クオリティマネジメント Quality Management

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HOME > 2014年4月-6月(No.9) > 特集 > 安全・安心の品質を伝える「積水化学工業/セキスイハイム」
特集 安全・安心の品質を伝える プロセスを「見える化」すると魅せられる

安全・安心の品質 高品質の住まいを見(魅)せる

東北セキスイハイム工業(株)
 技術部 部長 森 努 氏
セキスイハイム東北(株)
 震災復興推進室 室長 田中 勝哉 氏

 

森氏
東北セキスイハイム工業(株)
技術部 部長 森 努 氏
田中氏
セキスイハイム東北(株)
震災復興推進室 室長 田中 勝哉 氏
堀池 俊介 氏
写真1 セキスイハイムM1
(以下、写真提供:積水化学工業)

積水化学における住宅事業の本格的なスタートは、1970年に第1回「東京国際グッドリビングショー」でデビューした『セキスイハイムM1』(写真1)にはじまる。大半を工場でつくるユニット工法による高品質、高性能、コストパフォーマンスの高さを実現したセキスイハイムは、良質安価な住宅の供給が急がれていた日本の住宅業界において、革新的な住宅技術として脚光を浴び、1971年発売から3年で累積受注が1万棟を突破し、大手プレハブ住宅メーカーの仲間入りを果たした。その第1号商品は、数十年もの歳月を経た2003年にDOCOMOMO JAPAN選定の「日本のモダニズム建築100選」(現在は日本におけるDOCOMOMO150選)に選ばれ、2013年には国立科学博物館が主催する2013年度「重要科学技術史資料」に選定・登録されている。積水化学工業/セキスイハイムの「安全・安心の品質」を伝える工場見学の実際について、お伺いした(聞き手:廣川州伸)。

高品質の住まいをお届けするために

―まず工業化住宅の品質保証と、その中で工場のポイントなどについて教えてください。

工業化住宅とは「生産・施工・供給面での品質管理が整備されたプレハブ住宅」と定義されています。プレハブ住宅が社会的に認知され普及するようになったのは、1960年代の高度経済成長期でした。都市部人口の急激な増加にともなって、住宅の量的不足が社会的な問題となっていた時代です。そのような時代背景の中、「ローコスト、短納期、安定した品質」を実現したプレハブ住宅が次第に普及してきました。しかし、住宅の供給量が一定水準に達すると、時代の住宅に対する要請は「量から質」へと変化することになります。そこで、「ローコスト、短納期、安定した品質」というプレハブ住宅の利点を活かして、さらに「生産・施工・供給面での品質保証システムがより高度に整備された工業化住宅」という製品が生まれてきました。プレハブ住宅が世の中に登場した時期、その市場は大都市周辺に集中していました。

しかし、交通網の整備で部材の供給が容易になり、また供給メーカーが地方に生産拠点を拡大するなどした結果、工業化住宅は地方へも浸透し、その市場は散在化していきました。現在、居住者であるお客様の形態は一般住宅同様、世代(乳幼児〜高齢者)や世帯構成(単身、核家族、多世帯)など多様で、そのニーズは家族構成、ライフスタイル、介護などの個別事情により実に多種多様です。一方、製品の特徴に目を向けてみると、「品質管理が高度に整備されたプレハブ住宅」という定義から見ても、品質や性能に対するお客様の期待は相対的に高いです。住宅の品質や性能は、工業化住宅にかぎらず、「建築基準法」などの関連法令で厳しく規定されています。2000年には「住宅の品質確保などの促進に関する法律(以下、品確法)」が施行され、住宅の10年保証が義務化されるなど、住宅メーカーの暇庇担保責任に対する要求はますます厳しくなってきました。

このような中、工業化住宅メーカーは「住宅産業を品質でリードする」という役割を担っているとの自覚のもと、品質保証に関する取組みをより強化していく必要があります。セキスイハイムでは、お客様の声を貴重な経営資源と位置づけ、開発・設計からアフターサービスにいたる一連のプロセスで、お客様との対話を品質保証の柱とした活動を展開しています。
 

現在のセキスイハイム(鉄骨系住宅)
現在のセキスイハイム(鉄骨系住宅)
(左上、上中央:ハイムbj、右上:parfait、左下:DESIO、下中央:セキスイハイムスマートパークステーション、右下:Domani)
 

