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HOME > 2012年7月-9月(No.2) > 特集 > 日本のものづくりの「人」の力を再考する「JVCケンウッド」
特集 日本のものづくりの「人」の力を再考する

ものづくりを支える心は、世界共通に息づいている
((株)JVCケンウッド)

(株)JVCケンウッド
 執行役員 常務 生産・調達部長 落合 信夫(おちあい のぶお) 氏

 
落合 信夫 氏
取材に応えていただいた落合氏

「流出した水量と、影響を受けた人数に関して過去最悪の洪水」といわれた、2011年のタイ大洪水。7つの主要な工業団地の浸水水位は、最大4メートルとなった。自然災害による経済損失額の大きさでは、東日本大震災、阪神淡路大震災(1995年)、ハリケーン・カトリーナ(2005年、アメリカ)や中国・四川大地震(2005年)に次ぐ1,567億バーツ(4,000億円弱)とされる。600万ヘクタール以上が浸水、その範囲は北部のチエンマイ県から、チャオプラヤー川流域の支流に存在する中部のバンコクなど58の県にも及んだ。

タイには日系企業が3,100社以上進出、その中で洪水の被害を受けたのは500社あまり。洪水の被害が刻々と報道され、各社が次々に操業停止を発表する中で、メーカーの供給責任を果たすために、タイ工場の生産を国内工場に一時移管し、タイ人の熟練工を受け入れることを決めた日本企業があった。(株)JVCケンウッドである。

当時、同社の生産一時移管は、災害時におけるBCPの実験的な方法論として、また日本政府とタイ政府が特別措置で発給した就労ビザの具体的な事例として、多くのマスコミの注目を集めた。(取材・執筆:大坪 和博)

想像を超えた大規模被害

日本の製造業にとって、2011年は災害に対する脅威を体感した年ではないだろうか。「3.11」と暗号のように語られる東日本大震災、福島第一原発事故にともなう電力供給の懸念からの節電要請、そして、タイのチャオプラヤー川流域に甚大な被害をもたらした洪水。さらに記録的な円高もあり、製造業各社にとって、これまで経験したことのないクライシスに対して、どのように迅速かつ的確に対応していくか試される機会となった。

(株)JVCケンウッド(2011年10月、日本ビクター(株)、(株)ケンウッド、J&Kカーエレクトロニクス(株)を吸収合併)では、タイに2つの生産子会社と2つの販売子会社がある。その中で、ナワナコン工業団地にある業務用機器の生産子会社、JVC Manufacturing(Thailand)Co., Ltd.(以下、JMT)は、2011年10月12日以降、洪水のために工場が被害を受け、通勤できない社員が増えたために、一部の生産ラインを休止した。10月17日には同工業団地内に避難勧告が出されたために、全従業員を退避させ、全面的に操業を停止した。

「現地からの報告では、浸水したエリアは工業団地を超えて、周囲100平方キロメートルに及んだとのことでした。操業できない工場があたり一面にある状態です。もちろん、避難勧告が出ている以上、誰も工場に行くことができず、周りのサプライヤーも全滅という状況でした。われわれの想像を超えた災害だったのです」(落合信夫(株)JVCケンウッド 執行役員 常務 生産・調達部長、以下同)

(株)JVCケンウッドの本社側でも、JMTが水没する前から、洪水被害に関する情報は刻々と集まってきていた。日本のメディアでタイの洪水が大きく取り上げられるようになった9月あたりから、落合常務は不測の事態を想定して対策を練りはじめていた。洪水被害がタイの各工業団地で顕在化してくると、社長を中心に対策連絡会を立ち上げ、現地の情報をつぶさに収集して対応することになった。

やがて10月に入り、JMTの前の道路が冠水したことから、1階にある設備を2階に移動させるなど、現場でできる対応をしていた。しかし、道路面からは約2メートル80センチ浸水し、最終的にはJMTも工場1階床上1メートル30センチまで水没、電源などを含めほとんどのJMTの設備・機械が使用不可能な状態となり、従業員も全員退避させざるをえなくなった。

洪水被害を受けたJMT。建屋内も、1階は床上浸水1.3メートルに
洪水被害を受けたJMT。建屋内も、1階は床上浸水1.3メートルに

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