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HOME > 2012年10月-12月(No.3) > 特集 > 販売後の品質保証―日本の“もったいない”文化を継承するものづくり―「ブリヂストン」
特集 日本のものづくりの「人」の力を再考する

すべてに共通する「顧客本位」の発想
―リトレッドタイヤ製造開発に見るブリヂストンの底力―

杉山氏

(株)ブリヂストン
  生産財グローバルマーケティング戦略本部長 杉山 鋼児 氏

ほんの数年前ならその言葉を認識している人すら少なかった“リトレッドタイヤ”が、今、日本でも“もったいない”文化の代表格として知られるまでとなった。いうまでもなく、ブリヂストンが有名タレントを起用して繰り返しオンエアしてきたテレビCMが次第に定着し、クルマには縁のない人まで「リトレッドの言葉は知っている」といわしめるほどになったのである。欧米には遅れをとるものの、今まさにリトレッドタイヤ時代を迎えた日本。タイヤ事業のリーダーカンパニーであるブリヂストンの杉山鋼児生産財グローバルマーケティング戦略本部長に、その現状とこれからを聞いた。(取材・執筆:市川 徹)

「日本国内の意識も急速にアップ」

「当社の大まかな推定では、取り換え用タイヤで見た新製造タイヤとリトレッドタイヤの比率は、北米で5対5、欧州では6(新品タイヤ)対4(リトレッドタイヤ)といったところ。アジアはまだまだ自動車の普及具合が国や地域によって大きなばらつきがあるものの、それでもトータルすると6対4くらいかと思う。ただ、ここ日本では、新品が8に対してリトレッドは2。ユーザーの使用率はまだまだリトレッドが低い。ただ、ちょっと前ならリトレッドという言葉すら耳なじみのないものだったことに比べれば、市場環境は大きく変貌しているといっていい。ユーザーの意識も認識も格段にアップしている」

タイヤは、クルマの重量を支える、衝撃を吸収する、走る・止まる、曲がるといった、さまざまな重要な機能をもっている。乗用車・トラックやバス、航空機、建設車両、農業機械など、ほとんどの車両に装着されている。黒くて丸いゴムという印象が強いが、タイヤの重量のうちゴムが占める割合は半分強程度であり、残りはカーボンブラックや硫黄といった薬品と、タイヤの骨格を形成するスチールなどがある。

リトレッドタイヤのイメージ
リトレッドタイヤのイメージ。ブリヂストンの
「リトレッドタイヤラーニングセンター」に展示されている
(以下、すべて同センターにて撮影)

それではリトレッドとは何か。リトレッドのトレッドとは、タイヤのもっとも外側にある、道路と直接接地している場所だ。どんな人でもタイヤには溝があることはご存じだろう。ゴム状の外周面にさまざまな形状の溝を掘り、路面との接地効率を高め、操縦安定性や排水性を向上させる重要な機能を備えている。通称“台”と呼ばれるタイヤの骨格部分などはそのままにし、路面と接地する外周面のトレッド部分だけを新しいものに変えて再利用するので、トレッドの頭にRe(リ=もう一度、再びなどの意)をつけて、リトレッドとなった。つまりは再生・再利用タイヤのことである。

もう少し説明を加えよう。ここでは男性用の皮革靴を思い浮かべると、わかりやすいかもしれない。堅牢な革靴の多くは、グッドイヤーウェルテッドという製法でつくられており、靴底にあたるアウトソール、足の甲や指などを包み込むアッパーレザー、インナーソール、クッション性や屈曲性を高めるためのコルクなどが、それぞれパーツとして存在し、ほとんどが接着剤は使わず、糸などで縫い合わせて完成している。

このため、パーツを交換すれば靴を履きつぶすことは少なく、手入れと補修さえ怠らなければ、何十年も履きつづけることができるのである。とくに新品の革靴の場合、つま先とかかとが減りやすい。ソールを含め、ほとんどパーツは革でできているが、削れて減りはじめてもそのまま放置して履きつづければ、パーツの交換も困難になり、結局は履きつぶしてしまう。早目にリペアすれば、減った部分を新しいパーツに交換して履きつづけることが可能になるものだ。

リトレッドタイヤも考え方はまったく同じである。トラックのタイヤで直径は約1メートル。接地面となるトレッドの部分は、このうちの数センチメートルの厚さにすぎない。あらかじめ溝が刻み込まれたトレッドの部分を、ぐるりとタイヤの外周に巻きつけることで、安全性を確保している。元になる新品タイヤの品質が優れているからこそ、使い捨てずにリトレッドで使い切ることができることになる。

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