次に、工場の品質保証のポイントは、「日常管理」と「品質の見える化」の活動です。具体的には、(1)から(7)の活動があげられます。
 

  1. 「ばらつきを考慮した工程能力の確保」:製造プロセスでは多種多様の部品を人手や設備によって組み立てています。 したがって「作業員によるばらつき」「設備によるばらつき」「部品寸法のばらつき」など多くのばらつきが発生し、品質低下の要因となっています。これらのばらつきを抑制し工程能力を高める工夫を、製造プロセスでは進めています。また、これらの情報をタイムリーに開発・設計部門へフィードバックし、部品設計やディテール設計に活用することで、開発・設計プロセスにて製造品質が確保されるよう努めています。
  2. 「TPMによる設備信頼性向上」:工業化住宅においては、設備保全は品質保証の上で重要なポイントとなり、 TPM(Total Productive Maintenance)活動をベースに、各製造工程による「自主保全」と工場全体で実施する「計画保全」を組み合わせ効果的な保全活動を展開しています。
  3. 「作業環境の整備による作業負荷低減」:作業負荷低減は労働安全性の向上だけでなく、品質確保にとっても重要なポイントとなります。セキスイハイムでは「重量物ハンドリング撲滅」「全作業姿勢の適正化」「全作業動線の適正化」「工場内空気環境の適正化」など具体的な指標や目標値を設定し、改善に取組んでいます。
  4. 「品質不具合の再発防止に向けた取組み」:工業化住宅にかぎらず、あらゆる産業において不具合の再発防止に対する取組みが行われていることはいうまでもありません。しかし住宅は長期耐久製品であり、建築後10年、20年を経て不具合が発生することもあり、そのような場合の原因究明は難しくなってきます。遡って、その不具合が「作業員が作業標準を守らずに発生したか」「作業標準を守ったのに発生したか」などを特定することは難しいです。したがって、工程ごとの日常管理、検査の徹底により、高い精度で原因を予測できる仕組みが必要となってきます。そういう意味で「工程内検査」が果たすべき役割は大きいです。
  5. 「非日常作業に対する重点管理」:住宅は多種多様なメニューで構成されており、それらの出現率もまちまちです。出現するメニューもあれば、数ヵ月に1回しか出現しないメニューもあります。たまにしか出現しないメニューを生産する際には、事前に作業員がそのメニューの作業標準を再確認しておき、管理者がパトロールするなどの重点管理が必要となってきます。このことは品質確保だけでなく、労働安全性の向上にとっても有効な手段となります。
  6. 「モノづくりの“技能伝承”」:工業化住宅であっても作業員の手に頼る工程は多いのです。したがって、重要な作業に関しては確実な技能伝承が必要になってきます。「溶接」「釘打ち」「電気配線」「塗装」など重要な作業に関し「マイスター制度」を設け、マイスターの育成をとおした技能伝承を行っています。工場には「技能伝承道場(溶接道場など)」が設置され、重点ポイントをビデオカメラで収録してパソコン上で「見える化」するなどの工夫をすることで、効果的に技能伝承を進めています。また年に1回、全国セキスイハイム工場(タイ工場含む)から選抜された作業員による「技能オリンピック」を開催し、好事例の水平展開や作業員のモチベーション向上を図っています。
  7. 「お客様に対する品質の見える化」:構造ジョイント部、断熱材充填部、電気配線部など、住宅の品質において重要な部位は、住宅が完工してしまうと隠れて見えなくなってしまいます。お客様の立場に立つと、このように隠れてしまう重要部位でミスや手抜きがないか、きわめて心配なところだと思います。製造プロセスでの品質保証においてもっとも重要なポイントは、このようなお客様の心配をいかに払拭できるかだと思っています。すなわち、重要部位が確実に基準どおり製造されていることを見える化し、お客様に伝えることが重要になってきます。できるかぎりお客様を生産工場に案内し、実物を見せながらすべての製造工程で品質が確実に確保されていることを説明することで、お客様の品質に対する納得性を高めるように努めています。1つの生産工場を訪れるお客様の数は、折衝中のお客様と契約済みのお客様を合わせて、年間で数千組にもなります。今日は1人のお客様として工場見学をしていただいて「品質の見える化」とはどういうことか体感していただきたいと思います。


 ―それでは、住宅をつくる工場見学をお願いします。はじめての見学で、わくわくしています。はじめに工場見学の役割などについて教えてください。

セキスイハイムの特徴は、ユニット工法にあります。工場で鉄骨ラーメン構造のボックス型ユニットを生産し、それを建築現場で組み合わせるという方式です。これにより、建築にかかる日数が大幅に短縮され、合理化された工場における生産比率が高いことで高品質が確保されます。さらに、堅牢な鉄骨ラーメン構造による高い耐震性も持合わせています。これらユニット工法の高品質・高性能は、工場見学をしていただくと実感していただけます。私たちの事業理念である「地球環境にやさしく、60年以上安心して快適に住みつづけることのできる住まいの提供」を体感していただける象徴的なプロセスです。

この工場が位置する宮城県は、東日本大震災後、高い住宅性能をもった住まいをスピーディに供給しなければならないという使命から、先進テクノロジーを進化させつつ、自然環境にもやさしい家づくりに取組んでいます。
 

