クオリティマネジメント Quality Management

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HOME > 2015年10月-12月(No.15) > 特集 >チームの底力 「阿久根 謙司 氏(東京ガス株式会社)」
「チームの底力」

組織の力を高めるには、個人の力のみならず、チームワークによる相乗効果、シナジー発揮が重要であることは論をもちません。とくに、緊急時にこそ、個人の能力だけでなくチームとしての結束力が求められ、その力を発揮することが期待されます。

今回の特集では「チーム」に焦点をあて、『クオリティマネジメント』の主な読者層であるミドルマネージャーに求められる“チームマネジメント”“リーダー育成”などについて役立つ内容をお届けしたいと思います。

また、より広い視野からミドルマネジメントに示唆を与える観点をお届けするために、ものづくり分野にかぎらずに、さまざまな業界で活躍する方々にお話をお伺いし、チーム力とはなにか、どうあるべきかについて解説するとともに、有事におけるチームの結束力、統率力など、“潜在する爆発的なパワー”を生み出すための参考となる取組みや事例をご紹介したいと思います。

(編集部)

 野球選手・監督として知られる東京ガスの阿久根謙司氏は、2011年2月、サッカーJリーグにおいてJ2に降格したばかりのFC東京の社長に就任。そのあと、「自立」を行動指針に掲げてコーチングを実施した。

最初は苦戦していたFC東京だが、選手自身が勝つために何をすべきかを考え実行できるようになると、チームの成績は好転。降格1年めにしてJ1復帰を決めるとともに、最終的にJ2初優勝を飾り、その勢いのままクラブ初の天皇杯優勝をはたしている。

スポーツの世界で頂点をめざすには、選手のみならず、裏方も含めたチームの力をなくして成しえない。企業での就業経験に加え、スポーツ選手、コーチ・監督、FC東京代表取締役など多彩な経歴の中で「コーチング」を実践し、多くの成果を収めてきた阿久根氏に、企業におけるチームマネジメントの考え方、具体的な事例やリーダー育成についておうかがいした。

(聞き手:廣川 州伸)

個を認め、自立へと導く チームマネジメント

阿久根謙司氏

東京ガス株式会社
ライフバル推進部長 阿久根 謙司 氏

行動指針は「自立」

――J2に降格したチームを1年でJ1に復帰させた当時、どのようなことを考え、実行されたのでしょうか。

私が最初にしたのは、何が起きているのかを把握するため、選手たちの話を聞くことでした。とくに知りたかったのは、FC東京というチームが、私が野球で培ってきた「自立」という考え方が通用するチームなのか、「自立」している人たちが集まっているチームなのかということです。

私は、J2に降格して意気消沈している選手に「どうしてJ1からJ2に降格したんでしょうか」と質問しました。すると、3点の問題点が浮かび上がってきました。

まず1つは「ゆるい・ぬるい」ということです。

ボールをとられたら自分で取り返しに行くのがサッカーの鉄則ですが、取られた瞬間に「やられた」と気持ちが負けてしまい、そのままゴールを許してしまったそうです。野球でいえば、内野フライを打って一塁に走らないことと一緒です。本来は、アウトといわれるまで全力で走るべきです。しかし、プロの選手でも「ああダメだ」となってしまう。これではメンタルが弱いことを告白しているようなものです。

内野フライを打つという失敗をしても、最後まであきらめないで必死に走る姿を見て、子供たちは「僕たちにはできないけど、プロ野球選手ってすごい。僕たちもがんばろう」と思うようになる。失敗しても一生懸命に走り、チャンスを最後まで諦めない。これが「勝てる選手」なんです。いくらホームランを打てたり剛速球を投げられる「いい選手」でも、内野フライを打って「ああダメだ」とすぐにあきらめてしまうのは、決して「勝てる選手」ではありません。FC東京にもそんな選手がいたということです。

次に出てきた意見が、「誰かがやってくれると思いました」というものだったんです。

――ええ?(笑)プロでも、そんな風に考えるんですね。

実はそれを聞いた時、私は笑えませんでした。私は選手たちに質問をしながら、何が起きていたかを知るとともに、彼らを「認める」ことをしたかったのです。いろいろなコーチング理論がありますが、私が教わったコーチングの基本は1つしかありません。それはミスも含めて相手を「認める」ということです。

私もいろいろなミスをしてきました。それを乗り越え、今日があります。ミスを認めなければ話をしなくなり、ミスを隠すようになることがわかっているので「誰かが点を取ってくれると思った」という話を聞いた時、笑えなかったのです。

「誰かが点を取ってくれると思っていた。では、あなた自身は勝つために何ができたのでしょうか?」私はFC東京の代表取締役になって間もなくでしたが、そのインタビューはすべて敬語で進めました。なぜなら彼らを一流のサッカー選手として敬意をもって「認め」たかったからです。何よりもまず、選手が社長である私と話しやすい環境をつくることが必要であり、そのために社長は選手を認めてくれるんだということを彼らに身をもって知ってもらうことだったのです。

3つめに出てきた言葉は「こんなはずじゃなかった」ということでした。たしかにそうです。当時、FC東京には日本代表が2人もいました。ですからおそらくほかのチームの選手からも「あなたたちはJ2に落ちるようなチームじゃない」といわれたのでしょう。私はそんな選手に質問を投げかけました。「でも実際に落ちてしまったのですが、これからどうすればいいのでしょうか」と。

いろいろ話を聞くと、選手たちは「自分はゆるい・ぬるい」と感じていて、「チームの誰かが点を取ってくれる」と信じている。そして、J2降格を「そんなはずじゃなかった」と感じていたということです。これらのことは、どこに原因があるのでしょう。

私はチームや監督に原因があるというより、すべての問題は1人ひとりの頭と心にあると感じました。インタビューした選手の誰もに「自立」が足りないと感じました。ですから、このチームを立て直すには「自立」というキーワードが必要だと考えました。

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