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HOME > 2013年7月-9月(No.6) > 特集 > “ワクワク・ドキドキ”を生む商品・サービス「トヨタ自動車」
特集 “ワクワク・ドキドキ”を生む商品・サービス

「楽しめるクルマ」に徹したトヨタ86
常識に捉われぬことで甦った伝説の名車

トヨタ自動車(株)
スポーツ車両統括部
ZR チーフエンジニア 多田 哲哉(ただ てつや)氏

 

トヨタ自動車(株) スポーツ車両統括部 ZR チーフエンジニア 多田 哲哉(ただ てつや) 氏
トヨタ自動車(株)
スポーツ車両統括部
ZR チーフエンジニア
多田 哲哉(ただ てつや) 氏

「あいつは終わった」――。チーフエンジニアとしてスポーツカー「86(ハチロク)」の開発を命ぜられた多田哲哉氏に対して社内で公然と囁かれた評判である。「俺が断ってやろうか」と哀れむ役員もいた。どちらにも「売れないスポーツカーを押し付けられて気の毒に」という含みがある。しかし、そんな心配をよそに、同車は想定を超えるペースで売れつづけ、まもなく10万台に達する。好調な動きを支えたのは、これまでのクルマづくりの常識を覆すさまざまな試みと、開発チームが共有するワクワク・ドキドキ感であった。トヨタの現行量産車で唯一のスポーツカーを世に送り出す陣頭指揮を執った多田氏に仕掛け人としての手のうちを聞いた。
(聞き手・伊藤公一)

チューニングショップを驚かせた情報開示

――発売から1年半あまり。86のこれまでの累計販売台数は国内外合わせて10万台に迫るといわれていますが、この数字をどうみますか。

※画像クリックで拡大できます。 多田氏と86(ハチロク)
多田氏と86(ハチロク)

率直にいえば、86はいたずらに数字をねらうクルマではありません。ただ、ビジネスである以上、ある程度売れる必要はあります。発売から1年少し、もうすぐ世界中で10万台。奇しくも、チューニングショップの商売が成り立つ目安の数字です。だから、内心、早くその数字に達しないかなとは思っていました。しかし、想定していたひとつの目標が早まったという感じですね。嬉しい誤算です。

――86は「世界初の『水平対向・D-4S』パワーユニットを搭載した小型FRスポーツカー」という触れ込みですが、豊富に用意されたカスタマイズに魅かれるオーナーも多いと聞いています。

86はクルマづくりと同じくらいのエネルギーを購入後の、いわゆるアフタービジネスの開発にもかけています。根底には「お客様とともにクルマの進化を楽しむ」という基本姿勢があります。だから、86を楽しむインフラ整備や遊び方の提案などにも力を入れてきました。

86の発売前にはチューニングショップの皆さんに集まっていただき、実車を自由に見てもらう機会を設けました。見るだけでなく試乗も自由。この時、参加者の目の色が変わったのを覚えています。出せるかぎりのデータも提供しました。その時にはできなかった設計図の公開も、今年6月に実現しました。なんでも自由にご覧くださいという姿勢は、「あのトヨタが!?」と多くのチューニングショップを驚かせたようです。

これまでは新車が発売されると、業者の方はその車を購入したり、レンタカーを借りて部品の寸法を測るという原始的な作業を余儀なくされていました。しかし、中央値が分からないので、公差があてになりません。したがって、できあがる部品も心許なくなります。そんな状態ですから、なぜ正しい情報を教えてあげないのかと常々疑問に思っていました。「お客様とともに進化する」と謳っている以上、正しいデータを提供するのは自動車メーカーの務めだと思うのです。そこで、公開に踏み切りましたが、これは前代未聞でした。86ができあがるまでには、こういう常識破りが一杯ありました。

自動車メーカーとアフター業者とは対立した構図ではなく、もっとフレンドリーな関係であるべきです。86はもともとカスタマイズしやすいクルマです。それだけに、関連パーツを巡っては、メーカーにしかできないこととアフター業者が力を発揮できることを区別しました。それがお客様にも業者の皆さんにも受け入れられたのではないかと思います。

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