―家の建設は、その土地に建築材を運びこみ、少しずつ組み立てていくというイメージがありました。工場内で組み立てることの利点、ご苦労などをお聞かせください。

工場見学風景
工場見学風景

セキスイハイムは、ユニットを組合せて無数の完成形ができるようになっています。すなわち、すべてオーダーメイドであり受注生産です。通常あまり見ていただくことが少ない住宅の建築現場ですが、“安全・安心の見える化”ということでいえば、品質をつくり込んでいるところを見て、納得していただくことが工場見学の一番重要な点です。また、最近は工場の作業員も、工場の見た目の美しさを意識して整理整頓などの5S(整理・整頓・清掃・清浄・躾)に取組んでいます。

契約いただいたお客様には、ご自身が発注した家がつくられる場面を見学する機会として、もう一度工場に来ていただくことも可能です。一生に一度の買い物ですから、ご自身の家がつくられるプロセスを確認することは、大きな満足につながります。
 

―御社では、はじめからユニット工法に着目し、工場生産の家づくりをはじめられています。

1960年(昭和35年)に約40万戸だった新設住宅着工戸数が、1965年(昭和40年)には倍増の80万戸に達していました(さらに1967年に100万戸、1968年は120万戸を突破)。国は1966年(昭和41)年に第1次住宅建設5カ年計画をスタートしました。「1世帯1住宅の実現」が目標に掲げられ、5年で670万戸の住宅を建設する計画を打ち出しました。当社では1968年(昭和43年)にプロジェクトチームを組織し、当時東京大学内田祥哉教授のもとで「部品化住宅論」を構想中だった大野勝彦氏と共同で、ユニット住宅の基本的構想を急ピッチでまとめました。開発の基本方針は
 

  1. 量産・量販できること
  2. 高品質・高性能の住宅をつくること
  3. コストパフォーマンスの高い住宅をつくること

でした。これにより、直方体の鉄骨構造体をジョイントして1棟の住宅を形づくり、内外装と屋根・設備を工場内で施工する工法を開発しました。
 

―品質へのこだわりについてはどうでしょうか。また、具体的に工場でつくることのメリットは、どこにあるのでしょうか。

屋根をかけて行われる寺院の改修工事
(写真2)屋根をかけて行われる寺院の改修工事
 

当社では「性能」と「品質」とを区別しています。「性能」とは耐震性能や断熱性能などを設計目標値として表しているもので、「品質」とは実際に良い「性能」をきちんと実現できること。すなわち、計画どおりの「性能」をすべての住まいで実現できることが「高品質」となるのです。

また、工場でつくるメリットは6つあると考えています。

1つめに、屋根の下でつくるため風雨の影響を最小限に抑えられます。家は普通、屋外で建てられますが、万一、建築中に雨風にさらされると部材の劣化や歪みを引き起こし、品質を下げる大きな要因になりかねません。組立て工程の大部分を屋根のある工場で行い、現場でもわずか1日(条件などにより工期が異なる場合あり)で屋根をかけてしまうため、耐久性の高い家が建てられるのです。寺院などの重要な建造物の改修工事が、屋根をかけて行われるのはこのためです(写真2)

2つめに、工場ラインで効率的につくることで作業精度が高まります。工場では、建築現場では使えないような大型機械による自動施工が可能です。生産ラインでは、人の手による作業も効率的で安全に行える環境が整っているため、作業精度が高まります。鉄骨をミリ単位の精度で、しっかり溶接できるのもこのためです。

3つめに、工程ごとに熟練の技術者が無理ない姿勢で作業できます。工場では工程ごとに、その作業に熟練した専任の技術者が担当します。工場の中では足場の設置も自由にできるため、無理のない安全な姿勢で集中して作業ができます。天井部分の施工も、無理のない姿勢で行なわれるため精度をアップできます。

(写真3)受発注のコンピューター管理システム
(写真3)受発注のコンピューター管理システム
 

4つめに、部材をコンピュータで一括管理し使用ミスなどを防止しています。家一軒で、数万点におよぶ部材が使われています。一軒ごとの多品種・大量な部品、部材の発注・生産・在庫出荷管理を行うのは、「HAPPS」と呼ばれるシステムです。これにより発注漏れや部品違いの心配が少なく、確実な管理体制を実現しています(写真3)

5つめに、専門検査員とコンピュータで二重に厳しくチェックしています。セキスイハイムでは、豊富な知識と技術を持ったスタッフが、工程ごとに約250もの検査項目を1軒ごとに丹念に品質検査しています。また、高精度センサーを用いたチェックも導入し、人と機械による二重の厳しい検査に合格して、ようやく建築現場に運び出されます。

最後に、リフォーム時にも必要部材を的確に選別できるため安心です。部材だけでなく、各検査結果も1軒ごとにデータ管理できるのも、セキスイハイムの特長です。こうすることで、メンテナンスやリフォーム時にも迅速に必要な部材が選別でき、1軒あたり数万点にもおよぶ部材を管理し、住まいのトレーサビリティを実現して間違いのない施工が可能になります。これらの情報を、個別に管理・保管できるのも工場生産ならではのポイントです。

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