貝嶋氏(以下略):富士通パーソナルビジネス本部は、個人や法人のお客様が富士通ブランドを体験する製品であるパーソナルコンピュータ(以下、PC)「FMVシリーズ」を製造・出荷する部門です。福島工場では、デスクトップPCを6,000台/日、島根工場では、ノートブックPCを1万台/日を製造しています(図1)。2007年、高病原性鳥インフルエンザなどの流行が懸念され、国内企業各社で話題になっていたBCPについて、私たちも取組みをスタートしました。そのBCPの方針として甚大な被災をした場合、ほかの工場や事業所に事業活動を移管する「代替地戦略」を事業継続の方針として決定しました(表1)

これは、製造拠点である福島工場、島根工場のどちらかで製造ができない事態が生じた時、他方に製造を移管すると規定したものです。被災した際の代替地としてお互いスムーズに連携して製造移管するために、BRP(Business Recovery Plan:事業復旧計画)説明会や部門内勉強会、eラーニングによる教育プログラムの実施、40回以上にわたる訓練などをトップから現場まで積み重ねてきました。また、その際の人員配置なども細かく決めていました。このため今回の震災でも、福島工場から島根工場への製造移管が短期間に進み、生産の中断期間を短縮することができました。当時は国内法人様向けのPC製造・出荷の最盛期である3月ですから、富士通としても生産台数を落すわけにはいかない。短期間に何とか出荷を再開できたことで、お客様にご迷惑をかけることなく納品することができたと考えています。

想定外の事態も多くありました。まず、福島工場の被災状況が余震や停電、東京電力福島第一原子力発電所での事故などの影響ですぐに確認できず、移管の決断にBCP上は4時間後を目標としていたのに対し、2日を要しました。また、福島工場の多くの従業員の自宅が被災したことや交通網が乱れていたことから、その動きが規制されました

富士通グループ全体でも、東北地方を中心に、9工場を含む50以上の拠点で直接的被害がありました。携帯電話や半導体などの製造ラインが停止し、グループ全体での被災も、広範囲かつ深刻な状況でした(図2)

このような状況下で、私たちは、富士通ブランドを守るためにも、PC製造の早期復旧をめざす必要性がありました。BCPには規定されていない事象に対して、最善な判断を下す現場対応力が試される機会となったのです。

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