クオリティマネジメント Quality Management

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HOME > 2014年7月-9月(No.10) > 特集 >企業のクオリティを高める「女性力」Part2「ボッシュ(株)」
特集 企業のクオリティを高める 「女性力」Part2

文化的なダイバーシティがイノベーションを生み出す
お互いを尊重し、多くの気づきから生まれる化学反応

森川 典子 氏
ボッシュ株式会社
取締役副社長 森川 典子 氏

ドイツでの創業から128年を迎えたボッシュ。世界の約150か国で事業を展開するグローバルな発展を支える強みとして、イノベーションをかけがえのない財産としている。そして、イノベーションを生み出す原動力としてダイバーシティを経営戦略に位置付け、全社的に推進している。2014年6月24日は“1st Bosch Diversity Day”。ボッシュのエポックメーキングとなる日に、ボッシュ取締役副社長の森川典子さんに女性活躍を含むダイバーシティ促進についてお話をお伺いした。(聞き手:前田建設工業(株) 新倉健一、永井絵美)

仕事への思い、仕事の楽しさ

―まずは森川さんのこれまでのご経験について、仕事への思い、姿勢をエピソードも交えて伺いたいと思います。

履歴書的に申し上げますと、私は愛媛県四国中央市の出身です。大学卒業後は、大阪の商社に入社しました。1981年のことですから、男女雇用均等法の制定前ですね。いわゆるOLの時代で、今では信じられないと思いますが、当時は入社試験にそろばんのテストがあったんですよ。

私はたまたま子供の時にそろばんを習っていまして、そろばんの成績が良かったんでしょうね。それもあって私は経理部に配属されました。だからといって何も知らなかったので、1年めは先輩たちに教えていただきながら、簿記などの勉強もしました。2年めになると後輩として大卒の男性が入社してきて教えるようになりました。けれど、3年めになったらなんと後輩だった彼が私の上司になるといわれたんです。

表現が難しいのですが、彼は私にとって、「この人だったら」という上司タイプの人ではなかったんです。なので、「このままでは人生終われない」と思い、会社を辞めました。

―なかなか思い切りがいいですね(笑)。その後、将来への思いはどのように?

たまたま実家でアメリカの女子高生をホームスティで預かったことがありました。彼女とは話が合い、その後も文通をしていて「私は海外に行こうと思っている」というと、「うちの大学に来れば」という話になって、渡米したのが1984年の9月です。ところが私、英語は読み書きができても会話ができなかったんですね。でも、「何とかなるわ」という性格なので、とりあえず渡米してみて、1年間大学の寮に住んだんです。すると1年でかなり英語力が伸びたので、近くの州立大学の3年に編入し、卒業することができました。

その後、結婚しまして、たまたま奨学金制度のある大学院の話があって入学でき、MBAでファイナンスを学びました。奨学生としての仕事は、アカデミックアドバイザーとして大学生に「こういう授業をとったらいいよ」みたいなアドバイスをするのですが、これも次第に物足りなさを感じるようになり、大学院が夜間だったので昼に働けたため、大和証券のアメリカ法人で会長・社長の秘書業務をしました。

大学院卒業後は、主人の仕事の関係でマカオに1年ほど行き、1991年に日本に戻ってきました。しかし、当時はバブルがはじけた時期で、まったく仕事がなかったですね。そこで、アメリカのアーサー・アンダーセンという会計事務所に入社し、監査業務に携わりました。そこでクライアントであったモトローラからうちに来てほしいとの話があり、入社したのが1995年です。

―モトローラではどのような経験をされたのでしょうか?

モトローラでは、海外の駐在もシンガポール2年、香港2年と経験しまして、日本に戻ってきたのが2004年です。その後、CFO(chief financial officer:最高財務責任者)になりました。私がはじめての日本人のCFOで、女性であったこともあり、会社が私に投資してくれ、私も育てていただいたことに恩を感じています。しかし、50歳を目の前にして「この同じ仕事をあと10年やるの?」と考えたら、「ちょっと違うなあ」と思っていたちょうどその時に、ボッシュからの話が来たのです。

本当に、まさにこれはタイミングでした。探していた訳でなく、その頃はボッシュという名前しか知らなくて、調べてみたら世界的にも大きい会社だなと(笑)。仕事ですが、現在は社長がセールス、副社長がエンジニアリング出身で、私は当初より管理部門のすべてを担当しています。財務だけでなく、人事・IT・購買・法務・内部監査、労働組合対応などもあり、これは面白いなと引き受けることにしたんです。

―「活き活き仕事をする」が活躍の原点と思いますが、仕事の面白さ、楽しさを感じられたのですね。

60歳を定年と考えると、のこり10年でした。私もいろんな方々に育ててもらってここまで来られました。いつかどこかで恩返し、貢献したいという思いがあって、ボッシュに入社し、早5年がたちました。1年めはドイツに赴任し、すべての事業所をまわりました。その時に、あるドイツ人に日本人の女性のエグゼキュティブ(幹部)に会うのははじめてだといわれて、考えてみると日本のボッシュも私が入るまで、女性で一番上は部長クラスまででした。また、「モトローラで築き上げた人脈をすべて捨てて、なんでボッシュに来たの?」ともよくいわれました。ボッシュは辞めない人が多いため、その中で築き上げたものはその人の財産になるのです。それを捨てて、どこかに行くことはあまり理解できなかったようです。

ボッシュでは、一度退職しても戻ってくる方が多いのです。そのような環境の中で、次第にネットワークも広がり、サポーティブにもなってくれました。その後、日本に戻り、現在のポジションについたのが、2010年の6月からです。

―離職率が低いのは、働き甲斐のある会社である証であると思います。アメリカの会社とドイツの会社の違いはあったのでしょうか?

私はアメリカの会社が長かったので、ドイツの会社との違いにショックを受けました。ショックというのは、びっくりしたという意味です。たとえば、ドイツ人の話す英語がよくわからなかったんです。ボッシュに入ると、それぞれ母国語が違う日本人とドイツ人が英語で喋っているから、不思議なことに当事者たちがわかりやすい単語が増えてくるんです。だから、お互いにすごく理解しあっているのだけど、アメリカで英語になれていた私は少し戸惑ったりして、本当に驚きましたね。慣れてくると、単語のニュアンスも本来の意味とは微妙に違う使い方をしているとわかりました。

―意思決定の面でも違いがあるのでしょうか?

アメリカはトップダウンが主体で、トップが交代すると方針も変わる傾向があります。対してボッシュは今年で創立128年ですが、CEOが7人しかいません。それだけ伝統を大切にする。何かを決める時には吟味をして、コンセンサスをとって決める。いい方を変えるとスピード感がないともいえますが、こうと決めたらぶれることはありません。

―日本の企業も後者のスタイルが多いように思います。

私はアメリカの会社が長かったので、いわれてみればそうかなと。あとドイツ人は、とにかく文章が長いですね(笑)。長いし、隅から隅まで読むんですよ。斜め読みなんかしないですね。私はざっと読んで大意をとろうとしますが、「この言葉には、この意味がある」ことを噛みしめながら読んでいることも知りました。なので、今は、簡単に、軽い気持ちで文章を書けないというか、書く時にはそれなりに気持ちを込めて書いています。

―会議の進め方にも特徴はありますか?

時間管理に特徴がありますね。驚いたのは、それぞれのプレゼンに持ち時間が決まっているんです。で、何が起きるかというと、その時間帯にプレゼンをする人が、入れ替わり立ち代わり会議室に入って来るのです。私はあまりそのような状況には慣れていなくて、きちんと時間どおりに終わる会議は新鮮でした。もちろん、たまにずれたりはしますが(笑)、そうなると会議を仕切っている人が、時間管理ができていないと怒られるんですよ。そのような違いも感じました。

―その違いのどちらも良いというか、認めるということでしょうか?

良いところ取りですね。ドイツ人の多くは、意見をがんがんいうんですよ。ただし、これと決まったら黙ります。アメリカでは、決まっても自分の意にならないと辞めてしまうこともある。そのあたりのメンタリティーがかなり違いますね。当社ももう少しトップダウンで決めたらいいなと思うことがあり、その点はもう少し改善する余地があります。そんなこんなで5年が過ぎましたが、だいぶ慣れてきましたね。今は横のつながりが深くなり、助けてもらえるようになっています。

―お話を伺っていると、わからないことや、はじめてのことを面白いと感じられる。小さい頃からそういう感じでしたか?

昔から好奇心が強かったんです。怖いもの見たさじゃないんですけど、わからないことは聞きたがるのですね。大和証券の面接の時に、特技は何ですかといわれた時に急には何も思いつかず「好奇心の強いところです」といってしまい、「それって特技ですか?」といわれました(笑)。

―想いというか、キャラクターというか、それで周りの皆さんも教えてあげたいなという雰囲気があるのかなと。

そうであると嬉しいのですが、わからないまま進んではならないという想いがあって、でもすべてを聞けないじゃないですか。その場で聞くようにはしているのですが、聞ける人には素直にわからないことを聞くようにしていますね。そういうところは、外国人はおおらかに受け入れてくれます。そのような意味でも、しったかぶりをしないというのは非常に大事だと思いますね。

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